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 “日本人の心”ともいわれる演歌・歌謡曲。昭和のレコード大賞は、みんなが知っている流行歌が受賞していたもの。ますます存在感がなくなるばかり……。

 戦後の昭和歌謡をナレーション入りで歌い、東京・浅草で路上ライブの活動中の昭和歌謡歌手・犬山しろうさんは、歌謡曲の魅力について熱弁する。

「歌には歴史があります。例えば『ああ上野駅』(1964年)や『津軽海峡・冬景色』(1977年)。東京の上野駅という、同じ場所でも時代背景によって情景が異なるのが歌謡曲や演歌の魅力。歌謡曲をフィルターにして昭和史が学べるのでみなさんにぜひオススメしたいですね」

 歌謡曲の歌詞は素晴らしい文化だと語る。

「また『東京ブギウギ』などに表れる歌詞の奥深さにも注目してほしい。平たく言えば“東京サイコー!”という内容ですが、安易に軽い言葉を用いません。“楽しい”という気持ちを“心ズキズキワクワク”と表現するなど、想像させる余地を聴き手に残しているんです。歌謡曲や演歌というのは、聴き手が10人いれば10人それぞれ違った体験を思い浮かべられる舞台装置のような存在。私は小説や映画に勝るとも劣らない、素晴らしい文化だと思います」