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 テレビドラマの現場は、監督もプロデューサーもADもみんな男性というのは、昔の話。近年、女性スタッフが増加してきたことで、現場の雰囲気やキャストたちにはどんな影響があるのか。業界関係者や現役の女性プロデューサーに話を聞いた。

「近年、テレビドラマの現場のスタッフに女性が増えているんです。男社会の仕事場でも動じない精神的に強い女性が増えているのかもしれませんね」(制作会社関係者)

 朝から晩まで撮影に臨み、家に帰れない日も少なくない、激務として知られるドラマの制作現場。以前は体力的な問題もあり“男社会”というイメージが強かった。しかし最近、女性のスタッフが増加しているのだという。

 今クールで放送されている波瑠がヒロイン役で出演中の『世界一難しい恋』(日テレ系)、松下奈緒が主演の『早子先生、結婚するって本当ですか?』(フジ系)、木村佳乃の『僕のヤバイ妻』(フジ系)でも、それぞれ女性プロデューサーが活躍中。確かに女性のドラマ現場への進出は加速しているのかもしれない。

 現在放送中のドラマ『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)のプロデューサーを務めるドリマックスの新井順子氏も、様変わりした現状についてこう言及する。

「私は今年で15年目になるのですが、入ったばかりのころは周りは男性ばかりでした。でも今は、AD(アシスタントディレクター)の4人中2人が女性ということもありますよ」

 AP(アシスタントプロデューサー)にいたっては、今や女性が8割にものぼるという。女性の比率が特に高いのは、なぜなのか。

「APはP(プロデューサー)志望の人が勉強のためにつく仕事。最近、P志望の女性が多いので、必然的にAPは女性が多くなります。さらにAPは細かい仕事も多いので女性向きなのかもしれません」(新井氏)

 1作品につき、4~5人いる助監督も、女性の立場から現場を見られるようにと、なるべく女性を1人は入れるようにしているという。確かに、言われてみれば適職なのかも。でも、女性増加のそもそもの原因は?

「最近“つらい”“土日休みたい”という理由で男性が辞めてしまうことが多いんです。若い男性が辞めてしまい、結果的に女性が残るので比率が上がっているんだと思います。少し前までは新入社員も男性が多かったですが、今は入社する比率も男女半々くらいになっていますね」(新井氏)

 ところで、女性が増えたことでドラマ現場に与える影響はどのくらいあるのだろうか。

「女性スタッフが多いほうが男女の絡む場面、いわゆる“ベッドシーン”ですね。その場合に女性キャストは抵抗が少なく、自然と役に入りこんで撮影ができるんです」(テレビ局関係者)

 ドラマ撮影のロケ地は地方であることも少なくない。その場合にも、女性スタッフならではのエピソードが。

「小学生から高校生くらいの女性子役が出演するドラマの場合も、必ず女性スタッフを入れるようにしていますね。地方への撮影で宿泊する場合、親御さんもマネージャーさんも来ないことがあるんです。そのときは、ADやAPの女性が一緒の部屋でお世話しますね」(新井氏)

 女性子役と女性スタッフが同部屋になる意図はそれだけではない。

「思春期なので、年齢の近いスタッフがいたほうが、監督に言えない悩みなどを話したりしやすいんです」(新井氏)

 学園ドラマだと何十人もの年の近いキャストとうまく付き合っていかなければならない。その中で起こる問題などをスタッフに打ち明けたりすることもあるんだとか。

 女性キャストが多かったり、女性向けの作品では同性ならではの視点から見た利点も。

「女性同士だと台本が共感できるんです。例えば『私 結婚できない~』だと中谷美紀さんが演じる39歳の独身女性が主人公のドラマなので“こういうことあるよね”という演出を盛り込んだりしていますね」(新井氏)

 キャストとスタッフ陣の間で演出の共感度が高いと、信頼関係が強くなっていくことも多いんだとか。

「今作品でいうと、女性は、お酒の席で帰りたいときはひざの上にカバンを置いて帰りたいアピールをするというのがありました。そういう演出を提案してみると女性同士で“あるある!”となってリアリティーが増すんです」(新井氏)

■出産の1週間前まで現場にいたプロデューサーも

 ほかにも、女子会メンバーの中で“今度結婚する”という人がいたら次回の会からは、その人は呼ばれなくなる、という女性特有のしきたりなども生かされているそう。

 女性には出産という人生の大きな節目がある。子育ての時期がある中で、ドラマスタッフの仕事に戻ることは?

「あります。監督として戻った方は私の周りではいないのですが、プロデューサーとして現場復帰された方はいます。プロデューサーは常に現場にいなきゃいけないわけではないので、出産されてから現場復帰しやすいのだと思います。

 出産する1週間前まで現場にいらっしゃったプロデューサーも過去にいました。女性が、監督として復帰できる時代が来るのも近いかもしれませんね」(新井氏)