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葉山御用邸で、フィリピン訪問のお疲れを癒した両陛下(2月5日)

 この春、天皇・皇后両陛下は奈良県の神武天皇陵を参拝される予定だという。

 皇室を長年取材するジャーナリストで文化学園大学客員教授の渡辺みどりさんは、皇室内の"歴史教育"について、とあるエピソードを明かした。

「1970年代、美智子さまが皇太子妃時代にお住まいだった東宮御所を私が訪れたときのことです。本棚に『かみさまのおはなし』という、『古事記』に書かれた日本の神話を子ども向けにした童話があるのを見かけました。

 両陛下は、皇太子さまや秋篠宮さまや黒田清子さんが幼いころから、日本の成り立ちや皇室の先祖の伝承について、きちんと教育されているのだなと思いました」(渡辺さん)

 それから約40年、皇后美智子さまの“教育の成果”は、孫の世代まで着実に伝わっているようだ……。

 宮内庁関係者は、天皇ご一家のこの春の予定について説明する。

「4月3日は、初代の天皇とされる神武天皇が崩御してから2600年にあたる式年祭が行われ、天皇・皇后両陛下は奈良県の神武天皇陵を参拝される予定になっています。

 100年前に、大正天皇が参拝した前例もあります。陵の隣にあり神武天皇を祀っている橿原神宮にも、両陛下はお立ち寄りになることも検討されています」

 75年前の「紀元二千六百年」を思い浮かべる人もいるかもしれないが、当時は神武天皇が即位したとされる年を祝うもので、今回は没してから2600年の節目にあたる。

 新大阪駅から電車を乗り継いで1時間余り。奈良盆地南部にある畝傍山のふもとに、神武天皇陵と橿原神宮は隣接している。

「神武天皇は、『古事記』や『日本書記』に、125代続く天皇の初代として伝承がありますが、戦後の古代史学界では、疑問視されてきました」

 そう説明するのは、皇室制度史に詳しい京都産業大学名誉教授の所功さん。

「しかし、最近では第10代の崇神天皇が3世紀前半ごろ実在されたと判明しました。従って、それからさかのぼり、初代の大王は1世紀前半ごろ、現在の神武天皇陵や橿原神宮のある周辺に、拠点を築かれた可能性は研究者の間でも認められつつあります」(所さん)

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お茶大附属幼稚園時代に、悠仁さまは秋篠宮ご夫妻と一緒に神武天皇陵を参拝された('12年11月)

 ただ、その年代は、どんなにさかのぼっても今から2000年ほど前のことで、今回の2600年とは大きな開きが─。

「このことは、歴史に詳しい今上陛下も、皇太子殿下もよくご存じだと思います。とはいえ、その即位や崩御の年月日を記した史料が『日本書記』以外に現存しません。そのため明治以降、それを新暦に換算し、2月11日を『紀元節』(現在の『建国記念日』)、4月3日を『神武天皇祭』と定め、皇室でも民間でも大事にされてきました」(同)

 今回のご参拝は、歴史や伝統を大切にする天皇陛下と美智子さまらしいものだが、重要な日だけに“役割分担”をされる方向で話が進んでいるようだ。

「当日は、秋篠宮ご夫妻が両陛下に同行されることになりそうです。秋篠宮家では、お子さま方も小さいころから神武天皇陵を拝礼されていますが、皇族としての教育の意味もあったのだと思います。長女の眞子さまが11歳、次女の佳子さまが8歳だった'03年3月に、初めて神武天皇陵を参拝されました」(秋篠宮家関係者)

 長男の悠仁さまは幼稚園時代の'12年11月に、スーツにネクタイ姿で玉串をささげられている。