ひと昔前なら“亭主関白”に“かかあ天下”。そんな言葉でくくられていた夫婦関係が、最近、「夫源病」という言葉で指摘されはじめた。夫の無神経な言動によるストレスが原因で、妻が心身の不調に苦しむ状態をさす。’11年に循環器科専門医の石倉文信さんが提唱した言葉だ。また最近では、妻が原因で夫が苦しむ「妻源病」の存在も明らかに。

 夫婦がともに消耗せず、なるべくストレスなく一緒にいるためのアドバイスを、石蔵さん、夫婦問題に詳しいカウンセラーの奥元絢子さんに聞いた。

【1】適度な距離を保つ

 夫/妻源病の症状が悪化している場合は、まずは配偶者と離れる時間を作ってみること。

「夫源病の場合、妻の行動を縛りたがる夫が多いですが、まずは飲み会、次に1泊、長期の旅行と段階を踏んで説得を。留守にする間の世話はしない、外出中は夫と連絡をとらないのがポイント」(石蔵さん)。

「まずは自分を癒す時間をもち、それから問題解決を。心身の健康が保てないなら、実家に帰るなどして、いったん逃げるのもあり」(奥元さん)

【2】プチげんかや話し合いをする

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 石蔵さんは、不満はその場で伝えてプチげんかをし、本音を言い合える関係を作ることをすすめる。

 また、奥元さんは「Iメッセージ」での会話を提案。

「“あなたってなんでそうなの!”というYouメッセージではなく、“そういう言い方されると、私は傷つくんだ”と自分を主語にしたIメッセージで伝えると、相手は責められているように感じません」

 それでもうまく話し合えないときは、カウンセラーなどの専門家や第三者の力を借りて。

【3】自分なりのストレス発散方法をもつ

 自分なりのストレス発散方法でやり過ごすのもひとつの手。

「サンドバッグを夫に見立てて殴る、ぬいぐるみを壊す、皿を割るなどのほか、カラオケで声を出すのも有効。感情を表に出すのも発散になるので、悲しい映画を見て思い切り泣くのも◎。また、不倫は危険ですが、アイドルに仮想恋愛するのはセーフと言えるでしょう」(石蔵さん)

【4】世間体を気にせず人に悩みを相談する

 石蔵さんによると、夫源病になる妻は、世間体を気にする人が多いとか。

「愚痴を言うのはカッコ悪い、夫とケンカするのはいい妻ではないと思い込みがち。心身の健康は、世間体を捨て、愚痴を言うところから始まりますよ。近所に話しやすいお医者さんがいるならその人に、難しいなら専門家に相談しても。また、夫婦がうまくいかないなんて当たり前。理想にこだわりすぎないことです」(石蔵さん)

【5】違う世界の人と交流し、立場の違う人のことを理解する

 夫婦問題を、女性はつい同じ立場の友達に相談しがち。

「例えば、専業主婦同士など同じようなライフスタイルの人と話していると、“私が一番大変”と思いがちです。そうすると、夫の大変さを思いやることができず、妻源病のもとに。違う性別、職業、年齢の人などと話すと、“夫も苦労している”と自然に思うことができますよ」(奥元さん)

【6】さまざまなコミュニティーで良好な人間関係を築く

 米・ハーバード大学が'38年から75年続けてきた研究によると、50代での人間関係に満足しているかどうかが、80代での健康を左右するとか。

「年をとると、人間関係は狭くなりがち。趣味などを通じて、多様な人と豊かな関係を築きましょう。たとえ夫婦関係が悪化したままでも、よい友達がいるなど、ほかのことで人生を充実させることはできます」(奥元さん)

《プロフィール》
◎石蔵文信さん
循環器科専門医。大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科教授。'01年に設立した「男性更年期外来」で中高年男性を診察するうち、背景に夫婦問題があることに気づき、「夫源病」を提唱。『妻の病気の9割は夫がつくる』(マキノ出版)など著書多数。

◎奥元絢子さん
カウンセラー&コーチ。社団法人日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラーとして、企業での研修で活躍。'12年からカウンセリング・サロン「WillCrown」を設立し、夫婦問題の悩みや身体と心の問題など、さまざまな相談を受け付けている。
http://willcrown.com/

イラスト/上田惣子