■意外と知らない自分のクローゼット

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 本誌をはじめ多くの女性誌や広告で、ひっぱりだこのスタイリストの山本あきこさん。個人向けのスタイリングの仕事を始めてすぐ、知人の女性ライターに洋服を選んだところ、「変わった!」「やせて見える!」と周囲に絶賛された彼女から、本の執筆をすすめられたのだそう。

「それまでは感覚でスタイリングをしていたのですが、“あなたのノウハウを論理的にまとめた本を出せば、役立つ人がたくさんいるんじゃない?”と言われ、なるほどと思い、書き始めました。この本でおしゃれの一歩を踏み出していただけたら、とてもうれしいです」

“いつもの服をそのまま着ているだけなのになぜだかおしゃれに見える”というタイトルのとおり、紹介されているスタイリングは、着る人を選ばないシンプルな洋服を組み合わせたものばかり。でも昨日までの自分より、各段にあか抜けて見えるから不思議です。

「個人向けスタイリングのお客様には、洋服が大好きな方も、逆に買い物が苦手な方もいます。共通しているのは、みなさん持っているものを意外と把握していないということ。そして、似たようなものを買ってしまいがちなことです」

 自宅を訪問しクローゼットの中身を出してみると、キャラクターTシャツばかり、モノトーンのワンピースばかり、ひざ丈のスカートばかり……ということが多々あるそう。そして特に主婦に多いのが、チュニック丈のトップスばかり!

「チュニック丈でも可愛いものはたくさんありますが、ラクなぶん緊張感がなくなります。女性として体形の維持を望まれるなら、あまり私はおすすめしませんね。それに身体のラインはある程度出したほうが、ホッソリ見えるんですよ」

 提案するのは、ベーシックなテイストを7つのルールで着こなすスタイリング。

「7つのルールは、どれも簡単なものばかりです。例えばジャストサイズを着る、洋服がシンプルなぶん小物で遊ぶ、首・手首・足首の“3首”を見せる、など。特にサイズに関しては、Mサイズを買う方が多いのですが、私、Mサイズをお客様に選んだことって、あまりないんです。なぜならブランド、デザインごとに、合うサイズは変わるから。とにかく試着をして、鏡を遠目で見ることをおすすめします。シンプルなものほど、素材とサイズ感が大切ですからね!」

■シンプルな服に小物で味つけがルール

『いつもの服をそのまま着ているだけなのになぜだかおしゃれに見える』1500円/ダイヤモンド社
『いつもの服をそのまま着ているだけなのになぜだかおしゃれに見える』1500円/ダイヤモンド社

 ファストファッション・ストアで買えるアイテムが多く紹介されているのも、本書の画期的な点。予算が限られた人でも、気軽にマネができます。

「高級ブランドの商品で、載せたいものもたくさんあったのですが、リアルなクローゼットじゃないと意味がない。Gap、ZARA、GUなど、全国どこでも手軽に買える商品を中心にスタイリングしました。ファッション・マニア向けではなく、いわゆる普通の人が、限られたアイテムの中から参考にできるコーディネートを目指したつもりです」

 使用アイテムは個々の写真とともに巻末にまとめられ、掲載ページも明記してあります。使用頻度の高いものから、クローゼットに取り入れてもよさそうです。

「白いTシャツやシャツなど普通のアイテムを、みなさん以外と持っていない。高いものでなくてもいいんです。高くて形が古いものを長く使うよりも、手ごろな価格の商品を定期的に買い替えたほうがベター。流行は形に出るので、そこに乗ることでおしゃれ度はグンと上がりますし、小物との合わせ技で“センスいい”という言葉がいただけます。ちなみに小物はビジューネックレスや時計などのアクセサリー、ハット、クラッチバッグなどが、いいアクセントになりますよ」

 バッグは高いブランド物ほど、毎日使いたくなるもの。しかし、おしゃれな人は、洋服よりも多くの種類のバッグを持ち、使い分けているのだそう。

「クラッチバッグも、高いものでなくていいんです。色、柄にもこだわらなくてもOK。とにかく気分が上がるものを選んでくださいね!」

 好みで選ぶ小物が、自分の個性を作り出します。そして手ごろな値段の小物であれば、流行を追って買い足すのも容易です。

「おしゃれな日って、気分が上がりますよね? 相手への礼儀という人もいますが、まずは自分が楽しくなるのがベストではないでしょうか」

 山本さんが個人向けスタイリングをするときは、まずしっかりカウンセリングをするのだそう。

「例えば“息子3人の育児中です”という人に、全身白いコーディネートは現実的ではありません。家庭環境や生活環境についていろいろと教えていただいてから、ベストなアイテムを選択。そのうえで、“なりたい私”を演出するお手伝いをさせていただきます」

 そして本書を読めば、山本さんが目の前にいるような、セルフ・カウンセリングが可能になります。まずは、本のコーデをそのままマネてみることで、いままでの自分と違う自分が発見できるはずです。

※取材後記

 私と担当編集の心にグッときたのが、「ハイヒールで足が痛くなるのが怖いなら、携帯用のフラットシューズを鞄に入れればOK!」という一節。これほど実用的なアドバイスが、今までのおしゃれ指南書にあったでしょうか? 「女性だからヒールははいてほしい、でも帰り道は楽をしたい……リアルでしょ?」と、笑顔の山本さんでした。

(取材・文/中尾巴 撮影/吉岡竜紀)

〈著者プロフィール〉

やまもと・あきこ ●1978年生まれ。女性誌や広告など多くの媒体で活躍しつつ毎月、個人向けのパーソナルスタイリングも行い、予約開始と同時に申し込みが殺到する「予約の取れない」スタイリスト。モデルだけではなく、あらゆる年齢や体形の人たちに似合うスタイリングに定評がある。ブログ「見た目チェンジで人生が変わる! スタイリスト山本あきこのファッション提案」http://ameblo.jp/akko-mystylist