8月26日に公開された『君の名は。』の勢いが止まらない。映画館には長蛇の列ができ、同作の名がつくグッズはすぐに売り切れる。今、日本中をブームに巻き込んでいるこの映画を、さらに楽しく見ることのできるポイントを紹介!

新海監督(一番左)と主演2人、主題歌を歌ったRADWIMPSまでそろった舞台挨拶

青春を終えた人にも刺さる物語

「『君の名は。』は、ポスト・ジブリと言ってもいいと思います。日本のアニメといえばジブリですが、若い人たちにとっては親世代の作品です。やっと自分たちの世代の映画が登場したという感じで、10代と20代が映画館に足を運んでいますね」(映画パーソナリティーのコトブキツカサ氏)

 恋愛ゲームの要素を取り入れたことが若い世代に通じた。

「新海監督はもともとゲームのクリエーターです。観客は、自分自身がプレーヤーになった気持ちで、作品にのめり込める作りになっています。男女のすれ違いは誰もが経験していますから、どんな年代の人でも主人公に共感できるんでしょう」(前出・コトブキ氏)

監督・新海誠の世界観に入り込む

 新海監督の手がけた作品の世界観は特徴的だ。

「“セカイ系”の完成モデルだと思うんですよ。“セカイ系”というのは、主人公が男性ならばヒロインの女性、女性ならば恋い焦がれる男性との友達以上恋人未満の関係に重きを置きつつ、世界の重大な危機や終末論を描いた作品を指します。『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』が該当します。新海監督の得意とするジャンルです。

 今回は彗星の落下をモチーフにして魅力的な物語を作り上げました」(前出・コトブキ氏)

自分と重なる魅力的キャラクター

 ラストシーンで涙を流す観客が続出する。どうして泣くほど感動してしまうのだろう。

「前半はほのぼのとした青春コメディー風ですが、途中で流れが変わってハラハラする展開に。最後にホッとして泣いてしまうんですね」(映画ライターの小泉浩子氏)

 共感できるキャラクター像も起因している。

「“高校生のとき、こうだったなー”と思う場面がたくさん出てきます。友達とご飯を食べたり、ケンカしたりするような日常が、エンターテインメントとして描かれているのがすごいと思います」(前出・小泉氏)

“聖地巡礼”をしたくなる舞台

 作品の舞台を巡る“聖地巡礼”も人気だ。特に、東京・四谷の須賀神社とJR信濃町駅の歩道橋にファンが集まっている。

「現実はどれくらい違うのかと思って来たら、映画とほとんど変わりなかったので驚きました。信濃町の歩道橋にも行きました。これから六本木の美術館に行こうと思っています」(須賀神社に来ていた男子大学生)

 また、映画を見ていなくても、SNSで話題になっているから見に来たという人も。台湾からやってきた観光客までいた。

(左)主人公が佇む信濃町駅近くの歩道橋(右)劇中終盤に出てくる四谷の須賀神社

主役2人の声による演技が圧巻

「新海監督は、神木隆之介さんのかわいらしいけど男の子っぽい声に魅力を感じたそう。神木さんも『秒速5センチメートル』を30回以上見た大の新海ファン。相思相愛です(笑)」(芸能プロ関係者)

 高校生の男女、立花瀧と宮水三葉の身体が入れ替わる設定なので、俳優は1人2役で演じなければならない。

「三葉を演じた上白石萌音さんは、街で見かけた男子高校生の話し方を見て勉強したそうです。また、神木さん演じる三葉のしゃべり方も参考にしたとか。演技歴は短いのですが、すごい努力家です」(前出・芸能プロ関係者)

ピアノ曲にこだわったRADWIMPS

 もともと監督はRADWIMPSのファンだったそう。

「2年前の秋に、プロデューサーの川村元気さんからRADWIMPSの野田洋次郎さんに、“1度、監督と会ってみないか”というメールが来たそうです。その数日後に会うことになったのがきっかけです」(音楽ライター)

「ピアノには特にこだわって、映画のサントラアルバムの10曲目『デート』という曲では、ピアノによって切ない雰囲気を盛り込んだのです。新海監督がその曲を気に入ったことで、ピアノの曲が増えたみたいですよ」(前出・音楽ライター)

映画と違う角度から迫る小説2作品

公開以来、人気急上昇中の原作小説。品切れになる店もあるほど大人気

 新海監督みずから執筆した、原作小説『君の名は。』は公開までに50万部、その後も41万部を売り上げた。

「主人公2人の一人称で綴られていて、映画では語られていないそれぞれの思いがわかります。小説を読んでもう1度映画を見れば、新たな発見があるはずですよ」(角川文庫・担当編集者)

 もう1冊は『君の名は。Another Side:Earthbound』。

「これまでの新海作品の外伝小説を手がけてきた狩野新太さんによる番外編です。狩野さんは映画の脚本にも協力していて、途中で削られたアイデアを復活させたかったそうです」(角川スニーカー文庫・担当編集者)

関連イベント&グッズもアツい

 関連イベントも続々開催中。

「西武池袋本店書籍館では9月30日まで『新海誠展~瀧の夢~』、ジュンク堂書店池袋本店では『『君の名は。』公開記念展~三葉の風景~』を開催。ライバル店がコラボするのは珍しい」(書店関係者)

 映画の設定画パネルなどを展示し、主人公2人の視点から別の世界を構成している。

 東京ドームシティでは、11月6日まで『君の名は。』×TeNQ『新海誠が描く宙展』を開催。

「『宇宙ストア』では限定グッズが販売されています。『缶マグネット6種セット』と『オリジナルマグカップ』は入荷してもすぐなくなるほど大人気です」(イベント関係者)