日常生活の中でポケモンを捕まえたりバトルしたりできる「ポケモンGO」

 7月22日午前、スマートフォン用ゲームアプリ「ポケモンGO」の37か国目の配信先になった「ポケモンの生まれ故郷」の日本。待ちに待った“凱旋配信”にユーザーは歓喜した。

 基本的な遊び方は、とてもシンプル。実際に歩きながら現実の世界とつながっているスマートフォン上の仮想地図に出現するポケモンを、カメラでとらえ、アイテムを使用して捕獲する。スマートフォンのGPS機能を使用した“位置情報ゲーム”だ。

 開発・配信元のナイアンティックの広報担当者は、「ポケモンの出現は環境に応じて変化し、ランダムです」。

 つまり出現場所は、国会議事堂だったり、札幌の時計台だったり、名古屋城だったりバラバラ。

 ポケモンを探し出すために、スマホの画面を見ながら、ユーザーはあちらこちらを歩き回る。その結果、アメリカではポケモンを追いかけて原発の敷地内に侵入したり、運転中の男性がゲームに気を取られパトカーに追突してしまったりと問題が続出。グアテマラでは「ポケモンGO」で遊んでいた少年が撃たれ、命を落としてしまった。

 日本でもアプリ配信日から、街中の風景が一変した。危険と知りながらもついついやってしまう“歩きスマホ”。サラリーマンもOLも中学生も、スマホをのぞきながらふらふら歩き。画面をのぞくと、ほぼ「ポケモンGO」。

正規アプリを改造した偽物が出回っている

 ITジャーナリストの三上洋さんは、問題点を3つ指摘する。

「1つ目は、プレーヤー同士や通行人との衝突。2つ目は、私有地への侵入です。3つ目はプライバシーについて。同じ地点に何度も足を運んでいる姿を見たら、あの人は『ポケモンGO』をやっているな、とわかります。自宅近辺でプレーする人は多い。女性がストーカー被害に遭う可能性もあります。家の近くではやらないことですね」

 さらに、個人の情報の流出を避けるためには新規のグーグルアカウントを取得して登録すること。子どもの課金に対しては携帯の機能で課金に制限をかけるかクレジットカード情報を削除する。通信料と一緒に決済されるケースなら、店頭かオンラインで利用の上限額を設定すること、と三上さんは次々に注意を促す。

 だが、「ポケモンGO」の人気に便乗する悪人もいるもので、すでにアプリの偽物が出回っていると三上さんは続ける。

「種類は2つあって、1つは個人情報を盗んだり、ほかのアプリを勝手にインストールするもの。悪質です。もう1つは一見すると正規の“ポケモンGO”に見えるのですが、広告が表示されるものがある。自分の広告収入を稼ぐために、正規ソフトを改造したものです。もし広告が表示されているならば偽物です」

「App Store」または「Google Play」では「Pokemon GO」と検索するようにと話す。

 問題はそれだけではない。三上さんは配信初日の夜、こんな場面に出くわしたという。

「午後11時ぐらいに、駅から離れたマンションの横にある公園の“拠点”(=ジム、ポケスポット)に足を運んだんです。そしたら、そこに、無言でスマホをいじる人が10人ほどいました。普段は静かな住宅街の一角に、人間が押し寄せたら不気味ですよね。近隣住民が抗議したら、配信元はどう対処するのか。対応次第では問題になりますよね」

ゲーム会社の責任はないのか?

 周辺機器への期待も高く、近くにポケモンがいればスマホを見ずとも振動で知らせてくれる端末『ポケモン GO Plus』も任天堂が発売を予定している。

「ポケモンGO」では、毎回起動するたびに、画面には“周りを見て、常に注意しながらプレーしてください”と表示される。それでも世界中で起こっているトラブル。

 知らず知らずのうちに私有地に入ってしまったり、他人にケガを負わせたりしたときにゲーム会社の責任はないのか?

『弁護士法人・響』の徳原聖雨弁護士に話を聞いた。

「結論からいうと、ゲームを開発した会社に対して賠償を請求することは難しい。いかにゲームとはいえ、現実の世界でそれを持ち、入っていけない場所に入ることは、ユーザー本人の判断による行動です。つまり、自己責任ということになります。一般的な常識を考えて、マナーを守ってプレーしてほしいですね」