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*写真はイメージです

 41歳の母親を殺害した高校1年生の長女(15)が、ゴールデンウイーク明けに逮捕された。事件は約3か月前、JR御徒町駅から徒歩10分弱にある高級マンションで起きた。

 教育熱心な母親の行きすぎたしつけが子どもの負担になり、事件が起きたのでは……という声も。

 そこで専門家に、子どもを傷つけてしまう言動や理想の接し方について話を聞いた。

 他人と比較されるのは大人だっていい気がしないが、多感な子ども時代はなおさら。母娘関係改善カウンセラーでメンタルケア心理士の横山真香さんは「“〇〇はこんなにできているのに……”と、きょうだいや友人と比べることもNGです」ときつく釘を刺す。

 何か助言をする場合も、助言が正しいと思いこまずに、冷静に判断すること。

「自分の意見を言った後に“あなたはどう思う?”と、子どもが自分の思いを言語化できる機会を作ってあげてください。その場合、相手が言葉にするまで待つように。“どうして宿題しなかったの? テレビ見ていたからでしょう。だから言ったじゃない”と親が全部言ってしまっては、子どもの気持ちを吐き出させたことにはなりません。会話のキャッチボールを意識してください」

 横山さんはそう指南する。子どもに何かを伝える際の親の精神状態も、子どもは敏感に感じとる。

「感情に左右されて、その場ごとに言動が異なるのは避けるようにしましょう」(横山さん)

 また、こう続ける。

「例えばジュースをこぼすなど小さな失敗をしたときに、機嫌がよければ“あらあら”ですませるのに、夫とギクシャクしていたからといって思わず“何やってんの! 本当にあなたは……”となっては、子どもは戸惑います。

 軸足の定まった教育も大切です。周囲のママ友や祖父母の意見をアドバイスとして取り入れるのはいいことですが、ある程度は自分を信じて、自分の言動に責任を持つように。子どもにも尊敬されます」

 両親の不仲を見せることもNGだ。

「親の“疲れ度アピール”もしないように。“お母さん、もうやっていけない”などと聞くと、子どもは心配のあまり、自分より親を優先して気遣ってしまうようになります」(『こころぎふ臨床心理センター』代表・長谷川博一さん)

■わが子の心を守る10か条とは

 母親だけの子育てもよくないそう。

「1人でも大人が入れば、“これはしつけだよね”と確認しながら子どもと関われます。子どもに“あれ?”と思う部分が出てきたら、子ども自体に問題があるのではなく、夫婦や家族の不均衡状態が子どもの不適切な言動に反映されている場合もあります。まず家族関係を見直しましょう」(『えむ心理研究室』の所長で臨床心理士の石割美奈子さん)

 100組の親子がいれば、100通りのしつけがあるが、理想のしつけを3人はこう語る。

「その子が生きていくための知恵を与えること」(横山さん)

「人に迷惑をかけない人間に育てること」(石割さん)

「子どもが本当にしてはいけないのは、自分や相手の命を粗末にすることだけ」(長谷川さん)

 子どもと親身に寄り添う姿勢は同じ。そのうえで長谷川さんは“なあに”“うん、わかった”“いいよ”を円滑なコミュニケーションのために必要最低限の3ワードとして挙げる。

「この3つを意識して会話をすると、子どもがなぜその行為をしたか話してくれやすくなります。子どもはもやもやをためなくてすむんです。“うんうん”と相槌を打ち、“わかったよ”と言うと、子どもは意思が伝わっていると思い、“いいよ”と認めることで、受け入れられたと感じ、心が安心するのです」

 過度な干渉や押しつけなどは親子関係に害をなすだけ。相手を思いやる気持ちは、遠慮がいらない関係の、親子間でも必要なのだ。

<わが子の心を守る10か条>

1)人格の否定や周囲との比較につながる発言はしない

2)禁止・指示・否定に関する言葉を使わない

3)その場の感情に左右されて叱らない

4)自分のこだわりを子どもに押しつけない

5)主張をしたら「あなたはどう思う?」と必ず聞く

6)「心配だから」「将来のため」と干渉しすぎない

7)子どもの前での悪口やため息、疲れ度アピールを避ける

8)子どもの異変を感じたら、まずは夫婦・家庭環境を見直す

9)対話の際は「なあに」「わかった」「いいよ」を意識して

10)2人以上の大人が子育てに関わるように

※専門家への取材をもとに『週刊女性』が作成