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 1日約4万人にのぼる食のプロたちが厳しい目を光らせ、食材の売り買いを行う築地市場。ここは古きよき時代の伝統を引き継ぎながら、約80年間、日本の食文化の一大拠点であり続けた。しかし、今年11月の豊洲移転に伴い、間もなく閉鎖されることになる。

 築地には世界中からとびきりのマグロが集まってくる。マグロは魚河岸の花形、そして日本人の大好物だ。でも、どのように食卓に届けられるかを知っている人は少ないのでは?

 そこで、マグロのエキスパート、仲卸『籾豊』の本宮典幸さんに話を聞くため、競りに同行させてもらった。

「マグロは1匹ずつ脂身と赤身の比率が違います。ほっそり、ふっくらなど形もさまざま。それによって味わいや食感も変わってきます。仲卸は、飲食店やスーパーなどがお客さん。高ければいいマグロというわけではないんです。客の好みや注文に合うマグロをいかに見つけて競り落とせるか、が目利きの見せどころ」

 取材当日、本宮さんは200匹前後のマグロを素早く下見し、目星をつけていたものを競り落とした。どのように選んだか聞いてみた。

「外観から脂の乗りや身質を見極めました。選別の仕方は企業秘密。断面の状態から予測したり、一部を切り出して味見をしたり、たたいて感触を確かめたり、人それぞれです。仕入れ状況に応じて価格が変わるので、株取引と似たところがあります。みんな真剣勝負。誰もが“自分が一番”と誇りをもってやっています」