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 6月30日、日本中を震撼させる事件が起きた。午前11時東京発の新大阪行き『のぞみ225号』が神奈川県小田原市内にさしかかったとき、ひとりの男が車内でガソリンをかぶって焼身自殺を図った。

 同じ車両に乗り合わせた乗客らは男が火を放つ直前に、「危ないから逃げなさい」とうながされ、隣の車両に逃避したが、逃げ遅れた整体師の女性が巻き添えにあって亡くなり、乗客26人が重軽傷を負った。

「こんなことをするような人には思えませんでした。それにしても、なんでまた新幹線なんかでね」(容疑者の知人)

 男は前日に自宅近くのガソリンスタンドでガソリン7リットルを購入するなど、計画的な犯行だったことがうかがえる。

 この新幹線を死に場所に選んだ放火事件の犯人、林崎春生容疑者とは、いったいどんな男なのか。

 林崎とは古くからの知り合いで、JR中央本線西荻窪駅の近くでバーを営む女性に話を聞くと、

「もう40年以上も前になるけど、この近くにあったバーで最初はお互い客として知り合い、37年前に私がこの店を開くと常連客になったんです。そのころは“流し”の歌手をやっていました。北島三郎の曲をよく歌っていましたね」

 林崎は岩手県出身で若くして上京、30代のころは流しを生業としていて、西荻窪駅周辺の飲み屋街では知られた顔だったという。

「みんな“林さん”て呼んでいましたが、岩手出身だったというのはニュースで初めて知りました」(前出・知人)

 長年の付き合いがあったバーのママでさえ、今回の事件が起きるまで林崎の出身地を知らなかった。彼は自分から身の上話をすることはいっさいなく、また彼に聞く人もいなかったという。実際、彼の住まい周辺を取材しても、家族や親族に関する話は何も出てこなかった。

 その後、林崎はカラオケが普及したために流しの仕事が立ちゆかなくなり、知り合いの鉄工所の社長を頼り、そこに就職することに。

「あのころは羽振りがよかった気がします。そんなにお酒を飲む人ではなかったんですが、お店を何軒もハシゴしたりしていましたし、パチンコで儲かったりしたときは、飲み仲間におごったり、お店の女の子におこづかいをあげたりしていました」(前出・知人)

 事件後に明らかになったことだが、林崎の故郷には4歳上の姉がおり、彼は親族に月9万円の仕送りをしていると話していたという。

 鉄工所を辞めた後は、幼稚園の送迎バスの運転手をやったりして、1年ほど前までは清掃会社で働いていた。

「最後にウチの店に来たのは2年くらい前になりますけど、店で飲むのはビール1本か2本くらいでした。そんなに酔っぱらうこともなくて、どちらかというと紳士で陽気な人でしたよ。ほかの客とモメたりすることは1度もなかったですね」(前出・ママ)

 150センチほどと小柄で近所の人の話を聞いても特に悪い評判もなく、バーのママも知人も、事件を知って驚きを隠せなかったという。