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 7月13日、NHK午後7時のニュースで報じられた天皇陛下の「生前退位のご意向」報道について、「陛下は行動あってこその“象徴”というお考えのもと、活動されてきました。それが加齢や体力低下によって、そのご活動に支障をきたすようになれば、皇位を譲りたいとお考えになっても不思議ではありません」と話すのは宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さん。

 天皇が在位中にその位を譲る「生前退位」は、現在の『皇室典範』に規定がなく、実現すれば約200年ぶりと歴史的なことになる。

 そんな“ご意思”が報じられた日、天皇・皇后両陛下は、相模湾を一望できる神奈川県の葉山御用邸で静養中だった─。

 今回の背景をある宮内庁関係者が説明する。

「ご体調の問題のほかにも陛下は、皇太子さま、秋篠宮さま、悠仁さまという皇位継承の流れを明確にしたいお気持ちがあるようです。

 現在小学4年生の悠仁さまは順調に成長し、長期静養中の皇太子妃雅子さまも復調ぎみです。次の世代に安心して引き継ぐことができるようになったので、そのご意思が漏れ伝わってきたようです」

 今年83歳の陛下は、昨年12月のお誕生日の記者会見で、「年齢というものを感じることも多くなり、行事のときに間違えることもありました」と話されている。

 「両陛下とも最近は、公務中に補聴器を使うことも増え、この春の園遊会での懇談でも、陛下が招待者との会話を一部、聞き取れなかったか理解できなかった場面もあり、心配申し上げていました」(前出・宮内庁関係者)

■東京五輪をひとつの“花道”として

 ある政府関係者は、こう明かす。

「実は当初、陛下が名誉総裁をお務めになるはずの4年後の東京五輪をひとつの“花道”として、退位していただく想定がありました。

 今回の報道で『皇室典範』改正の時期が早まったり、議論が長期化して遅れる可能性もありますが、ひとつの転機にはなると思います」

 11日から始まったご静養の3日目、“退位報道”当日─。

 葉山は、時折、雨がぱらつくどんよりとした空模様だったが、両陛下は午前中から外出をされていた。

 おふたりが車で向かわれた先は、民家もまばらな周囲を山に囲まれた静かな高台。

 道の両側にはナスやトウモロコシを育てている畑や、あじさいなど夏の花々が咲き乱れるのどかで自然豊かな場所だった─。

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爽やかな潮風を受けながら、葉山御用邸裏の波打ち際を歩かれる両陛下(7月13日)

 地元の住民が打ち明ける。

「ここは30年以上も前から両陛下の“お忍び”の散歩コースなのですよ。

 特に美智子さまのお気に入りの場所で、以前は朝6時にいらして散歩されていたこともあります」

 この日、両陛下にお声がけされた住民に話を聞くこともできた。

「挨拶をしてくださって、“今日は、あまり日が出てなくて過ごしやすいですね”と美智子さまはおっしゃっていましたよ」

 陛下の腕をとりながら散策をしていた美智子さまの表情は、どこか今までを懐かしむような遠くを見るような表情をされていたという。

 そして、実はこの日の夕方にも、美智子さまは陛下の腕を取りながら30分ほど外出された。

 その様子を見た近所の女性がこう話す。

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この日、2度目の外出では、地元の中学生にも、気さくにお声がけする場面も(7月13日)

「両陛下は、最近では御用邸裏の砂浜を散策されたことはなかったので、少し驚きました。

 地元の中学生にもお声がけし、穏やかな表情で力強く歩かれていたのは、何か安心するようなうれしい出来事があったのかと思いました」

 宮内庁や政府内でも極秘にされていた“退位”が報じられることを知り、「新たな一歩」を踏み出すお喜びにあふれていたのかもしれない。