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昨春スタートした『直撃LIVEグッディ!』

 視聴率年間3冠王に12年連続、7年連続で輝いたフジテレビが、2011年以降、番組低視聴率やネットバッシングで、すっかり凋落。その原因はなんなのだろうか。

 フジテレビで放送が始まって47年になる、国民的アニメの視聴率が9・9%を記録したのだ(3日放送、ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 10日放送は11・1%で前週より1・2ポイントアップしたものの、日曜の夕方に不動の人気を誇っていた番組の低視聴率が話題になること自体、“低迷フジ”を象徴している。

 フジテレビといえば、かつて視聴率年間3冠王に12年連続(1982年~'93年)、7年連続(2004年~'10年)で輝き、多くの人気ドラマやバラエティー番組を輩出してきた。

「'80年代に“楽しくなければテレビじゃない”というキャッチフレーズで、バブル経済と呼応して、明るい雰囲気をつくり、華やかな放送局だったフジテレビが、ここ数年、ヒット番組を出せていない。だから低迷しているというのは、話としてはおもしろいでしょうが、実態としては、必ずしも、そうとは限らないと思います」

 そう語るのは、上智大学の音好宏(おと・よしひろ)教授(メディア論)。

 民放テレビ局は、視聴率競争を繰り広げ、それが人気のバロメーターにもなっていた。

「視聴率は、(同時間帯に)テレビを見ている人の何%を取り合うか。フジテレビは、ライバルの日本テレビやTBSと視聴率の取り合いをしていて、その構図は昔から変わっていません。

 フジの凋落が言われていますが、(視聴率における)勢力図が変わっただけ。その昔はTBSが“民放の雄”といわれていたんですよ」(音教授、以下同)

 テレビ業界は、『スカパー!』や『WOWOW』といった有料の衛星放送サービスが始まった'90年代から多チャンネル時代を迎えた。

 近年は、インターネットの普及で、動画配信サービスが隆盛する中で、地上波テレビ各局も“対策”を打っている。在京民放5局が提携した初の公式テレビポータブル『TVer(ティーバー)』や、『FOD(フジテレビオンデマンド)』などがそうだ。

「テレビのアイデンティティーは番組、コンテンツ。その財産である番組をテレビ受像機だけでなく、スマホやタブレットなどいろんな出口を使って、収益を上げていくことが必要なので、テレビvsネットにはならない。各局が(収益安定のために)ホールディングスというグループ化にしているのも、背景にあります。

 グループでみれば売り上げは、フジテレビは日本テレビに次いで2位です。視聴率が低いから収益が上がらないとはいえないんです」

 では、フジテレビの“復活の日”はある?

「あります。'80年代のように、1匹目のどじょうを生み出す挑戦ができるかだと思います」

■バラエティーでもドラマでも果敢にチャレンジした'80年代

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 開局当初の“母と子のフジテレビ”から、'80年代に“楽しくなければテレビじゃない”と、変革したフジテレビ。

 そのキャッチフレーズを象徴したのが、バラエティー『オレたちひょうきん族』や『笑っていいとも!』。“ダブル浅野”主演の『抱きしめたい!』や『東京ラブストーリー』などのトレンディードラマや『北の国から』シリーズも、人気を牽引した。

 『オレたちひょうきん族』は、当時、圧倒的な人気を誇ったTBS系『8時だヨ!全員集合』(土曜夜8時)の裏番組として'81年にスタートした。

 『─全員集合』が、ザ・ドリフターズの作り込まれたコントに対して、『─ひょうきん族』は、ビートたけし、明石家さんまによる、予定調和を排したハプニングのおもしろさがウケた。

 元フジテレビ社員で『フジテレビはなぜ凋落したのか』が話題の著者、筑紫女学園大学の吉野嘉高教授は「台本どおりで進行するそれまでのバラエティー番組とは一線を画していました。番組スタッフや舞台裏のゴタゴタが映り込むのもおかまいなしです。ビートたけしは“ブス”“ババア”などの乱暴な言葉を使ったり、アドリブでロケを休んだことさえ笑いに変えて、テレビの権威や建前の世界を“ぶち壊し”、本音を露呈させる新たな笑いに挑戦していました」

 『北の国から』(倉本聰脚本)は'81年10月~翌年3月まで、民放では異例の半年間、放送された。

「『北─』は、TBS系『想い出づくり。』(山田太一脚本)の裏番組で、お互いに視聴率を食い合って、数字はよくなかった。悪かったら途中打ち切りになるはずが、制作者が“勝負しましょう”と一生懸命だった」(前出・音教授)

 結果、最終回は視聴率20%を突破。以降、スペシャル版が11作制作され、最高は38・4%(『北の国から2002遺言前編』)、最低でも20・5%(『北の国から87初恋』)と、高視聴率を記録。看板番組になった。

 それ以降も、『101回目のプロポーズ』(平均視聴率23・6%)、『愛という名のもとに』(同24・7%)、『ひとつ屋根の下』(同28・4%)などが、F1層(20歳~34歳女性)と呼ばれる女性たちに支持され、ヒットした。

 青春時代に夢中になって見たという方も多いはず。そんなフジテレビが、ここ数年は、ヒット作に見放されている。

 今春の連続ドラマでは、福山雅治主演の『ラヴソング』が“月9”史上最低の平均視聴率8・5%。芦田愛菜&シャーロット・ケイト・フォックス主演の『OUR HOUSE』は、低視聴率のため途中打ち切りになった。

「個人的には、打ち切りにせずに、歯を食いしばっても続けたほうがよかったと思います。途中でやめたことで、やっぱりフジテレビはへたっている、凋落しているという渦を拡大させただけです」(音教授)

 平日昼の定番だった『笑っていいとも!』や『ごきげんよう』、東海テレビ制作の“昼ドラ”を終了させ、早朝4時から夜7時まで15時間の生放送を編成し、大ナタを振ったが─。

「生放送は“テレビの原点”とかつてはいわれました。しかし、視聴者の慣れやリテラシー(情報力)の向上で、生放送でもおもしろくないものや情報量の少ないものは見られなくなっています。

 なので、そもそも“15時間生放送”をセールスポイントにはできないと思います。生放送することで、番組制作費の削減はある程度、実現したはずですが、それ以外の効果は今のところ見えていません」(吉野教授)