ishizaki0108

 東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発(以下・1F)の事故から4年9か月。東電は「福島への責任を果たす」として、’13 年1月に福島復興本社(楢葉町)を設置。福島第二原発(以下、2F)の元所長・石崎芳行氏(62)が代表に就任した。

 福島復興本社は賠償と除染、復興に向けた活動を推進する役割だ。このうち復興推進は大きく分けて2つあるという。

「ひとつは“汗かき活動”です。一時帰宅した方々の家屋の片づけや草刈り、お墓の掃除、雪かきを手伝います。社員には制服を着用させています。社内では“作業中に制服を着ると何をされるかわからない”と反対があったが、責めを受けるのは当然です。

 もうひとつは雇用の創出。広野火力発電所(広野町)と、東北電力などと共同出資している勿来発電所(いわき市)に世界最新鋭の石炭火力発電所を作ります。2000人が雇用でき、税収も増えます」

 さらに、19社で作る応援企業ネットワークを組織する。19社の社員とその家族が福島県産品を買ったり、家族で県内を旅行するなどして、口コミでよさを伝えていく。そもそも石崎代表は、原発事故の責任をどう考えているのだろうか。

「旧経営陣が刑事告訴されたが、裁判は見守るしかない。ひと言でいえば、事故への備えが十分でなかった。放射性物質を拡散させ、迷惑をかけました」

 石崎代表は、社内では珍しく原発の管理に対して批判的だったが、それゆえに2Fの所長を任された。そこでまじめに働く作業員を目の当たりにして、安全性に確信を持ったという。こうした現場主義の石崎代表としても事故はショックだった。

「2Fの所長をしたとき、自分も原発は安全と思っていました。住民たちには“安全だから地震があったら構内に逃げ込んでもいい”と言っていましたから。今は、自分の意識を恥じています。

 震災後、住民から“おまえの会社の言うことは信用できない”と言われました。結果としてダマしてしまったのだから、嘘つきと言われてもしかたがない。それでも、東電として住民の信頼を取り戻したいが、並大抵のことではできません」

取材・文/渋井哲也(ジャーナリスト)