『ドン・キホーテ』の薬コーナー

 福岡県博多港。埠頭に停泊した巨大なクルーズ船から次々と乗客が降りてくる。その数5000人。ほとんどが中国人の家族連れだ。全員が下船するまでに数時間あまり。乗客は、港に並んだ100台以上のバスに分乗し、免税店やドラッグストアを目指す。

 中国事情や“爆買い”に詳しいジャーナリストの中島恵さんはこう話す。

「昨年1月に入国管理法が改正されて、指定のクルーズ船の乗客はビザが不要になったんです。滞在時間は12時間以内ですが、飛行機と違って船は貨物制限が緩いため、大量に買い物をしたい人にとっては費用も安くすむと人気なんです」

 博多港に寄港する中国からのクルーズ船は、'14年には99回だったが、昨年には約270回と急増。今年さらに増えるのは確実らしい。

 “爆買い”といえば、温水洗浄便座や紙オムツの大量買いのイメージが定着していたが、現在、彼らは日本に何を買いに来るのか。

 一般社団法人『ジャパンショッピングツーリズム協会』事業推進部の佐藤暢威さんはこう語る。

「中国人は、日本に“安全”を買いに来ているんです。その背景には、中国製品への不信感がある。特に食品などの口に入れるものや、肌につけるものは、安全・安心なものが欲しい。お菓子、洗顔料、基礎化粧品、ベビーパウダー、目薬、粉ミルクなどが人気ですね。

 以前、日本で買い物をしていたのは一部の富裕層か、中国でニーズの高い商品を土産として配布、または転売する人たちでした。それが最近は、幅広い層の人々が訪れるようになり、自分で使うための商品を買うようになったんです」

 前出の中島さんも、トレンドに変化を感じている。

「現在の売れ筋は、美容家電や日用品ですね。日本のドライヤー、電動歯ブラシなどの品質の高さは有名。またラップやストッキングなどの日用品もよく買う。なぜなら、中国製品はそれらの品質がよくないから。中国にも同じようなものを作る技術はありますが、家電やカメラなど国益になるものから技術は発達し、日用品は後回しなんです」