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 7月2日放送の『「ぷっ」すま』(テレ朝系)の中のコーナー『今シルツアー』で、イマドキモデル女子の若者言葉に、「ついていけなくなった」と憂いていた、7月9日で42歳になった草なぎ剛。

「ヤバ~い! テンアゲがMAX。ヤバいですね」

「シャワサン(シャワーサンダル)のイロチ(色違い)でシェアハピは鉄板です」

 少し前までは「チョベリグ」「MK5」と騒いでいたのに、もう新しい言葉が誕生しているみたい……。

■クリエイティブよりアレンジ

「実は今の若者言葉の造りは、新しいバリエーションといいますか、'90年代以降からは真新しいものはなくて、基本的には短縮したもの、今まであった言葉を少し変えただけのものが多いように感じますね。言葉に対して、自らクリエイティブしていくというよりも、アレンジしているほうが多いと思います」

 そう話すのは、西武文理大学や桜美林大学でコミュニケーション学を研究する瀬沼文彰講師。たしかに『テンアゲ』は「テンション」と「アゲアゲ」、『シェアハピ』は「ハッピーをシェア」など、すでにある言葉をアレンジしたもの。

 また、本来あった「怒っている」の意味『おこ』は、'13年の流行語大賞にノミネートされた『激おこぷんぷん丸』から、最上級系の『激おこスティックファイナリアリティーぷんぷんドリーム』に進化した。

■重視するのは“ノリ”や“共感”

 一方で、物心ついたころには身近にインターネットがある世代だけに、ブログや『2ちゃんねる』などの掲示板、『ツイッター』や『フェイスブック』、『インスタグラム』などのソーシャルネットワークサービス(SNS)からの影響も大きいようだ。

「若者の間で自然発生した言葉もありますが、基本的にはスマホ普及によるネット。そして自分たちの“ノリ”に合えば、芸能人や有名人の言葉をまねしていくこともあります」(瀬沼先生)

 例えば、北川景子と結婚したDAIGOのプロポーズ『KSK』=「結婚してください」など、英単語で略した“DAI語”。先日、平愛梨を『アモーレ』=「愛する人」と呼んだ、サッカー日本代表の長友佑都選手などの言葉には、若者も共感したのだろう。広く使われている。

 現在の若者言葉の多くは、この“ノリ”が重要視されており、瀬沼先生いわく相手に対して“共感する”、また“共感を求める”言葉が多くなっているという。

「とくに一番使われている言葉が“それな”だと思います。学生たちの話の中でもやはり“それな”を使う機会が多く、“それわかるよ”と共感の意が見られます。また“あーね”にも同様の要素が入っていますね。片方が“カミッテル”と言えば、“ホントだ、カミッテルね”と、相手とうまく共感していくワードが使われています」

「ノリが悪い」と言われることを嫌う傾向にある世代だけに、互いに共感し合うのは最重要事項なのかもしれない。

■若者言葉は“相手を傷つけない会話”

 そして“共感”と並んで、若者言葉に見られるのが意外にも“気遣い”なのだそう。例えば、『おくちょ』は「おくってちょうだい」で、相手に対してのお願いなのだが。

「お願いや命令に聞こえないようカドを立たせず、毒の部分があれば過剰に取り除く、大人では考えられないような気遣いの要素があると思います。

“メンディー”も同様に“面倒くさい”と直接言うよりも、ノリで“メンディーよね”と言ったほうがやわらかく聞こえます。コミュニケーションにおける若者の気遣いは、年々過剰になっている気がしますね」(瀬沼先生)

 たしかに「話の流れをぶった切る」=『豚切り』も、「話変えたよね」と指摘するよりもやわらかく、加えて笑いも作ることができる。笑いにすることで、相手を傷つけない会話にしているのかも。

「相手を傷つけることによって自分が仲間はずれにされてしまう、学校生活をひとりで過ごさなくてはいけなくなるかもしれない。とにかく仲間でなくなる、グループからはずれることを恐れている部分はあると思います。

 そういう意味では何とか嫌われないように気遣い共感しあう。“わかるわかる”と相手とつながりたがる言葉が増えているのだと思います」(瀬沼先生)

 主に女子により、何につけても多用されすぎた「かわいい」にも、「共感と気遣い」による変化が表れている。

「あまりにも気持ちがこもっていない空虚感、むなしさを何となく実感しているのでしょう。いろいろなニュアンスの“かわ”が増えているのは、この空虚感に対する反発、反動のような要素が出ているのかなと思えますね。このかわいいは“ウソじゃないよ”“本当に思っているよ”という意味で、バリエーションが増えているのかと」(瀬沼先生)