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 NHK『みんなのうた』で4月から5月にわたってオンエアされていた『つもりヤモリ』という歌。この曲に出てくる『つもりやもり』というサボりグセや思い込みを食べてくれるキャラクターが今ジワジワと注目を集めている。

 『つもりやもり』の誕生には、風水研究家・Dr.コパこと小林祥晃さんとその長男・照弘さんが関わっている。

 ストーリーはこうだ。主人公『つもりやもり』の子ども・パピは、人間の蛾を食べて“~したつもり”をなくす仕事に励む父親に憧れている。

「初めてパピが街に行くと、蛾がたくさんついている人間の男の子・トムを見つけるんだ。勇気を出してその蛾を食べていくんだけど、最後の1匹を食べようとしたところで父親が止める。そこでパピは食べていい“悪いつもり”と、あったほうがいい“大切なつもり”があることを教わる。それを見極めることの大切さも父親から学ぶんだ」(Dr.コパさん、以下同)

 残された蛾とはトムを“寂しくないつもり”にしていたもの。仕事であまり家にいられない母親と一緒に過ごすときだけは、寂しさを抑えて笑顔でいたいという感情だ。

「子どもたちの世界って“勧善懲悪”で成り立っているじゃない。だけど、世の中はそれだけで回っていないよね。ときに“必要な悪”もあるし“情”や“情け”に支えられている部分もある。蛾の話に喩えることで、そういった大切さも伝えたかったんだ」

 昔は両親やきょうだい、祖父母から自然と教えられたものだが、家族形態の変化によってそれが難しくなっている。

「教育現場も“勧善懲悪”という縦割りの仕組みでしか機能していないよね。今は“あいつ嫌い”と思ったらバサリと切り捨ててしまうでしょう。僕らの時代もいじめはあったよ。だけど、いじめっ子、いじめられっ子の事情を酌んだり、どこか“情け”があったから、ひどい事件につながらなかったんだと思う」

 子どもが何か悪さをしようとしていたら、近所の人や周りの誰かが怒ってくれるという“情”も以前はあった。

「今は人とのつながりが希薄だから自分の狭い価値観だけで物事を判断しちゃうよね。そのやり方は違うということを、いち早く言わねばと思った。このタイミングで言わないと、もう収拾がつかなくなるという危機感もあった」

 とはいえ、押しつけがましいものは拒否される時代。どうしたらさりげなく伝えられるかと考えていたとき、『つもりやもり』がひらめいた。

「絵本のキャラクターというフィルターを通せば、人々の心に自然と浸透すると思ったんだ。実際に親御さんたちから“子どもに読み聞かせをしながら、物事の見方が狭くなっていることに気づかされた”という感想ももらうよ」