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 国民投票の結果、43年間にわたるEU加盟に終止符が打たれたイギリス。この影響はヨーロッパ内だけではなく、日本にも波及し、外国為替市場は大混乱。私たちの生活にもどんな影響があるのか?

 日本政府の麻生太郎財務大臣は「世界経済、金融為替市場などなど、与えるリスクは極めて憂慮している。とりわけ足元の為替の市場では、極めて神経質な動きが見られる」とコメントを出し、影響の大きさをうかがわせる。

「金融は混乱しますね。なぜかというと3大マーケットは、アメリカのウォール街、中国の上海、ヨーロッパではロンドンシティなんです。イギリスがEUを離脱したことによって、信用力が落ちてしまう。ロンドンに拠点を持っていた、さまざまな金融会社がフランスやドイツに移ってしまう可能性がある。そうなるとイギリスは衰退していく」(経済評論家の荻原博子さん)

 デーブ・スペクター氏もその影響を、こう語る。

「日本はアメリカと並ぶぐらい、イギリスとはすごく密接な関係にあります。中には駐在員が帰ってきたり、イギリスにある日本の会社の支社が、採算が合わないからといって引きあげることはあるかもしれないですね」

 そして、今回の最大の影響として言われているのが“円高の加速”。円高になれば、輸入品などが安くなるイメージだから、家計も助かるかと思いきや……。

「円高だと、海外の商品の値段は安くなります。円安のときに高い値段で輸入してしまって、ダメージを受ける国内の企業もあるでしょう。利益を吐き出してしまったところもあるんです。

 だから、円高になったからといって、海外からの輸入品を“じゃあ価格を安くします”というわけにはいかない。物の値段が安くなることが期待できない状況になっています」(荻原さん)

 イギリスにある日本企業の支社も数多く、EUに対しての投資額も大きい。

「イギリスには日本の企業が1000社以上。イギリスの地盤が沈下したらまずいですよね。日本は過去にEUに約1700億円を投資しているんです。その回収を始めるかもしれません」(荻原さん)

 こうなってしまった以上、私たちが意識したほうがいいことってなんだろう?

「イギリスがEUを離脱したために、ドイツやフランスなどから大ひんしゅくを買っています。そういうときこそ、イギリスは日本との昔からの縁を大切にしたいと思うはず。むしろこれからは、もっと日本を大事にしてくれるでしょう。日本とのパイプや交流が深くなると思います。心配することはないと思いますよ」(デーブ氏)

 これに対して荻原さんは、こう指摘。

「あまりこの時期に投資をしないこと。退職金をもらったからって投資に回さないことです」

 非常に厳しい見通しのようだ。さらに続けて、こんな悲しい話まで。

「給料も上がらないと思います。こんな状況で、この先、何年かダメって思ってしまったら、経営者も給料を上げるわけがありません。経営者が給料を上げるときは、将来の見通しが明るいときですからね」(荻原さん)