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■運命の出会いから19歳でママになる

“ママモデル”の先駆けとして、女性誌に引っ張りだこの中林美和さん。『Can Cam』の看板モデル時代と変わらないキュートな笑顔と華奢なスタイルからは、4人の子どもを持つお母さんには見えない。

「生活感がない? 実際の私は全然違うんですよ。娘が小さかったころは、眉毛がつながっちゃうくらい、自分のことは何もできなくって。2人目の娘が生まれた後は、美容にかける時間が本当になくて……。時間があれば目を閉じて無になっていたかったくらい。染めていた髪もプリン状態だったし。気がついたら、眉毛がつながっていたんです(笑い)」

 その当時の美和さんは、怒濤の子育て真っ最中。13歳と12歳の息子2人、1歳3か月の長女、さらに生まれたばかりの次女を、留守がちな夫に代わり、ほぼひとりで育てていたのだ。

「美容にかける時間はゼロ。化粧水や乳液をつける時間なんてないので、娘ふたりに赤ちゃん用のボディークリームを塗った後、残りを自分の顔に塗るだけ。シャワーだって、子どもが寝ついたすきに、音を気にしてこっそりと、です。夫が好きな時間にシャワーを浴びているのを見ていいなあ、なんて思ってました」

 美和さんが子育てをスタートしたのは、19歳のとき。

『CanCam』専属モデルとして活躍中の美和さんは、ヒップホップアーティストのZeebraさんと出会い、一瞬で恋に落ちた。

「彼に初めて会ったとき“握手してください”って言ったんです。彼は目の前のソファに座ってて、私がのばした手を、ぐっと強く握って、私の手をずっと離してくれなかった。そのとき、あ、私、この人とずっと一緒にいるって思いました」

 運命の出会いから数日後には、Zeebraさんと一緒に暮らし始めた美和さん。彼女を待っていたのは、想像していたような甘い生活ではなかった。

 当時、Zeebraさんはシングルファーザーとして7歳と6歳の息子を育てていた。Zeebraさんの事務所兼自宅を初めて訪れた美和さんは、山のように積まれたピザの空き箱と出前の空き皿を目にする。

「私にできることがあればしたい、そう思ったんです。私が自分の母にしてもらったように。それに、大好きな彼の子どもだから、私にもとっても大切だし。2人ともすごく可愛くて、すぐになついてひざの上に乗ってきたり。一瞬で家族になるって決めたんです」

 19歳にして2人の子どものママになる。ハンパな決意ではない。

「自分ではそんなに気負った感じはなくて、ごく自然に、子どもたちとの生活を優先して、仕事がなくなってもいいと思っていました」

 モデルとして上昇中だった美和さんは、子育てと仕事でキャパオーバー。あまりのつらさに家を出る。しかし、彼女を戻らせたのは息子からの“お腹すいた”コールだった。

「長男から電話がかかってきて、“美和、どこにいるの? お腹すいたんだけど”って。子どもたちは、私が出て行ったこととか何も知らなかったから。すぐ、スーパーに寄って彼らのところに戻りました」

 なんと、美和さんが海外で撮影中にも“お腹すいた”コールがかかってきたことがあるんだとか。

「彼が仕事で帰りが遅かったので、国際電話でピザのオーダーをしたんですよ(笑い)。渋谷区の〇〇までお願いしますって」

※次ページは「怒濤の子育てはさらにハードさを増して…」

■怒濤の子育てはさらにハードさを増して…

 そんな生活も3年がたつころ、美和さんが妊娠。妹が欲しいと言っていた息子たちの希望どおり女の子だった。

「そして、赤ちゃんのいる生活にようやく慣れたころ、また妊娠したんです。もう、すごくうれしかった! 年子の兄弟と年子の姉妹になるって可愛いなって思って」

 しかし、怒濤の子育てはさらにハードさを増す。ネットでものを買う習慣もない当時のこと、年子の赤ちゃんを連れて必死の形相で買い物に。

 相変わらず多忙で生活の不規則な夫の手助けも望めない日々……。

「27歳で本格的にモデル復帰して、セレブママのイメージでグラビアを飾ったけれど、実際の生活とギャップがありすぎて……。こういうキラキラしたママのイメージで苦しむ人もいるんじゃないか、と悩みましたね。でもその一方で、この本で現実の自分を出すのも葛藤がありました。みんなの持っているイメージを壊してしまうんじゃないかって」

 本書では、美和さんのリアルな姿だけでなく、夫、Zeebraさんのリアルな姿も描かれている。

「夫は何を書いてもいいよ、って言ってくれました」

 その言葉どおり、本には、Zeebraさんとの関係、美和さんと一時的な別居に至るまでの経緯も赤裸々に綴られている。

「いまは、子育てが一段落して、将来のことをいろいろ考えています。いずれは彼と海外に住みたいな。海のそばで、ゆっくりと。娘たちが自立するまで頑張って、自立したら自分のために時間を使いたいですね。彼とものんびりしてみたいな(笑い)」

■取材後記/著者の素顔

 モデル業界という華やかな世界にいながら、美和さんはとても現実的で堅実な考え方の人でした。Zeebraさんと一時的に別居を考えたのも、「ここで私がきちんとした態度で臨まないと、娘の将来や男性観、未来の結婚生活に悪影響を与えてしまう」と考えたから。>娘さんたちは母の決断をきちんと理解してくれたそうです。いまでは、再び家族は一緒。美和さんとZeebraさんがイチャイチャしていると、娘さんたちは“ずるい~”と間に割り込んでくるそうです。

(取材・文/ガンガーラ田津美 撮影/齋藤周造)

〈著者プロフィール〉

なかばやし・みわ ●モデル。1979年、東京都生まれ。17歳でスカウトされ、モデルとしてデビュー後まもなく『CanCam』(小学館)の専属モデルとして活躍。2002年、ヒップホップアーティストのZeebra氏と結婚。2人の男の子(長男・健人、次男・鍊)の母になる。同年に長女(花音)、2004年に次女(里茉)を出産。著書に『美和ママごはん』など多数。

『おんぶにだっこでフライパン!』1300円/KADOKAWA
『おんぶにだっこでフライパン!』1300円/KADOKAWA