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 8月末に一部の出版社や新聞社に、兵庫県神戸市の連続児童殺傷事件の“酒鬼薔薇聖斗”こと元少年Aと思われる者からA4用紙で20枚にわたる手紙と同内容のCDが届けられた。その内容が誌面に掲載されるとネット上を中心に波紋を呼んでいる。

 元少年Aは、衝撃の手記の出版『絶歌』から3か月もたたないうちに、自らのホームページを開設した。

 「ギャラリー」の欄には、元少年Aが制作したというイラストや、自身の鍛え抜かれた肉体のポートレート、大量のナメクジを使用したハート型のオブジェが紹介されている。

 逮捕後の精神鑑定で、相手に苦痛を与えて自分を性的に興奮させる「性的サディズム」と診断された元少年A。

 彼のような性倒錯者は自己顕示欲や承認欲求も高いとされ、一連の“創作”や“発信”の動機もこのような心理面から語られがちだが……。

「単に経済的な理由で、一連の行動を起こした可能性も見逃せないと思います。例えば、生活保護の受給が難しいとか、職を転々としてなくてはならないとか、賠償責任が負担になり、まとまった額が必要になったということです」(精神科医で教育評論家の和田秀樹さん)

 確かに手記の後半では、少年院を「仮退院」してから、喫茶店、繊維機械部品の溶接の仕事などバイトをして、経済的に楽ではなかった日常がつづられている。

 犯罪者の心理に詳しい臨床心理士の矢幡洋さんもこう述べる。

「元少年Aは自分が表現者だという強い思い込みがあり『絶歌』がもっと売れると考えていたようなので、ホームページの開設は本を売らんがための宣伝活動という側面が強いと思います」

 そもそも手記公表のときも関係者への事前通知はなく、ホームページも“独断”で開設を決めたという元少年A。

「元少年Aは、自らを“日本少年犯罪史上最悪のモンスター”とか、“冷酷非情なモンスター”と表現し、自分は大それたことをやってのけたという態度なので、反省の気持ちはないと思います。ただ事件当時は、思春期の性が目覚める複雑な時期でしたので、30代となった今はそれほどの衝動はなくなっているはず。再犯の心配はそれほどないと思います」(矢幡さん)

 前出の和田さんは、再犯のリスクは必ずしもなくなってはいないとしながらも、“創作活動”に一定の効果があるとみている。

「今回のように発表や発信をすることによって、元少年Aが持つ『性的サディズム』の欲求が解消し、気持ちが落ち着くことはあると思います」

 そして、Aがホームページでお気に入りの著作や映画を取り上げる「レビュー」欄で絶賛する「パリ人肉殺人事件」で世間を震撼させた佐川一政氏の例を出しこう話す。

「彼の場合も、グロテスクな手記を発表し再犯の可能性が指摘されましたが、その後、事件は起こしていません。犯罪者や性倒錯者の手記が発表されるたびに、物議を醸しますが、実際に、再び同じような犯罪行為が行われるよりは、著作のなかで完結するほうが、社会的被害は少ないはずです」(和田さん)