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 「足りないのは、愛情ではなくシステム」をモットーに、猫の保護活動を続けるNPO法人・東京キャットガーディアン。飼い主の夜逃げ、高齢化etc.─猫のレスキュー現場には心を震わせずにいられない、それぞれの物語があった。

 東京・山手線の大塚駅のほど近く、小さなビルの最上階。穏やかな日差しがふりそそぐ空間で、猫たちが自由気ままに遊んでいる。その姿を見守る人、読書をする人、おしゃべりをする人……。

 一見すると、のどかな猫カフェのようだが、ここにいるのは、すんでのところで殺処分を免れた猫ばかり。この『東京キャットガーディアン』の開放型猫シェルターで、新しい家族として受け入れてくれる人を待っているのだ。

 猫たちはその多くが、東京や神奈川、埼玉の保健所や動物愛護センターから、代表の山本葉子さんが引き取ってきた子たち。加えて、特殊清掃や民生委員、ケアワーカーなどの現場からSOSが発信され、レスキューされてきた子もいるという。

 山本さんは、「行政でも民間でも、受け入れが可能なときは、予定があっても全部吹っとばして行く」と話す。その言葉どおり、24時間365日、殺処分直前の状況から、数多の猫を助け出してきた。

 当初はイチ民間人に猫を譲り渡すことをよしとしなかった行政の担当者も、山本さんの情熱に折れ、徐々に引き渡しに協力してくれるようになった。

 任意の保護団体として2008年に活動しはじめてから、里親に引き渡した猫は4500匹を超える。運営資金などは税金には頼らず、すべてボランティアやカンパなどでまかなってきた。

「東京キャットガーディアンでは、“必要なのは、愛情ではなくシステムです”と呼びかけてきました。猫付きマンションや猫付きシェアハウスがいい例ですが、猫を救う仕組みがあることが大事なんです」と山本さんは話す。

 引き取られた猫たちは、獣医による診察を受け、ワクチン接種や不妊去勢手術をしてから、開放型シェルターに「デビュー」する。健康でのびのびと遊んでいる猫の姿からは、悲壮な雰囲気は感じられない。

「どんなに居心地のよいシェルターをつくったところで、ここは猫たちにとっては、仮の住まい。本当のおうちにはかないません。ベストの場所ではないものの、それでも殺処分よりはマシ。いつもどこかに罪悪感を背負って、この活動をしています」

 シェルターと非公開の施設を含めると、常時100匹前後、多いときは300~400匹が、新しい家族との出会いを待っている。里親希望の人は、このカフェスペースで面談を受ける。

「1度は保護し、助けた命です。誰にでも引き渡せるわけではありません。たとえ里親希望の方でも、条件が合わなければ、お断りすることもあります」

 猫、そして犬の殺処分ゼロになるその日まで、山本さんとスタッフの取り組みは続いていく。