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 昨年5月、餓死して7年以上とみられる齋藤理玖くん(死亡推定当時5歳)の白骨遺体が自宅で発見された。殺人罪などに問われた元トラック運転手の父・齋藤幸裕被告(37) に対し、横浜地裁は22日、懲役19年の厳しい実刑判決を言い渡した。

「唯一すがるべき存在の父親から十分な食事も与えられず、ゴミに埋もれた不快で異常な環境に放置され、極度の空腹による苦痛を感じ、絶命していった経緯は涙を禁じえない。その残酷さは想像を絶する」

 10月22日、横浜地裁401号法廷で判決を言い渡すとき、これまで淡々とした口調だった伊名波宏仁裁判長は語気を強めた。

「被害児童がそうとう衰弱していたことは、誰でも理解できた。医師による適切な診療を受けさせなければ死亡する可能性を認識していた。にもかかわらず、被告は“事故死のようなもの。なんで死んだのかわからない”と言っていた。反省が足りない!」

 と、続けて父親の齋藤幸裕被告の殺意を認めた。

「殺すつもりはなかった」として保護責任者遺棄致死罪にとどまるとする弁護側の主張を退け、懲役19年(求刑同20年)を告げた。児童相談所の“行方不明男児”通報が遅く、理玖くんの遺体は死後7年以上、経過していた。

「電気、ガス、水道は止められていた。雨戸は閉められて室内は昼間でも真っ暗。外からのぞかれないように小窓は粘着テープで目張りしてあった。被告は、理玖くんが亡くなったあとも家賃を払い続けている。逮捕時、不倫相手と暮らしていた別のアパートと二重の家賃を払っていた。事故死というならば、そこまでして理玖くんの死を隠す必要はない」(全国紙社会部記者)

 被告は公判で、2004年10月に妻(33)が家出してからの2年3か月、自分なりに子育てに奮闘したことを訴えた。しかし、不謹慎なエピソードや言い訳、責任転嫁が目立った。

 実家に理玖くんの養育を頼れなかった事情まで説明した。被告が小学生のころに母親が精神疾患にかかって「悪魔が来る」と部屋を歩き回るようになり、家族関係がおかしくなったと話した。

 弁護士は最終弁論で「被告のIQ(知能指数)は69」と切り札をきった。平均値100をかなり下回る数値だ。ゆえに情状酌量の余地があるという。静まり返った法廷を見て、これは大どんでん返しがあるかもしれないと思った。

 しかし、判決は検察側の意見をほぼ全面的に採用し、弁護側が訴えたIQの低さは却下した。勤務先の運送会社に理玖くんの死亡を隠して家族手当41万円を騙しとったとする詐欺罪も認定した。

 殺人事件の場合、相手が死ぬという危険性を認識しながら放置すると法律用語の「未必の故意」にあたり、殺意があったと判断される。検察側は鋭く追及していった。

「われわれも被告が理玖くんを積極的に殺害したと思っているわけではありません。しかし死亡する可能性が高い行為を行った」(10月8日の公判)

〈取材・文/フリーライター山嵜信明と『週刊女性』取材班、イラスト/スヤマミヅホ〉