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 JRAで16年ぶりに誕生した女性騎手・藤田菜七子騎手が話題を集めている。そこで、JRA初の女性騎手の細江純子さんに話を聞いた。

「小学生のとき、ヒロインが馬と成長するアニメ『ハロー! レディリン』(テレビ東京系)が大好きで。それで競馬を見るようになりました。そして、ある大レースで、まさに“人馬一体”となった武豊さんを見て“なんてステキなんだろう!”と中学生のときに騎手を目指すことを決めました」

 普通は中学卒業後に競馬学校に入学するが、受かるための方法を何も知らなかった細江さんは、準備が必要だと思い、高校に進学。

「高校2年のときはダメでしたが、3年のときに合格できました。私は12期生で、同期は女の子が3人いました。実は11期生にも女性が3人いたんですが、誰もデビューできなかったんです。だから“なんとしてもこの子たちは”というJRAのサポートもありがたかったです」

 卒業後はデビュー週に出場することができた。

「当時の競馬は男社会でしたから、1回でも失敗すれば“やっぱりお姉ちゃんには乗れないよね”と言われるのはつらかった。どんどん“失敗しちゃいけない”とがんじがらめになってしまった」

 馬は本当に繊細な生き物。乗り手の緊張や硬さを感じ取ってしまうそうだ。

「今にして思えば、もっと馬に寄り添って対話するとか、力を抜かせてあげるとか、非力な女性にもできる方法があったような気がします。もっと周りを頼っていればよかったんです」

 そんなとき、武豊に「海外には女性ホースマンがたくさんいる」と声をかけられ、フランス遠征に同行。

「今まで“乗らなきゃ”“勝たなきゃ”ばかり考えていたけど、海外を見たことで、気づくことが多かったですね。何より自分は馬が好きだったことを思い出しました。これがきっかけで、シンガポールで乗る機会を得られ、日本女性騎手としては初めての海外勝利も挙げられました」

 ケガもあり、'01年に引退。引退後は、競馬を離れようとも思ったという。

「武豊さんが“せっかく関わったんだから、競馬を伝える仕事をしてみたら?”とすすめてくださいました。“ホースコラボレーター”として取材・発信を始めてみると、今までいかに自分のことしか考えてなかったかを知りました。

 競馬の裏方さんの“重箱の隅をつつくような”細かい馬のしぐさも見逃さない努力や労力。それを見て“もっと競馬を知りたい!”と思うようになりました」

 今年3月、16年ぶりに女性騎手の藤田菜七子騎手が誕生。裏方で奮闘する女性も増えている。

「周りの男性も、変に“女性だから”と扱わなくなり、みんな自然体で働いています。取材を通じて知り合った夫は、裏方の仕事をしています。厩舎を開いて、調教師になるのが夢なんですが、私も一緒に参加していきたい。そんな形で現場に戻りたいですね」