芸能界で相次ぐ乳がんの発覚。市川海老蔵(38)の妻でフリーアナウンサーの小林麻央は2年前から乳がんを患い、闘病中。現在はステージ4で、肺や骨に転移があることをブログで明かしている。ステージはがんの進行度を表し、1~4まである。ステージ1は早期がん。数字が増えるほど病状も悪化していく。

 人間ドックで乳がんが見つかり、今年3月に手術を受けた南果歩はステージ1、昨年手術を受けた北斗晶はステージ2bだった。

乳がんを公表した南果歩、小林麻央、北斗晶

 女性の12人に1人がかかり、早期なら5年生存率が90%を超えるといわれる乳がんは、一般人にとっても珍しい病気ではない。

「予後がとてもいいのが特徴です。一般的には40代以降の女性に多いものの、20代後半や30代の女性でもかかります。9割がステージ1で見つかります。3~4cmのしこりであれば、だいたいステージ1。自己検診でも発見できます」

 そう教えてくれたのは、菊池がんクリニックの菊池義公先生。

「乳がんとは、乳腺にできるがんです。図のように、乳腺は乳汁を作る小葉と乳汁が通る乳管で構成されています。大多数は乳管にできますが、ごくまれに小葉にできるがんもあります」

 小葉のがんは、乳管のがんに比べて転移の頻度が高く、予後が悪いとか。

「乳がんで亡くなる人は、年間1万3000人ほどですが、かかる人は9万人を超えています。つまり、乳がんで亡くなる人は多くない。早期で見つければ命を落とす病気ではないのです」

 基本的な治療は病巣を部分的に、あるいは乳房全体を切除する外科手術。5年ほど前から、大きく変わったのが薬物療法だ。以前は身体に負担がかかる抗がん剤で全身への転移を防いでいたが、現在はホルモン療法や分子標的薬など、身体に負担がかかりにくい治療が行われている。

「がん細胞のタイプによって、使用する薬が異なります。ホルモン受容体を持っているか、“HER2”という遺伝子タンパクを持っているか、両方とも持っていないかで分けられます」

 南果歩は7月にブログで“ハーセプチン治療を開始した”と書いている。これは“HER2”を持つ乳がんに有効な抗がん剤。

「乳がんの9割は原因がわかっていません」

 治療費はすべて保険適用。乳房再建手術も保険がきく場合もある。治療は進化しているが、年々乳がん患者は増えている。なかでも、

「遺伝性の乳がんは、全体の1割といわれています」

 ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー(41)が乳がん遺伝子を持っていたため、乳房と卵巣を切除したことは記憶に新しい。

「乳がんの9割は原因がわかっていません。ただ、食生活などの生活習慣が関係していると考えられます」

 乳がんを早期発見するためには、年に1度の検診が望ましい。

「マンモグラフィー、超音波診断、触診の3つを受診しましょう。そして、自己検診は絶対に大事です。乳房のしこり、形や大きさの変化、へこみや引きつれを入浴時などにチェックしましょう」

<この先生に聞きました>
菊池義公先生
菊池がんクリニック院長。前・防衛医科大学校産科婦人科学講座主任教授。婦人科がんの治療と研究のスペシャリスト。特に、新しい分子標的薬による治療では、多くの成果を上げている。