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長谷川豊(はせがわ・ゆたか)●フリーアナウンサー。1975年、奈良県生まれ。立命館大学卒。'99年フジテレビジョン入社。『情報プレゼンター とくダネ!』レポーター、競馬実況中継などで活躍。'13年同社を退社し現職。『バラいろダンディ』(MXテレビ)、『ニュースリアル』(テレビ大阪)、『未来展望』『上沼・高田のクギズケ!』(読売テレビ)など週8本のレギュラー出演のほか、講演や執筆活動など幅広く活躍中

 フジテレビがダメになった理由は、インターネットの隆盛によって時代がずいぶん変わっているのに、その変化に対応できなかったことだと思います。

 いま僕はIT企業と提携して仕事もしていますが、これらの会社に月曜の昼に「土曜日までに」と仕事を頼むと、その日の深夜1時にはもう仕上がってくることもあるほどです。

 これがフジだったら「それには全員集めてミーティングをして……。では来週の水曜に最初のミーティングで……」となってしまいます。IT企業の「速力」に完全に負けていて「時代の波」についていけていないのです。

 そして、一部の上層部と特定の芸能事務所のつながりが強すぎることが挙げられます。いきなりトップダウンで「あいつを使え」と現場に押しつけてくる。

 例えば安藤優子さん。旦那さんが情報制作局の元局長だったから、『直撃LIVE グッディ!』(月~金曜午後1時45分)に押し込んでくる。

 彼女が悪いといっているのではなくて、あの時間帯の視聴者層である主婦にウケないことは誰でもわかる。その裏で『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)の宮根(誠司)さんは対照的。(視聴率含めて)勝てるわけがないですよ。トップダウンで決まる、使わざるをえない、勝てない。

 現場はそんな闘いばっかりやらされています。それは報道でもドラマでもバラエティーでも同じです。

 そして最大の問題が上層部の局長・取締役以上で、日枝久会長のイエスマンしかいない。日枝さんにゴマをすり続けて昇進させてもらった上層部に対して、プライドのある社員はハッキリ文句を言う。

 でも言ったら人事異動で飛ばされる。そうすると誰も何も言えない状態になりますよ。そんな組織が活気づくはずがないですよね。

 僕は'13年に退社しましたが、正直'05~'06年くらいから現場はやりにくかったです。'08~'09年には、もう限度を超えていました。すべてトップダウン、アレやるなコレやるなソレ言うなしかない。これはもう長くないなと思いましたね。

 とにかく今の局長以上を全員代えないとダメです。去年、開局して初めての赤字を出して、視聴率4位、営業純利益5位。正常な株式会社であれば、局長クラス以上の総取っ替えは株主総会でやって当たり前のレベルです。

■「おもしろい」はあっても「興味深い」がない

 番組だって、最後まで見ればそこそこにおもしろいものを作っている。英語で言うところの「おもしろい」である「FUNNY」はある。でも絶望的に「INTERESTING」がない。「興味深くない」。

 見たことのある人が、見たことのあるシチュエーションで、見たことのあるやりとりを続けているだけ。だから見る気にならない。興味を惹かないんです。

 そうなった理由をひと言でいうなら「センスがない」から。横澤彪さんとか三宅恵介さんといった、かつての大物プロデューサーたちには本当にセンスがあった。テレビって常識と闘わないといけない。センスがあって頭のネジが120本くらい飛んでる人にしかおもしろい番組なんて作れないんです。

 そのいい例が『世界の果てまでイッテQ!』(日テレ系)でイモトアヤコがエベレストに登る企画です。フジでは絶対に作れません。「コンプライアンスがある」と、上層部が言い始めるからです。事故があった場合、自分の出世に響きますからね。

 今の上層部はみんな「常識人」なので、かつてのような視聴率3冠に戻るのはかなりの時間を要するかもしれないですね。