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 2度にわたり震度7の激震に見舞われた熊本地方。復旧が進む一方、余震はまだ続き、十分な注意が呼びかけられている。

 熊本といえば、日本屈指の農業大国。全国シェア1位のトマトを筆頭に、スイカ、ナス、しょうが、スナップエンドウ、ゴーヤなど非常に多くの野菜が栽培、出荷されている。

 東日本大震災の後には、野菜価格が高騰したが、今夏も同じ現象が起きるのだろうか? 生活経済ジャーナリストのあんびるえつこさんはこう話す。

「東日本大震災のときは原発事故の影響もあり、西日本で生産された野菜が高騰しました。しかし、すでに熊本の野菜の出荷は回復しています。5月の関東農政局や九州農政局の発表によると、主要野菜(13品目)の価格は総じて平年並み。地震の影響はなさそうです」

 それならひと安心。と思いきや、あんびるさんはさらに続ける。

「野菜の値段を左右する主な要素に気象状況、円相場、原油の3つがあります。まずはこのところ、異常気象が続いていますよね。“〇年に1度の豪雨”などもよく耳にしますし、昨年は冷夏だったので、9月にはキャベツが41%、キュウリが24%も価格上昇しました。

 今夏はラニーニャ現象により猛暑が予想されています。天候が安定しないときに野菜価格は上がるので、今後も“例年どおりの気象”とは考えないほうがいいと思います」

 野菜は国内生産だけではなく、輸入も多い。家計を預かる主婦にとっては、輸入品を安く買える最近の円高は好都合だが……。

「7月に参議院選挙を控えているので、株価を上げるため、円安に誘導されるかもしれません。もし、大きく円安に振れたら、輸入野菜の価格は上がります。今後の動向はちょっと読みにくいですね」

 また最近は、より安定した供給のために野菜をビニールハウスで栽培する農家も珍しくない。ハウス内の温度調整に使われているのは、主に重油。

「原油価格が大きく変化すると、野菜価格に跳ね返ってきます。ここのところ下落傾向にあった原油価格ですが、中東が不安定になったり、投機的な思惑があったり、一気に上がることも。もし、今年の秋にトランプ候補がアメリカ大統領になったら、円相場も原油価格も、どんな反応をするか……」

 野菜の価格を左右する3要素は、どれもが不安定といえそう。

「そんな価格高騰に備える意味でも、自宅での野菜作りはいいですね。家計の負担の軽減にもつながると思います。それに、もし震災が起きたとき、“自宅に食べられる野菜がある”という安心感はかなり大きいのではないでしょうか」

 園芸家の深町貴子さんは、家庭での野菜作りの魅力をこう語る。

「自分で野菜を育てれば、種まきから収獲まで見守ることができます。そして、おいしくて安全なものを、新鮮なうちに食卓に並べられます。使いたいときに必要な量だけを収獲できるので、余らせてしまうこともありません。野菜を育てる楽しさ、収獲の喜びを多くの人に知ってもらえたらうれしいです」

 また、表のとおり、実際に野菜作りをしている人の“始めたきっかけ”は、「おもしろそう」「節約」「安心」「安全」という声が上位を占めていることがわかる。

「趣味で月に5000円使うとします。たいていは“楽しんで終わり”だと思いますが、野菜作りは楽しんだうえに、収獲したものが夕飯の一品になったり、薬味になったり。そういうお得度はあると思いますよ」(タキイ種苗株式会社・広報出版部の桐野直樹さん)

 多くの種や苗が出回るこの時期は、まさに野菜作りの始めどき。というわけで、まずはおすすめの野菜を3つ紹介。

【レタスミックス】

サラダの定番・レタスには赤葉や緑葉、フリルタイプ、シーザーサラダに欠かせないコスレタスなどいろいろな種類が。これらをミックスした種なら、1度にいろいろなレタスが味わえてお得。ベビーリーフなら10日目くらいから収獲可能。少しずつ収穫すれば、フレッシュなサラダが1〜2か月楽しめる。

【ミニトマト】

人気No.1のミニトマトは丈夫でほとんど失敗がなく、成長もスピーディー。あんどん支柱を立て、茎をぐるぐる巻きつけながら育てると、コンパクトで邪魔にならず、実にもしっかり日が当たって甘いトマトが収穫できる。

【ゴーヤのグリーンカーテン】

ラニーニャ現象で、今年の夏はより一層暑くなるとか。そこで、ぜひ挑戦したいのがグリーンカーテン。葉が日差しを遮るのはもちろん、根が吸い上げた水分を葉の裏側から放出(蒸散)することで温度を下げ、20%以上の節電効果があるとも言われている。初めての人は、定番のゴーヤからスタート。

 さらに、今から植えつけても間に合う野菜10種を、深町さんがピックアップ。

【エダマメ】

(種まき:4月中旬〜6月中旬/収獲まで:60日)

「大豆を未熟なうちに収穫したものがエダマメ。タンパク質やビタミンを豊富に含みます。日当たりのよい場所にプランターを置き、虫や鳥の被害防止に防虫ネットをかけます」

【ピーマン】

(植えつけ:4月中旬〜6月中旬/収獲まで:60日)

「暑さに強く、節ごとに花が咲くため、たくさんの実を収穫できます。ただし日照不足だと花が落ちやすくなるので、日当たりには気を配りましょう」(深町さん)

【オクラ】

(種まき:4月下旬〜6月中旬/収獲まで:70日)

「栄養価の高い果菜類としての魅力に加え、美しい黄色い花も楽しめます。成長が早く、実がすぐ固くなってしまうので、収穫時期は逃さないようにしましょう」(深町さん)

【サツマイモ】

(植えつけ:5月中旬〜6月中旬/収獲まで:150日)

「一般的には茎苗を、深い容器に植えれば簡単に育てられます。収穫は、イモ掘り気分で子どもにも好評。とれたイモは、1週間ほど置いたほうが甘みが増します」(深町さん)

【インゲンマメ】

(種まき:4月中旬〜6月中旬/収獲まで:50日)

「つるなし・つるありの品種がありますが、プランターではつるなしが、草丈が低く抑えられ◎。さやは10〜15cmで収穫しましょう。若いうちに収穫すると、柔らかくて美味です」(深町さん)

【小松菜】

(種まき:周年栽培可能/収獲まで:40〜50日)

「春から夏は虫に食べられやすいので、種まき後すぐに防虫ネットをかけましょう。種を密植してまくと、約30日後からベビーリーフとして収穫できます。サラダの1品にピッタリ」(深町さん)

【空芯菜】

(種まき:5月上旬〜7月下旬/収獲まで:30日)

「種皮が固いので、ひと晩水につけてからまくと、発芽しやすくなります。草丈が30cm以上になったら、先端から15cm程度を収穫。株元に葉を残すと新しい葉が伸び、秋まで楽しめます」(深町さん)

【ナス】

(植えつけ:5月上旬〜7月下旬/収獲まで:80日)

「煮てよし、焼いてよし、揚げてよしのナス。丸い形をしたものや、果皮が薄いものなど、種類が豊富です。日当たりのよい場所で、乾燥しないように水やりをしてください」(深町さん)

【シソ】

(植えつけ:5月上旬〜6月中旬/収獲まで:40日)

「葉に加えて、秋には穂ジソも収穫できるので、薬味や料理の香りづけに使いでがあり、お得感は十分。先端の葉を収穫してわき芽を増やすことで、収穫量を増やせます」(深町さん)

【小玉スイカ】

(植えつけ:5月上旬〜6月上旬/収獲まで:50日)

「日本の夏を代表する果物(厳密には野菜)であるスイカは、ベランダ菜園では小玉スイカが一般的です。長い日照時間が必要ですが、その甘みに感動しますよ!」(深町さん)