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 昨年のペットフード協会の調査によると、猫の飼育頭数は987万4000匹で、犬の頭数を越す勢いだ。

 散歩の必要がなく、高齢者でも飼いやすいことから増加傾向にあるとみられる。一方で、人間の都合で捨てられる猫も後を絶たない。そんな猫たちを救う試みが全国で広がりつつある。

 NPO法人『東京キャットガーディアン』は、年間700匹以上、里親に譲渡を行う猫カフェ型シェルター。 カフェ型のため、足を運びやすく、家で一緒に暮らすイメージもつかみやすい。また譲渡後も、団体が行う『初めての猫飼い講座』(不定期開催、参加費1000円)などの勉強会や、猫に関する相談電話『ねこねこ110番』など、サポートも充実している。

 万全の態勢に見えるが、この団体がここに至るまでには代表・山本葉子さんの大変な苦労があった。

「自宅で個人シェルターを7年間行い、その後、今の団体を設立。今年で8年目を迎えました。1月末までに、譲渡した猫の総数は4791匹になります」(山本さん)

 山本さんは行政の管理施設に引き取られた猫や野良猫、個人から引き取った猫をいったん自宅のバックヤードシェルターで保護している。病気の猫や、体力のない猫、人間に怯える猫などもいるが、開放型シェルターに移せるようになるまでケアが欠かせない。

「自宅に残る猫は重大な病気を抱える猫や、極端に怯える猫たち。ですが、たとえハンディキャップを抱えた猫であっても、開放型シェルターで暮らせるなら、飼育は難しくありません」(山本さん)

 ただし、開放型シェルターにいる猫は子猫だけではない。成猫は、猫カフェスタイルをとっていても、譲渡に結びつかないこともあるという。

「成猫は子猫に比べて譲渡が難しくなるのは確か。そして、シェルターに1匹の成猫が長くいると、それだけ保護できる猫の数が減るということなのです」(山本さん)

 シェルターには常時300匹近くが保護され、譲渡数は年間700匹にのぼる。“殺処分ゼロ”を目指すにあたり、山本さんは社会全体の課題として次のように指摘する。

「足りないのは愛情ではなくシステムです。ペットショップやブリーダーから購入する以外に、民間の保護団体から譲り受けるというルートを社会に定着させたいと思っています」(山本さん)

 山本さんは現在、猫付きのマンションやシェアハウスなど、ほかの業種とのコラボで、猫の譲渡に結びつける取り組みに力を入れている。

「前職がイベント業だったので、アイデアを出すことは得意。現在はハウスメーカーとコラボし、猫との暮らしをイメージした家づくりに関わらせてもらっています」(山本さん)

 山本さんの取り組みで救われる猫たちは数多い。猫と一緒に暮らすなら、里親制度も選択肢のひとつとして頭に入れておこう。