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 今回の参院選で注目を集めているのが、全国に32ある改選議席が1人の一人区。ここでの勝敗が参院選全体の行方を左右すると言われるからだ。

 野党はすべての一人区で候補者一本化を実現。与党への批判票が野党各党に分散して「死に票」となるのを避けるためだ。

 唯一共産党が野党統一候補となった香川で16日、民進、共産、社民、生活の野党4党幹部がそろって街頭演説に立つなど、選挙戦を通して野党共闘の姿勢を強く打ち出している。

 激戦が予想される1人区の注目候補者を直撃した。

 沖縄県議を2期務め“世界一危険な飛行場”と言われる在日米軍普天間基地のある沖縄県宜野湾市の市長を2期経験した伊波洋一候補。

 参院選では、翁長雄志知事の推薦を受け、『オール沖縄』が躍進した勢いに乗り、現職で沖縄担当相の島尻安伊子氏との事実上の一騎打ちが予想されている。

「普天間基地の県外移設を公約に当選した現職議員らは、安倍政権が誕生するとその意に沿って(沖縄県名護市)辺野古への基地移設容認に変わりました。国会でも、基地に反対して辺野古で座り込む市民を“無責任な市民運動”と言い、参院予算委では、国家公安委員長らに座り込みを取り締まるよう約束させた。

 県外移設を信じて投票した県民を裏切っただけでなく、非暴力の反対運動を排除した人たちを、あと6年間、沖縄の代表にしていいのかという思いがあった」

 国政に打って出た決意をそう語る伊波候補は、復帰後40年を過ぎても変わらない、基地に囲まれた沖縄の現状についてこう語る。

「国土の0.6%である沖縄に米軍専用施設の74%が集中しています。さらに安保関連法ができる前から、沖縄では戦争を前提にした基地の建設が進められてきました。辺野古もそのひとつ。アメリカは日本に、有事の際に中国軍艦の盾となる役割を求めているのです」

 参院選の結果次第で、その役割はさらに強化されるかもしれない。

「安保法では自衛隊の海外派兵ばかり懸念していますが、アメリカは自国の権益を守るために、日本を戦場にして戦争をする準備をしている。これは沖縄だけに限りません。実際に、九州から本州を戦場にして、北海道から米軍が援軍を送るという戦争計画の日米合同演習も行われていました」

 沖縄では米軍関係者による犯罪が絶えない。20歳の女性が元米海兵隊員の軍属によって強姦され、殺された遺体遺棄事件は全国に衝撃を与えた。

「本土復帰から14年まで43年間に発生した米軍関係者による犯罪は5896件。そのうち強姦や殺人などの凶悪犯罪は1割です。基地がある限り犠牲者が出続ける。“綱紀粛正”という言葉を日米両政府から何度も聞かされてきましたが、状況は変わっていません」

 『日米地位協定』によって在日米軍・米軍属はさまざまな特権を与えられており、捜査の壁になることも多い。

「アメリカについていかざるを得ない“この道”で本当にいいのか。基地のない平和な沖縄を座右の銘にしてきましたが、日本の今後の持続的な成長のためには武器を輸出して稼ぐことよりも、戦争をしない日本を守り続けることがはるかに大事です。憲法を変えさせない、平和な日本を守るという取り組みを国会で実現させていきたい」