石橋けい 撮影/森田晃博、ヘアメイク/大上あづさ

 オンエア中のSEIYUのCM「やっぱコスパ」に出ている“めぐみ(35歳)”を演じる美女は誰? と気になっている人は多いのでは。彼女の名は石橋けい。

 今年、話題を集めたドラマ『ゆとりですがなにか』に、松坂桃李演じる小学校教師を惑わすシングルマザー役で出演。東洋水産「マルちゃん 麺づくり」やKIRIN「のどごし〈生〉」のCMでも主婦役を演じるなど、テレビ露出が急激に増えている、注目女優のひとりである。

 10月25日から開催される東京国際映画祭の上映作品である山内ケンジ監督の『At the terrace テラスにて』で、石橋はセクシーなセレブ夫人役を演じている。豪邸でのパーティーを舞台に、屋敷の主人夫妻とゲスト7人の欲望と嫉妬がぶつかり合う、ユーモア満載で刺激的な群像劇だ。

――『At the terrace テラスにて』はSEIYUの普通の主婦役とは180度違う、かなり振り切った役ですね。

「そうですね。思いっきりやっちゃえ! って感じで。ずっと怒ってるか、ずっと誰かに欲情してるか、ずっと嫉妬してるか。感情がずっとぐるぐるして、常にテンションが上がっていましたね。

 普段、みんなどこかにそういう黒い部分をもってると思うんですけど、あえて見せないじゃないですが。それを思いっきり出し合っていくっていう。演じていてもすごく楽しいんですよね」

――石橋さんの谷間が露になった胸元も気になるところです。

「胸元は完全に自前ではないので。作りこんでますよ、相当。寄せて上げてます(笑)」

――『ゆとりですがなにか』のときのシングルマザー役も胸元に視線が行く演出で……。

「あれは見せようと思ったわけじゃなくて、カメラマンさんが必死に胸元を追いかけてくれただけで(笑)。こちらはあくまで普通にやってました。でも“ここにカバンを持つと胸元隠れちゃうなあ”とか冷静に考えてる自分はいて、計算はしてました。役柄が重いテーマを抱えていたので、やりすぎ注意でしたね」

進路指導で先生に「私は将来女優になる」

石橋けい 撮影/森田晃博、ヘアメイク/大上あづさ

――石橋さんは14歳でデビューされていますが、女優になったきっかけは?

「純粋に私がやりたかったんです。子どもの頃からいろいろ妄想してひとりで楽しんでたり、誰かのものまねしたり、感受性が強い子どもだったみたいで。周りにも“女優さんとかいいんじゃない”って言われたりしていて。本当にやりたいと思ったのは、中学に入ってから。何のツテもなかったんですけど、進路指導のときに先生に“私は将来女優になるので”って話をしたら、ポカンとされて」

――先生には女優をやる子だと思われてましたか?

「まったく。先生には“夢は大切だけど、現実を見なさい!”と言われて笑い飛ばされましたね。それを結構、根に持ってたんですけど(笑)。私、執念深いんですよ。それである意味スイッチ押してもらったところがあって、本当にやれるかどうかやってみようと思って、オーディションを受けました。

 中学3年から芸能界に入って、“ほら、入れたよ”って思ったんですけど(笑)。20歳超えてから、自分の舞台を当時の先生に観てもらったんです。そしたら“あのとき馬鹿にしてしまったけど、すごく頑張っているね”って先生も認めてくれて。本当にうれしかったですね」

 実は石橋さん、30代女性にとっては子ども時代の憧れの存在でもある。1993年にフジテレビ系で放映された石森章太郎原作の特撮ドラマ『有言実行三姉妹シュシュトリアン』に次女の月子役で出演し、戦闘美少女としてアクションに体当たりで挑んでいた。

――個人的に、石橋さんとの出会いは小6のとき観ていた『シュシュトリアン』でした。小学校のときにテレビで観ていた人と今日会えているというのがうれしいです。

「本当ですか!? うれしい! 私もそのとき見てくれていた小学生がインタビュアーとなって現れるとは。すばらしいですね」

『シュシュトリアン』でスタントの魅力に目覚める

石橋けい 撮影/森田晃博、ヘアメイク/大上あづさ

――あのとき石橋さんは15歳で。20年以上前ですが、現場のことは覚えてますか?

「覚えてますよ。私、ドラマのスタントマンさんに“かっこいいな”ってすごく憧れていて。その気持ちが強くなっていって、最終的にはスタントマンの方たちが所属している(大野)剣友会の道場が開く週一のレッスンに参加させてもらってました。補助つきでバク宙とかやらせてもらって、“最高だよ、スタント!”って思って。蹴りとか、必死で練習しました」

――シュシュトリアンの敵は――。

「妖怪ですね。物のときもありました。ジューサーとか、洗濯機とかと戦ってました」

――(笑)今考えると不思議なストーリーですよね。麿赤兒さんとか、有名な俳優さんも出られてて。

「豪華ですよね。吹越(満)さんがフライドチキン男役で出演されていて。吹越さんはここ7~8年、お仕事でご一緒していて。“私、吹越さんの奥さんやるんだあ~”って思って。すごく感動したんですよ」

――感慨深いですね。大人に囲まれた現場ですけど、すぐなじみましたか?

「そうですね。とにかく楽しくて、通うのが。水筒とお菓子持って、遠足みたいな感じで行ってました。学校ほとんど行ってないんですよ、あの頃。みんなにシュシュトリアンだってだんだん広まっちゃって、最後は体育の時間には、(校舎の)上の階から“シュシュトリアーン!” “変身してー!”とか言われて。いじられましたね(笑)」

――(笑)女優を続けていて辛かった時期はありましたか?

「シュシュトリアンは特撮だったので、やっぱり演技が少しオーバーなんですよね。18、19、20歳はウルトラマン3部作(『ウルトラマンティガ』『ダイナ』『ガイア』)に出て特撮がずっと続いていて。特撮ならではの演技の癖をそぎ落としていって、ナチュラルな演技をするっていう切り替えのときが一番壁にぶつかりました」

――どうやって克服しましたか?

「ひとり芝居みたいに勝手に電話してるとか、相手がいるとかシチュエーションを自分で決めて、せりふをぶつぶつ言う練習を続けました。ひとりエチュード(即興劇)みたいに。よっぽどショックだったんですよね。“演技がオーバー”とか“特撮癖が”とか言われるのが。20歳から始めて、克服するまで4年くらいかかったと思います」

石橋けい 撮影/森田晃博、ヘアメイク/大上あづさ

プライベートは主婦業もこなす

――今の石橋さんはナチュラルで説得力のある演技をされてるので、そんな苦労があったとは驚きです。プライベートではご結婚されて主婦業もこなされていますが、家事は何が得意ですか?

「片付け魔なのでお掃除は好きで、お洗濯も好きで――アイロンがけがね、ちょっと苦手です。でもね、ハンカチのアイロンがけは唯一大好きで。先にシャツとか嫌なものを全部かけて、一箇所にまとめておいたハンカチをかけるのを楽しみに頑張る。そうすれば苦じゃないってところにたどり着いて。“待っててね! ハンカチ!”って思いながらかけてます(笑)。ハンカチをきれいに畳んで、積み重ねていくのがたまらないです」

――お休みの日は何を?

「ここ2年半、キックボクシングをやっていて」

――意外です! やっぱりアクション好きなだけあって。

「ね、結局そこなんですよね(笑)。基本的にフォームや姿勢を美しくするために先生にマンツーマンでレッスンしてもらってるんですけど。始めたらすごいハマッてしまって、もう自分の生活の一部になっていて。本当に無になって、必死にただただ、体を動かす。終わったあとにすごく心地いい脱力感で。そこがすごくいいです」

<作品情報>
『At the terrace テラスにて』
11月5日(土)~11日(金)新宿武蔵野館にて、7日間限定レイトショー
公式ホームページ:http://attheterrace.com

『At the terrace テラスにて』

<プロフィール>
石橋けい
1978年6月23日生まれ。神奈川県出身。1992年、ドラマ『NIGHT HEAD』でデビュー。翌年、東映連続ドラマ『有言実行三姉妹シュシュトリアン』で次女役・山吹月子を演じ注目を浴び、東日本キオスクのイメージガールにも抜擢される。その後舞台の世界にも進出。2008年、CMディレクターの山内ケンジの静岡限定CM『コンコルド』に出演したのをきっかけに、山内氏の脚本・演出する演劇ユニット「城山羊の会」の作品の常連となる。現在は映画、CM、ドラマと幅広く活躍中。

(取材・文/小新井知子 撮影/森田晃博 ヘアメイク/大上あづさ)