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 東海テレビの記念すべき第1作『雪燃え』('64年放送)に主演した水野久美。

 円地文子原作の、華やかな華道界を舞台にした人間の表裏を描いた文芸作品。水野は、周囲の思惑を冷静に見つめながら、したたかに高みを目指す美しきヒロインを演じた。

「テレビドラマのデビュー作品になります」

 すでに東宝の女優として、舞台や映画で活躍していたが、初めての本格的なドラマ。その現場については、こう振り返る。

「舞台のような長回しと、映画でのカット割りがあって、中間のようだなと感じました」

 3台のカメラが構えるスタジオでの収録は、慣れないことも。

「最初は、カメラの赤ランプが点灯している意味さえわかりませんでした。撮影している合図なのですが、役に没頭していると、1カメ、2カメ、3カメの位置を忘れて(共演者に)かぶっちゃうこともありました」

 当時のテレビドラマは、電気紙芝居と揶揄される風潮も残っていたが、躊躇はなかったという。

「私自身、新しもの好きで、ずっとテレビに出たいと思っていたので、(出演依頼は)うれしかったです」

 65回放送の長丁場。帯ドラマは、膨大な台本と向き合い、睡眠時間を削っての収録が続いた。

「舞台が好きなので、セリフを覚えるのは苦には感じなかったです。(収録後に)飲みや食事にも行きましたよ。若いからできたんでしょうね(笑い)。(ドラマが)終わった後は、充実感がありました。長い間、同じ仲間とドラマ作りをして人間関係にもプラスになりました。

 慣れなかったカメラ位置やカット割りも、次はもっとうまくやろうと意欲が湧いて、テレビでのいいスタートになり、チャンスをいただけたと思っています」

 昼ドラは、その後も『幸せづくり』('99年放送)や『白衣のなみだ』('13年放送)などに出演している。

「もう1回、出てみたかったですね。面白いおばあちゃん役とかやりたかったですね。(昼ドラが姿を消すのは)時代の流れでしょうかね。寂しいです」