関東近郊、「本当に出る!」と噂されるガチな心霊スポットに突入した担当編集M子(24歳・♀)、カメラマンW(23歳・♂)、ライターの私(38歳・♂)。次々と降りかかる災難、疲弊した3人を襲った現象とは―
■Day-1 戦国時代、55人の遊女が殺害された「おいらん淵」
取材初日は、遊女の幽霊が現れるという山梨県の有名な心霊スポット『おいらん淵』へ。戦国時代、金山の秘密を知る遊女たちが口封じのため虐殺された場所だと言われている。恐怖体験には事欠かない。
カメラマンW氏の運転する車で出発すると、いきなりM子が「塩を忘れた!」と騒ぎ出す。“塩なんて必要ないのに……”と2人で思いながらも、必死なM子の懇願に、仕方なく道中のコンビニに立ち寄った。パッケージにはしっかり『食卓塩』と書かれているが、大丈夫なのだろうか……。
30分ほど車を走らせると、カーナビが目的地到着を示した。奥まった細道に通行止めの看板を発見。この奥に供養塔があるようだが、現在は立ち入り禁止となっていたため、フェンスの外から撮影することに。
そのとき、近くをゆっくり走行する黒の軽自動車が現れた。車内には男が2人。近くのトンネル内で運転手が降り、地面から何かを拾う。再び男が車に乗り込んだところで、私たち取材班の存在に気づく。このとき男と目が合ったM子によると、車から降りた男は黒のタンクトップ姿、両腕にはビッシリとタトゥーが刻まれていたという。撮影中のわれわれを睨め回し、一瞬停車しかけるが、そのまま通り過ぎていった。
時間は深夜11時。真っ暗闇の中、川の水音だけが聞こえる。何も起こらない。ひとしきり撮影を終えて帰ることにしたのだが、“真の恐怖”はここからだった。
帰りの山道で私は予期せぬ車酔いに襲われた。背中に嫌な汗が流れる。停車してもらい、外に飛び出して嘔吐。そのまま少し外の空気に当たってから再出発。
W氏も私を気遣い、ゆっくり走行していたのだが、それでもカーブの続く山道が再び私の酔いを引き起こしていた。“また停車してもらおうか”と思った矢先、M子が大声を上げる。
「あれ、さっきの車!」
対向車線で待ち構えていたかのように、先ほど通り過ぎたはずの2人組が目を光らせている。おそるおそる軽自動車とすれ違って離れたが、しばらくするとこちらを追いかけてきたのだ。
一気に車内に緊張が走った。W氏も少し焦って飛ばしぎみに。私の酔いはどんどん悪化していくが、さすがに止まってもらうわけにもいかない……。
どうにか引き離したところで、私の吐き気がマックスに。再び停車し、本日2度目の嘔吐。その後は無事、街中まで戻ることができた。
遊女たちの呪いか、黒い男たちの悪意か、山の持つ魔力か……。私に“異変”が起きたことは事実である。
■Day-2 封鎖された隧道で起こる怪奇現象「東京湾観音」
千葉県の南房総国定公園にある東京湾観音を参拝する直前にある観音隧道。トンネル内でクラクションを鳴らすと怪奇現象が起こると噂されているスポットへ向けて2日目はスタート。
おいらん淵で失態を犯した私は酔い止め薬を飲んで準備万端。M子も前回購入した“食卓塩”をお守りとして持参していた。
最寄り駅から車で観音隧道へ。出発して2~3分で、カーナビが目的地到着を知らせている。時間は夜10時30分。
懐中電灯の明かりだけを頼りに辺りを見回すと、短いガードレールの先に暗く嫌~な雰囲気を漂わせるトンネルを発見。
「では行きましょうか」
ノリノリのW氏を先頭に、いざトンネルへ。入り口には『注意 先入車優先』の文字。かつてはトンネル内で正面衝突する事故が多発していたのだろうか─。
入り口が封鎖されていたため、車で入ることができず、クラクションを鳴らすミッションに挑戦できなかったことが悔やまれる。噂によれば、クラクションを鳴らしてライトをつけると、壁にビッシリとはりついたお坊さんたちが一斉にこっちを向くのだとか、逃げる車のフロントガラスに無数の手形がつくなどの現象が起こるらしい。
破られていた金網の隙間から足を踏み入れてみる。
内部はコンクリートで補修されているものの、水がピタピタと漏れている。
「足元が粘土みたいで気持ち悪い……」
そうM子が言うのも無理はないくらい路面が濡れていて、靴に土がこびりつく。足早にトンネルを進むと、落書きされた跡や空のペットボトルなど、人が侵入した形跡は確認できたが、幽霊が現れる気配は感じられない。
「どちらかというと崩落のほうが怖いな……」
足早に東京湾観音を拝むと、同地を後にした。
■Day-3 多数の幽霊が目撃される人造湖「神流湖」
最終日、場所は埼玉県児玉郡。幽霊目撃の噂が絶えない神流湖を目指した。まずは飛び降り自殺の名所とされている橋を探すが、付近は街灯のない暗闇。
「あれじゃないですか?」
M子がようやく橋を発見したが表記は別の名前だったため、さらに奥へ進む。荒れた山道を数十分走ったが、ついには行き止まりになった。そこで見つけたのが不気味な鳥居。車から降りて近づくと、
─パキ、パキ、パキ
ある一定の間隔で、木の枝を踏むような音が聞こえる。まさか、こんな山道を人が歩いているわけがない……。しかしその音はやまず、ヒヤリとして車に戻る。
「これ以上の前進は無理ですね。戻りましょう」
だがここは、車1台通るのがやっとの幅だ。
「やだやだ、こんなところで死にたくない~」
騒ぎ始めるM子に、
「集中したいので静かにしてもらえますか」
と、W氏。転落したら死にかねない。そんな細道をバックで1キロほど後退して、ようやく元の道へ。
「あれじゃないですか?」
私が工事中らしい橋を見つける。封鎖されていたので気づかなかったのだ。中に入れなければ幽霊も出てはこれまい……。
車に戻り、次はダムへ。この場所も自殺者が多いと言われており、橋の手すりには花束が置いてあった。橋の下を覗くと水音がゴウゴウ鳴っている。そのそばにはダム建設時に事故で命を落とした方々を供養するための慰霊碑があり、タバコが1本お供えされていた。
「では帰りますか」
取材の終わりを実感していたまさにそのとき、運転していたW氏が突然の流血(鼻血)。これこそ、幽霊の仕業かもしれない─。