20150317 yumina kaku
松任谷由実のレギュラー番組『Yuming Chord』から生まれた『書くユーミン』。TOKYO FMのショッピングサイトShops.Love(TOKYO FMのトップページ右上にある「ショッピング」の部分をクリック)、 もしくはセブンネットショッピングから購入可能。詳しくはhttp://shop.tfm.co.jp


本屋さんでは売っていない、松任谷由実の新しい本。それは、ユーミンの歌詞を味わいながら、美しい字を習得できちゃう1冊だった! 彼女のラジオ番組から生まれたという本の制作秘話と、字をうまく書くコツ、さらに歌詞にまつわる新エピソードを紹介


松任谷
'11年の紅白出場時には桜色の着物で『春よ、来い』を歌った


《書いているうちに体の中のDNAが、その文字の意味を自然に感じられるようになるのではないでしょうか。(中略)私も作品を作っているときに本当に集中すると、DNAが言葉を持ってくるような感覚があります》

 このたび発売された『書くユーミン』で、言葉に対する思いや作詞中の感覚をこのように明かしている松任谷由実。同書は"ユーミンの歌詞を書きながら美文字の練習ができ、なおかつ改めてその世界観を味わえる"として話題に。でも実はこれ、書店には置いていない特別な1冊なのだ。どこで手に入るかというと、

「TOKYO FMの公式オンラインショップで発売しています。ユーミンが番組パーソナリティーを担当して32年。番組をより外へ発信していくためのグッズとして誕生しました。何を作ったらいいかと考えた結果、フォーカスしたのが、ユーミンの言葉のセンスだったんです」

 と、エフエム東京・編成制作局クロスメディア開発部専任部長の原田洋子さん。過去にユーミンの番組プロデューサーもしていた彼女は、その鋭い感性に着目する。

「ユーミンが紡ぐ言葉の表現には"さすが!"と思うことばかり。毎回"こういう使い方があったのか"という発見がありました。番組名や放送時間帯が変わっても、ユーミンの言葉の鋭さや深遠さだけはずっと変わらないんです」

 現在のレギュラー番組『Yuming Chord』(毎週金曜午前11時~。TOKYO FMほかJFN系列全国38局ネット)も、毎週ひとつのキーワードをユーミンのトークでひも解いていくというコンセプトで制作している。そういった経緯もあり、言葉の世界からアプローチすることに意義があると考え、歌詞を用いた"美文字本"のアイデアに思い至った。

 ユーミン本人にその思いを伝えたところ"歌詞に関してはどこからでもかかってこい!"と快諾。トントン拍子で決まるも、制作に入るとまず、選曲に悩んだという。

 数々の名曲からどういう基準でセレクトしたかを原田さんに聞いてみた。

「400以上の楽曲と向き合う中で気づいたことがありました。40年以上にわたって歌詞を書き続けているユーミンには、その時代ごとに切り取っている言葉があるな、と。その感覚と、歌詞全体を文字で見たときの印象や曲調のバランスを大切にしながら、計10曲を選びました」

 ’70 年代は『翳りゆく部屋』『海を見ていた午後』、’80 年代からは『経る時』『~ノーサイド・夏~空耳のホイッスル』『恋人がサンタクロース』『ANNIVERSARY』。’90 年代から『春よ、来い』『満月のフォーチューン』が、’00 年以降としては『雪月花』と『シャンソン』が入っている。

「今回、曲を聴き込むことで呼吸する個所がわかったり、意味を思い違えていた部分などに気づきました。その発見を生かして、あえて歌詞カードの行替えと変えている曲もあります」(原田さん)

 それぞれの曲には作詞当時を振り返ったユーミンのコメントが添えられている。そこにも意外なエピソードが書かれており、"発見"にあふれた1冊だと原田さんは言う。

「ペンをとって一語一句書き進めていくと、歌の知らなかった一面に出会えたり、まったく別の風景が見えてくるかと。きっと今までに感じたことのないユーミンの音楽世界が体感できると思います」

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松任谷由実のレギュラー番組『Yuming Chord』から生まれた『書くユーミン』。TOKYO FMのショッピングサイトShops.Love(TOKYO FMのトップページ右上にある「ショッピング」の部分をクリック)、 もしくはセブンネットショッピングから購入可能。詳しくはhttp://shop.tfm.co.jp


本屋さんでは売っていない、松任谷由実の新しい本。それは、ユーミンの歌詞を味わいながら、美しい字を習得できちゃう1冊だった! 彼女のラジオ番組から生まれたという本の制作秘話と、字をうまく書くコツ、さらに歌詞にまつわる新エピソードを紹介


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お手本の字を担当した書道家・はなてるさん

 実際に"お手本"の文字を担当した書道家・はなてるさんはこんな感想を持った。

「ユーミンの詞の世界からは、圧倒的な色彩感覚を覚えました。揺るぎない意思や言葉が放つ生命力の強さも感じて、書いていくうちに言葉に励まされていました」

 さらに、ユーミンさえも気づいていなかった歌詞の特徴も発見! こう解説する。

「海・消・淡・沈・涙・流など、サンズイの漢字が多く登場しているんです。サンズイの漢字は音と寄り添っているものが多い。また、変化を受け入れる意味合いもあるので、ユーミンはそのときどきで経験した"音色"を感じとって歌詞に紡いでいるのかと」

 同書はそんな世界観を表現しつつ、はなてるさんが書いたというお手本ページを筆頭に4つの構成に分かれている。

①歌詞全体が書かれたお手本のページ。

②曲ごとに抽出したフレーズを大きめの文字で集中的に練習するページ。

③見本の字を手本にしながら歌詞全体を書くページ。

④自分だけで書いてみるページ。


「ステップを踏むことで"美文字"を習得できる仕組みに。曲の雰囲気に合わせて字のタッチも変えています。お手本に使用した筆記用具も掲載していますよ」(原田さん)

 このように、上手な"筆選び"も美文字に近づく方法のひとつと、はなてるさん。

「例えば、かっちりしたタッチで文章を書くときは鉛筆やフェルトペンみたいに引っかかりがあるペンのほうが滑らなくて書きやすい。逆に、やわらかいタッチで文章を書く場合は、なめらかな書き心地のボールペンや万年筆を使うと、力加減のバランスがとれてうまく書けます」

 力みすぎない程度に背筋を伸ばし、目線を近づけすぎないことも美文字のポイント。

「『書くユーミン』では、やはり詞の世界へ気持ちを傾けながら練習するのがいいかと。そのうちに慣れてくると、手と紙とペンが調和してくるんです。線に呼吸やメロディーを添え、強弱をつけながら表現していくと、自分なりのリズムが生まれて書くことがより楽しくなりますよ。絵を描くような気分で文字を書くのも、新たな発見があるかもしれません」(はなてるさん)

 そんな楽しみを持ったユーミン史上初の"美文字本"。本人もとても気に入っているそうで、こんなアイデアまで飛び出しているとか。

「読者が書いたページをコピーして送ってもらい、それを集めて展覧会をしたいと。その名も、『院展』(日本美術院展覧会の呼称)ならぬ『ミン展』(=ユーミン展)です」(原田さん)

 ということで、今回は特別に本書の中から『春よ、来い』の一部をご紹介。ぜひ、この機会に"書くことで感じるユーミンの音楽旅行"を味わってみて。

>>次からのページでは、実際に本の中身をご紹介します

20150317 yumina kaku
松任谷由実のレギュラー番組『Yuming Chord』から生まれた『書くユーミン』。TOKYO FMのショッピングサイトShops.Love(TOKYO FMのトップページ右上にある「ショッピング」の部分をクリック)、 もしくはセブンネットショッピングから購入可能。詳しくはhttp://shop.tfm.co.jp


本屋さんでは売っていない、松任谷由実の新しい本。それは、ユーミンの歌詞を味わいながら、美しい字を習得できちゃう1冊だった! 彼女のラジオ番組から生まれたという本の制作秘話と、字をうまく書くコツ、さらに歌詞にまつわる新エピソードをご紹介


STEP1

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 各曲とも同じ構成で、最初は歌詞全体のお手本ページ。使用した筆記用具も記載。QRコードつきなので、スマートフォンでアクセスすれば視聴可能。ユーミンの曲にまつわるコメントも

STEP2

20150317_yuming_STEP2

 美しく書くコツを意識しながら抽出されたフレーズを大きめに書いて特徴をとらえよう。本書ではマス目の行のほか、縦に罫線が入った行、白紙の行が2本と各フレーズを4回練習できる

「淡」の火のように同じパーツが組み合わさっている場合は、字の大きさやタッチに少し変化をつけるとより立体的に。「光」は1画目の縦線をマスの中心から書き始め、それを軸にまとめてゆきます。下の2画のにんにょうは伸びやかに堂々と。「俄」の6画目、8画目は縦線のほぼ真ん中を切るようにはらうとバランスよくまとまります

「溢」や「涙」のはらいの部分は左右の線質の違いや強弱を意識し、呼吸を添えながら書きましょう。また皿や田のような囲いのある左右対称の字は、中の空間をできるだけ均等に区切るときれいに見えます

「春」の横三本線は平行に単調に書くのではなく、やや向きに変化をつけると字に安定感が出ます。「遠」のの部分は丁寧に。しんにょうの右に流れる線は徐々に力を加えながら坂道をえがき、線を最後まで目で追いながらスーッと力を抜いてゆくと躍動感が出ます。線に命を吹き込むイメージで

 ひらがなは漢字よりやや控えめな大きさで書き、線に強弱をつけながら柔らかな曲線の世界を楽しんで書いてみましょう。「く」のもとになっている漢字は「久」ですので、起点と終点を線で結んだとき、終点のほうがやや右に出るバランスで

STEP3

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 お手本を参考にして歌詞を全部書いてみる。その前に、見本の字を上からなぞって書くのもオススメ。詞の世界観に気持ちを傾けながら、姿勢や目線に気をつけてトライしてみては?