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 11月初旬、お堅い医学専門誌で発表された5ページほどの論文が、ツイッターやネット上で大きな反響を巻き起こした。

 医療関係者や主婦、子どもが生まれたばかりの新米パパまで反応したのは、『小児科臨床』(11月号・日本小児医事出版社刊)に掲載された『キラキラネームとER受診時間の関係』という論文。

 著者の松浦祐史さん(30)が日本赤十字社和歌山医療センターで初期研修医を務めていたころに実施した調査をまとめたものだ。

 調査するうえで難しかったのは、キラキラか非キラキラかを線引きする明確な定義がないこと。自分の印象で決めるわけにはいかないので、松浦さんは同僚の協力を得ることにした。

 同病院に勤務する平均年齢30.4歳の医療スタッフ27人(男性13人/女性14人)に無記名アンケートを実施したのだ。

「具体的には漢字書きの名前に対して読み方を回答してもらった後、実際の読みを確認したうえでキラキラネームと思うかどうか名前を選別してもらう。そのうえで5割以上のスタッフが正しく読むことができず、かつ5割以上のスタッフが“これはキラキラネームだと思う”とした名前を持つ患者をキラキラネーム児と定義しました」(松浦さん)

 調査結果がツイッターで取り上げられるやいなや話題沸騰。批判を含めて、さまざまな意見が続出したのは前述したとおりだが、調査結果には当の松浦さん自身も驚いたという。

「今回の調査は学生時代から考えていたものですが、差が出るわけはないと思っていました。ネット上などでキラキラネーム児のご両親が悪く言われているのは知っていましたが、僕はこれをはっきりと不快と思っていて、こうした誤解は血液型占いと一緒、思い込みだろうと。つまり、“決めつけはよくないよね”という結論で発表できるとさえ思っていたんです」

 松浦さんの最初の見立てどおり、救急車を利用してERを受診した子どもの割合や、その緊急度を示す『トリアージレベル』については、こういう結果に。

「キラキラネーム児と非キラキラネーム児を比べても、有意な差はありませんでした」

 救急車を呼ぶことをためらった場合、子どもの生命を脅かす危険性もありうるわけで、救急車を呼ぶのが必ずしも悪いとはいえない。だが、酔っ払いがタクシーがわりに救急車を呼ぶような困ったケースがあるのも事実だ。

「今回の論文は限られた地域のわずか1週間のER受診率をまとめたものであり、よそで調べれば違った結果が出る可能性もある。名前ですべてを結論づけるつもりはありません。保護者の状況(年齢や同居人、収入など)も異なるだろうし、ER受診時間に影響を与えそうな要因はほかにも複数考えられますから」(松浦さん)

 小児科医や産婦人科医のなり手不足が指摘される中、休日や夜間に救急外来患者が集中することは医師らを疲弊させる。日中の診療時間内に受診できるはずの患者が割り込むことは、本当に救急診療を要する患者の妨げにもなりかねない。

 結論を出すには、サンプル数を増やし、より詳細で長期間にわたるデータ収集が求められることは間違いない。