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 NHKスペシャルの放送をきっかけに、広く知られるようになった『腸内フローラ』。最近は、テレビ番組や雑誌で『口内フローラ』『肌フローラ』が取り上げられ、目にすることが増えている。

 毎日、きちんと歯磨きをしているつもりでも、わずかな磨き残しによって、歯垢のなかでも通常の歯磨きで取り除くことができない(細菌がスクラム状態で歯にへばりついている)バイオフィルムが拡大していく。バイオフィルムは、虫歯菌や歯周病菌などの温床で、1mgのなかに、およそ1億個もの細菌が存在し、増殖していく。

 鶴見大学歯学部探索歯学講座の花田信弘教授に話を聞いた。

「洗口剤や殺菌剤を使っても、菌の増殖スピードを抑えることはできますが、善玉菌もダメージを受け、効果的ではありません。バイオフォルムをつくらないようにするためは物理的に除去するブラッシングがいちばんです。洗口剤は、ブラッシングの後に使い、フッ素系をオススメします」

 加齢とともに、口臭が気になる人も多いが、その原因も細菌によるもの。

「口臭は、80%以上が歯周病菌の腐敗ガスです。残りは胃が悪かったり、消化器系に問題がある場合です。口臭の簡単なチェック方法としては、食事をしてから2時間後ぐらいに自分の口に手を当て、息を吐いてみてください。臭かったら歯周病菌が増殖している可能性が。歯科医院でクリーニングを受けてください」

 だ液は“天然の洗口剤”といわれ、口内をきれいにする作用がある。食後は、そのだ液によって細菌が減るため、一時的に口臭が弱くなる。

「だ液は普通、1日、1.5リットル出ています。降圧剤や糖尿病の薬を飲んでいると、薬の影響でだ液の量は減りますが、普通の方は、味覚刺激と咀嚼刺激によって分泌されるので、食べ物をよく噛んで食べれば、問題はありません。

 異なる食品を30種類、30回噛んで食べるのが基本です。繊維質の多い食べ物をよく噛むと、プラーク(歯垢)を取り除き、下手な歯磨きよりも清掃効果があります。オススメはリンゴ。でも高級品は糖度が高いので、避けてください」

 甘いものに含まれる糖質のなかには、酸を作り出して歯を溶かし虫歯になる原因や、歯周病菌のエサになるものがある。こうした糖質は炭水化物にも含まれ、加熱すると、デンプンが悪玉菌の好きな糖質に変わる。つまり炊きたての白いごはんが、実は口内環境を乱す一因にもなっている。

「口内の健康は、腸内環境からも影響を受けていますが、毎日のきちんとした歯磨きや歯科医院で定期的にケアを受けることが、とても重要だと思います」

◎教えてくれたのは花田信弘教授

 鶴見大学教授(歯学部探索歯学講座)。福岡県立九州歯科大学歯学部卒業。同大学院修了。米国ノースウエスタン大学博士研究員、国立感染症研究所部長、国立保健医療科学院部長を経て、'08年より現職。口内ケアのスペシャリスト

イラスト/きくちもも