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 週刊コミック誌を舞台にしたドラマ『重版出来!』(TBS系・火曜夜10時~)が漫画好きを中心に話題を集めている。劇中で登場する原稿は、人気漫画家がドラマのために描きおろすというこだわりぶりだ。

 そこで最終回目前に、和田編集長役を演じている松重豊にドラマの見どころを聞いた。

「やったことがないジャンルの作品なので、僕らも“出版業界ってこういう仕組みなんだ”っていうのが知れて新鮮で面白いですね」

 出版業界を自分が身を置く芸能界に置き換えてみて、共感と驚きがあるという。

「ネットメディアの普及で閉店してしまう書店も多いし、紙が世の中から消えつつある。一方で、漫画は映画やドラマの題材になったり、日本だけでなく世界中で読まれていますよね。だから、出版業界は今後成長していくのか衰退していくのか。ものすごく過渡期にある業界だと思うんです。

 劇中に出てくる編集者と漫画家の関係性は芸能界に置き換えることもできるし、僕ら役者とは違う戦いかたをやっている部分もあるので、この作品は演じていて共感と驚きがあってすごく面白いですね」

 これまでさまざまな役柄を演じてきた松重。和田編集長役を演じる上で心がけていることを聞くと、こんな答えが。

「テンションが極端な人物ですが、こういう人もいるんだろうなって思わせるのが必要なので、簡単に“この役はこんな人物”と語れないような演技をするのが僕らの仕事だと思っています。連続ドラマって、演じている側も最終回までオチがわからないことも多いんですよ。

 だから突然、“この人は殺人鬼だった”なんて展開もある。和田編集長だって人を殺した過去があったと最終回の台本で書かれる可能性もありますからね(笑)。だからどんな最終回を迎えてもいいように、演じている人物像を曖昧にすることが僕らの仕事では必要なんです」

 今クールは『重版出来!』と『トットてれび』(NHK)の2作品をかけ持ち中。しかし、同時に違う役柄を演じるのはまったく苦ではないそうだ。

「昔から台本がカバンの中に2、3種類入っていたほうが安定するタイプ。“これから午後はメイクを落として死体になります”っていったふうに、振り幅があるほうが逆に楽しかったりしますね。逆に似たような役をかけ持ちするほうが、切り替えが難しいかな」

 今作は舞台出身の実力派&個性派役者が勢ぞろいしているところも、見どころのひとつ。共演経験のある人も多いため、撮影現場の雰囲気も和やかだという。

「舞台出身者が多いので、空き時間は舞台の話や芝居の話をしています。みんなとの共通言語がたくさんあるので現場で役者同士の情報交換はすごく和気あいあいとしていますよ」

 気になる最終回も目前。最後にこんなメッセージを。

「若い人の恋愛や友情を描いているドラマではないので、とっつきにくいところもあるかもしれませんが、人間は生きていく上で、一度は社会と関わっていかなくてはならなきゃいけない。その“社会”がこの作品では漫画編集部に置き換えられていますが、自分の立場に置き換えて見てもらえれば面白いと思いますよ」