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 現場を重ねるごとに俳優としての“意識”が変わってきたと話す松坂桃李。

「以前はぬるま湯につかっていたというか、波風立てずに生きてきました。でも、今は違います!」

 若手俳優として着々とその実績を重ね、映画にドラマ、CMと大活躍。ついこの前までドラマ『ゆとりですがなにか』で“童貞”の小学校教師役を好演した彼だったが、今度は舞台『娼年』で人間の欲望渦巻く世界に身を置く娼夫に。

「童貞役から娼夫ですから(笑)。でも迷いはなかったです。最初は正直、驚きました。今まで僕が関わってきた作品やCMなどの“パブリックイメージ”とは、なかなか結びつきにくい作品だったので。でもむしろいい機会だなって思ったんです。

 いわゆる“イメージ”を保ち続けることも大事だとは思うんですけど、僕はそれを続けていくと自分が自分に課すハードルが低くなっていく気がして。そのハードルを上げて新しい自分を見いだすためにも、やったことのない役をやってみてはどうだろうかと」

 そういった意識は大河ドラマ『軍師官兵衛』で官兵衛の嫡男・黒田長政を演じたころから芽生えていったそう。

「大河が終わったくらいから、これまでとは違った作品の話をいただく機会が増えて、そこからどんどん興味のアンテナが増え始めたんです。何事もやってみないとわからない、やってみないことには食わず嫌いなし!(笑)」

 そんな思いから『エイプリルフールズ』ではセックス依存症、『ピース オブ ケイク』ではオネエ、さらに『MOZU』では殺人鬼など、役柄の幅を広げてきた。松坂含め、20代の俳優がグイグイ勢いづいているが、自身の人気を実感することは?

「いやいや、(持っていた『週刊女性』を指さし)この表紙を飾っている福士(蒼汰)くんなど、人気者はたくさんいますから(笑)。最近では『ゆとりですがなにか』ですごく刺激をもらいました。岡田将生に柳楽優弥、やっぱり同世代はすごい人がたくさんいるんだなって」

 『ゆとり~』では共演者たちと飲みに行ったり旅行したりと、ひと足遅い“青春”のひとときを過ごしたと振り返る。だが、人間の欲望が描かれる今回の舞台『娼年』は“女性の世界”だ。

「僕、3人きょうだいで姉と妹がいて、基本的には“巻き込まれ型”で育ってきているので、何かあっても大丈夫かと(笑)。女きょうだいの家って、男の立場が弱いんです。なるべく関わらないほうがいい。あとは“はい!”ってすぐに返事をすること。これ大事です(笑)」

 しかも、今回は座長という大役。でも、あまり構えてはいないそう。

「みんながひとつの作品に集まっている感じで、すごくいい雰囲気です。例えば女性陣がモメてもいいと思うんですよ、結果的にいい作品になれば。でもモメたときは、僕は女きょうだいの中で培った術を使って(かわす動作を見せながら)スッスッスッスとよけます(笑)」

 どんな松坂桃李が見られるのか、本番が楽しみだ。

「すごいプレッシャー(笑)。今回の舞台はこれまで自分がやったことのないような作品ですし、不安もまだたくさんありますが、それはどの作品も同じです。自分に課したハードルをどれだけ越えられるか、とにかく頑張ります!」

 また、友達のトンデモ発言にびっくりしたエピソードも。

「女きょうだいで育つと、女性に対して夢を持たなくなりました(笑)。男きょうだいに育った友達や、男子校出身の友達は突拍子もないことを言うんです。女性はオナラをしないとか(笑)。

 いやいや、女性だって男と同じ生きものだからって。だらけるし、甘えるし、いい加減なときもあるよって。僕は女性のそういうところを見ていると、すごく親しみを感じますね」

 では女性に求めるものは?

「刺激よりは安心感かな。母性? う~ん。どうだろう、求めるかなぁ。安心感が母性につながるのかな。女性には安らぎを求めます」

 恋愛よりは、男の友情を優先する?

「昔、彼女に僕の親友を好きになったからってフラレたんです。でも、その親友とは今でも仲がよくて。そこの関係は崩れませんでしたね。もはやその話題は“あのときさ~俺フラレて、あの子お前と付き合ったじゃん! ワッハッハ”みたいな。今となっては昔の話。男の友情は強いですよ」

 最近のイメージとはちょっと違う茶髪姿。

「今、来年公開の映画『キセキ』の撮影中で、この時期限定ビジュアルなんです。レアですよ!」(マネージャーさん)

 最後に「今後もいろいろと取材させていただければ!」と伝えると、熱愛報道の見出しを見て「いろいろっていうのは……まさか……!」と、最後までちゃめっけたっぷりだった。

◎舞台『娼年』

 直木賞作家・石田衣良原作『娼年』『逝年』を、鬼才・三浦大輔の脚本・演出で舞台化。フリーターの森中領(松坂桃李)は、ボーイズクラブを経営する御堂静香(高岡早紀)に見いだされ、娼夫として仕事のやりがいを見つけていく……。

*東京芸術劇場プレイハウス(8月26日~9月4日)ほか、9月7日~15日には大阪、久留米公演も。チケット発売中。詳しくはホリプロチケットセンター03-3490-4949

撮影/廣瀬靖士