s-asakusa1214

 江戸時代の後期、盗賊たちから“鬼の平蔵”と恐れられた火付盗賊改方長官・長谷川平蔵の捕り物を描いたドラマ、鬼平犯科帳スペシャル『浅草・御厩河岸』(フジテレビ系・12月18日夜9時~)が放送される。

 原作は池波正太郎の名作『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)。現在は年に1度、スペシャル版で登場するが、「鬼平」には長い歴史がある。

 中村吉右衛門が主演でスタートしたのは1989年。2001年まで連続ドラマとして全137本を放送。以降、2005年からは単発のスペシャルドラマとして11本を放送している。

 その間に、人間国宝になった吉右衛門は、実に26年もの間、長谷川平蔵を演じているのだ。通算で149作目となる今回の『浅草・御厩河岸』は、1989年に放送された第1シリーズのなかの1本で、名作と呼び声が高いもの。

「原作は池波先生の鬼平作品の第1作目です。“鬼平”では定番になっている本筋の盗賊の3か条“殺さず、犯さず、貧しきから盗らず”が初めて登場しますし、平蔵と密偵(内情や秘密を探る者)との関わりも描かれています。まさに“鬼平”の原点ともいえる作品です」(同作を手がける能村庸一氏)

 “鬼平”初心者でも十分楽しめるのが本作だ。

「“鬼平”は、感性の襞のようなものがたくさんある作品です。まずは年を重ねるごとに円熟味を増してきた吉右衛門さんの魅力。そして、単に捕まえる者が善で捕まった者が悪というのではない、人間味のある勧善懲悪の物語。また、美食家の池波先生の作品ならではの食へのこだわりなど、どこから見ても楽しめるつくりになっています」(能村氏)

 佐生哲雄プロデューサー(松竹)は、連続ドラマ時代からの出演者も魅力と語る。

「歌舞伎、新劇、映画などさまざまなジャンルで活躍する実力のある俳優さんにご登場いただいています。ベスト・キャスティングのレギュラー陣、そしてゲストといえます。演じている方も、これは自分の役だ、誰にも渡したくないという気持ちを持っているようです」

 今回の物語の舞台は、浅草の御厩河岸。複雑な人間関係、親子の情も描かれた見ごたえのある作品になっている。足立弘平プロデューサー(松竹)によると、撮影現場は、いい意味で緊張感に包まれているという。

「無駄話の出ない、ピリッとしたいい現場ですよ」

 でもこんなエピソードも。

「吉右衛門さんの決めゼリフに聞きほれて、久栄さん(多岐川裕美)やおまささん(梶芽衣子)はセリフが出てこなくなったことがありました。私も思わず、“播磨屋!”(吉右衛門の屋号)と言いたくなりました(笑い)」(能村氏)