産後復帰と管理職の悩み――救いは松嶋の“清涼感”

松嶋菜々子演じるヒロインの吉良奈津子は、出産と育児休暇を経て、3年ぶりに職場復帰したワーママ (C)フジテレビ

 松嶋菜々子が“等身大”の働くママを演じて話題の『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系・木曜夜10時~)。産後、職場復帰した女性が仕事と家庭の両立に奮闘する姿を描いている。

 脚本は'14年に話題をさらったドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』の井上由美子。

 今回の企画意図について、井上はこう語る。

「職場では子どものことを考えてしまい、子どもの相手をしているときには仕事が頭をよぎる……。どちらにも100%集中できず、身を引きちぎられるような感覚があるはず。

 いつの時代もその悩みはあったと思いますが、教育費や介護費用などで仕事を辞められない今、本当に大変だと思います」

 1年あまり構想を練り、脚本にあたっては、実際に働く女性に話を聞いた。出産、育休後の仕事復帰の悩みに加え、管理職に任命されて人間関係などに悩む声が多いと実感したという。

「この2つは一見、真逆の悩みに見えるのですが、どちらも女性が生涯、働くことが当たり前になってきた現代ならではの悩みです。そんな今だからこその女性の奮闘を描いて、同じように仕事と家庭の両立に頑張っている女性たちの応援歌にしたいと思いました。

 ヒロインを取り巻く状況は非常に過酷ですが、そんな試練をものともせずクリアしていく姿に爽快さを感じていただきたくて、負けず嫌いで前向きすぎる(笑)女性にしました。

 感情がすぐ顔に出たり、空気を読めない欠点はあるのですが、周囲の顔色を見て空気を読まなければいけないことが多い今、彼女のようにストレートに相手に向かっていく女性は、人を引っ張る力があると思います」

脚本家の井上由美子

 松嶋が演じるヒロインの吉良奈津子は、広告代理店の元売れっ子クリエイティブディレクター。40歳手前で結婚。出産と育児休暇を経て、3年ぶりに職場復帰した。新たに配属されたのは、営業開発部だった。

 部長を命じられたが、奈津子の希望はクリエイティブ局への復帰。それには業績不振の営業部で結果を出さなければならない。ところがそこにいたのは、奈津子を信頼していないクセ者ぞろいの部下たちだった。

「松嶋さんはいくつになっても変わらない清涼感のある女優さんです。強さと爽やかさの両方を持っているので、育休明けの悩みと女性管理職の悩みのどちらかひとつではなく、双方を背負わせたいと思いました。

 奈津子には最悪の事態が次から次へと降りかかりますが、どんなドロドロの展開になっても、松嶋さんの清涼感が物語の救いになって、カタルシス(浄化)になると思います」

 慣れない営業職だが、なんとか業績を上げようと懸命な奈津子。でも、仕事が忙しくなればなるほど家族への負担や不満が募り、家族や仕事の狭間で悩みが増えていく。

 口うるさい姑(松原智恵子)の手を借りたくないのでベビーシッター(伊藤歩)を頼むが、彼女の存在が幸せな家庭を崩壊させていくきっかけに。会社では自信を打ち砕かれ挫折し、やがて夫(原田泰造)との間に大きな溝ができはじめ、家庭も危機に……。

「今後一層、奈津子には最悪の事態を用意しています。夫、子ども、仕事、何もかもを手にして、いわゆるバリキャリと言われるような彼女がそのすべてを失うかもしれません」

“負けるのが嫌い”な奈津子の勝負の行方は

 松嶋の奈津子を“想像以上に魅力的”とも評する。

「本音をぶちまけても、少々憎たらしいことを言っても松嶋さんならではのセンスによってほほえましくなります。今後も女性の本音をかわいく言い放っていただきたいと思います」

 最大の見どころは、“負けるのが嫌いです”という奈津子が最終的には、どうなるのかというところ。

「どんな女性も苦しみを乗り越えていける強さをもっています。現実に折れそうになることも多いと思いますが、奈津子のように、もうちょっとだけ頑張ってみようかなと思っていただければ。

 奈津子の孤軍奮闘する姿に“あるある”と共感したり、“そんなバカな”と怒りを覚えたり。それぞれの感じ方でツッコミながら、楽しんでいただけたら幸いです」