s-matsushige0607

 コミック誌『週刊バイブス』編集部を舞台に“一冊の漫画”という夢のために、全力で仕事に取り組む人々の姿を描いたドラマ『重版出来!』(TBS系・火曜夜10時~)。原作は松田奈緒子の『重版出来!』(小学館『月刊!スピリッツ』連載中)。

 主人公の黒沢心を演じる黒木華はじめ、原作と酷似したキャスティングが話題だが、原作ではちょっと太めの和田編集長役の松重豊はこう語る。

「(原作の)五百旗頭と演じているオダギリ君は、どっちがモデルかわからないくらい似ていますが、僕の場合はビジュアルで近づけることはできないので、キャラクターの豪快さ、リアリティーを考えました」

 和田の役作りでは、グッズや色などで、阪神ファンらしさを出している。

「和田は、怒り方やテンションが極端な人物ですが、それだけではないんです。部内を統括する立場として自分が若いころとは違う感覚を持っている現代の若者と向き合っていかなきゃいけないジレンマがある一方で、一緒に戦っていかなくちゃいけない。そのへんのせめぎ合いのリアルさは投影させていこうと思いました。“こういう人いるんだろうな”と思って見てもらえたら、いいかな」

 出版業界の現状やコミック誌の編集など、興味深いものがあるという。

「編集者と漫画家の関係性は、プロデューサーと役者、あるいはマネージャーと役者、僕らの世界に置き換えることもできます。共感と驚きがあるので、演じていて面白いですね」

 『バイブス』では毎回さまざまなハプニングが起きるが、松重が劇中で好きなシーンは、意外なところに。

「ときどき登場する柔道のシーン。僕も柔道部だったので、心ちゃんがオリンピックを目指していた選手だったというのも僕の中では好きなモチーフですね」

 個性派、演技派といわれる役者がそろった作品で、数々の映画賞に輝き、連ドラ初主演の黒木を“日本の宝”と評する。

「直接、ほめると本気でテレて怒られちゃうので言えませんが、本当に素晴らしい女優さんだと思います」

 若き才能の、さらなる飛躍に期待を寄せている。

編集部のセットは『スピリッツ』編集部とほぼ同じ

「イメージどおりの方にお願いできたのがよかったですね。松重さんも和田の“大人のやんちゃさ”を表現できるのはこの人しかいないと思ってお願いしました」

 こう語るのは、那須田淳プロデューサー。

「愛すべき個性的な登場人物が、本作のいちばんの見どころです。心はスーパーウーマンではないけれど、壁にぶち当たってもメソメソしない独特の人間力の持ち主。彼女は個性豊かなクセモノたちに影響を受け、成長してきました」(那須田プロデューサー)

 何度も衣装合わせをしたという心のファッションは女性なら要チェックだが、ほかにもこだわりが。

「漫画家と編集者が夢を追う物語なので、本職の漫画家さんに劇中の作品を描いてもらいました。また、『バイブス』編集部のセットは、協力いただいた『スピリッツ』の編集部とほぼ同じです。そして、チームワークの素晴らしさ、チームに刺激を与える心を際立たせるために、毎回、登場人物の誰かがナレーションを担当してきました」(那須田プロデューサー)

 第9話(6月7日放送)では、女性に大人気の五百旗頭(オダギリ) がナレーションをする。心が新人漫画家(永山絢斗)の連載獲得を決めるべく奮闘しているなか、五百旗頭の担当する漫画家(滝藤賢一)が、ライバル誌からの引き抜きに乗り気になる……。

「編集部のみんなを支えてきた五百旗頭の本当の心の中を描いていきます。ある種、本作の集大成ともいえる回です。最終話(6月14日放送)は、大事が起きる感動の回になっていて、みんなが一堂に会するシーンは最大の見どころです」(那須田プロデューサー)

 もうひとつの注目は、心と営業部員の小泉純(坂口健太郎)の関係。東仲恵吾プロデューサーが力説。

「切磋琢磨しあってきた2人は、恋を通り越した特別な間柄になっていますが、その関係がどう変わっていくか、見届けてください。本作は仕事をしている方、学校や家庭で頑張っているお子さんや主婦の方にも、困難を乗り越えるための活力が湧く物語なので、最後まで楽しんでください」