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 実写化は不可能と言われた、丸尾末広の伝説的なカルト漫画『少女椿』が映画化される。メガホンを取ったのは、初監督短編映画がモントリオールを始めとする7か国11か所の映画祭に招待上映、国内映画祭で準グランプリ受賞したほか、ファッションデザイナー&ディレクターとしても活動するTORICO監督。

 『少女椿』の大ファンだという監督が自ら映画化の交渉をしたという。

「原作を読んで以来、自分で映画を撮りたいとずっと考えていました。なので、まずは原作の版元である出版社に自分からお願いしに行きましたね」

 エログロな内容のため、これまで何度も実写化する案は上がるものの頓挫していた。

「作者の丸尾さんはNGを出していないそうなんですが、内容が内容なので、なかなか出資する方がいなかったらしく、頓挫し続けていたみたいです。だから、私がお願いしに行ったとき、“今回も実写化できなかったら丸尾先生が悲しまれます。覚悟はありますか”と念を押されました。

 その時はやる気満々だったので『やります!』と断言したのですが、やはりスムーズには進まなくて、丸尾先生にはお待たせしてしまって申し訳ないなと」

 原作の権利獲得から映画化まで、実に7年もかかったという。

「映画会社に映画化のお話しを持っていくと、映画化するか、しないかの決定が出るまで1社につき1年ほどかかるんです。で、単純計算で言うと7社目で決まったという感じですね。

 その期間に5本くらい映画を撮るために動いていたのですが、昨今の映画不況で軒並みダメになってしまって。自分が持っていた原作権が『少女椿』だけだったので、これは絶対に映画化させるぞ、と必死でした」

 ギョロリとした瞳が印象的なヒロイン・みどりを演じるのは、今作が映画デビューとなる中村里砂。

「基本的に丸尾先生は意見を言わない方なのですが、みどりちゃん役に関しては“みどりちゃんを演じる人は目が大きいですか?”と、そこだけ心配されていましたね。私自身も、みどりちゃんのキャスティングに関しては、ビジュアルを重視しました。原作の絵にいちばん近いということで、中村さんを選ばせていただきました」

 原作の世界観、ルックスに最も近いという理由で選んだヒロイン役だったが、演じた中村も原作のファンだったそうだ。

「中村さんとはもともと友達だったんですよ。演技は未経験でしたが、彼女は演技ができるという変な確信を持っていましたね。

 実際、私が撮りたい世界観をすぐに理解してくれました。撮影現場でも飲み込みが早く、“初主演”というのを忘れるぐらい堂々とした演技をされていたので、予感は的中していたなと思いましたね」

■原作ファン以外でも楽しめる内容を意識

 同じく原作ファンである鳥居みゆき、カルト芸人の鳥肌実といった個性的な顔ぶれがそろう中、異色の存在なのがジャニーズ事務所所属の俳優・風間俊介。ヒロイン・みどりへの独占欲を露わにしていく、奇術師・ワンダー正光役を怪演している。

「風間さんのキャスティングを映画会社の方から提案された時に、“ワンダー正光役はこの人だ!”と思ったんです。以前から、風間さんの演技の中に、どこか不気味な恐ろしさを感じていたので、ぜひやっていただきたいと思いましたね」

 朝ドラにも出演経験のある爽やかなイメージとは一転、劇中ではどんどん年老いていく老けメイク姿も披露。

「風間さん自身が綺麗な顔をされているので、老けメイクも似合っていましたね。演技力も含め、すごい役者だなって思いました。あまりにも老けメイクが似合っていたので、メイクを落としていつもの風間さんに戻った時、逆に爽やかすぎて驚いたぐらい(笑)」

 今作はR15に指定されている、少し過激なシーンもある作品。風間俊介目当てで足を運ぶファンにこんなメッセージを。

「風間さんの演技力の素晴らしさや、振り幅の大きさはこの作品で十分に発揮していただいていると思うので、そこを堪能してほしいですね。そして、普段はなかなか見られない老けた風間さんの姿も楽しんでいただけたらなと思います」

 丸尾末広ファン待望の初実写化を成功させたTORICO監督に、最後に改めて見どころを聞いた。

「日本でそのままエログロとして表現してしまうと偏った表現になってしまいますが、とにかく美しく表現することで、世界観を壊さずに映像化できたと思っています。また、原作ファンの方だけに喜んでいただけるような内容だと、エンターテイメントではなくなってしまう。そこに注意して誰が見ても理解できるように仕上げたので、原作を知らない方にもぜひ見てほしいですね」

 映画『少女椿』は5月21日、シネマート新宿ほか全国で順次ロードショー。