男性3名が重軽傷を負い、爆発を起こしたとみられる栗原敏勝容疑者が死亡した宇都宮連続爆破事件。容疑者のSNS上では家庭の問題から社会への不満を募らせる言葉が綴られていた。“まじめで優秀な”元自衛官がなぜテロのような凶行に及んだのか─。

容疑者の自宅は全焼し、近隣の住宅も一部が燃えるなどの被害が出た

 10月23日、日曜日の午前11時30分ごろ、1万5000人の人出でにぎわう「宇都宮城址まつり」の会場で、爆発音が複数回、響き渡った。

「雷が落ちたような音が2度」

 近隣住民はそう証言する。

「すごい衝撃音で外に出てみたら、そこらへんに肉片が飛び散っていた。警察官に“誰か死んだのか”と聞くと“そうだ”っていうから、テロかと思った。うちの庭にも爆弾の一部が飛んできていた」と恐怖の瞬間を伝えるのは別の住民だ。

 栃木県宇都宮市で起きた白昼の爆発。「テロだ」と声を上げる人もいたが、ほとんどの住民はイベントの花火が爆発した事故と受け止め誰かが意図的に爆発させたとは思わなかったという。

コインパーキングには爆発に巻き込まれた車が残っていた

 自爆して死亡したのは同市在住の元自衛官、栗原敏勝容疑者(72)。男性3人が巻き添えになり重軽傷を負った。

 栗原容疑者の遺書が見つかったことから、宇都宮中央署は、容疑者が自殺を図り、無関係の市民を巻き添えにしたとして殺人未遂容疑で捜査を進めている。コインパーキングに止められていた同容疑者名義の車も爆発炎上し、その10数分前には、会場から約8キロ離れた容疑者の自宅も、爆発炎上していた。

 すべてを木っ端みじんにして自らの人生を吹き飛ばした栗原容疑者を知る元自衛官は、

「非常に温厚で優秀な人だった。自衛官としては120点満点だった。爆破をする訓練などは一切していなかった」

 近隣住民は「穏やかで丁寧な人」「自分の主張をあまりせずまじめ」と印象を語る。

 外面がよかった一方、家庭内では別の顔を持っていた。

「いつもげんこつです。グーで来ます」

 1971年に結婚し、3人の娘に恵まれていたが、容疑者にはDV(ドメスティックバイオレンス)があったとされ、2012年には裁判所から接近禁止命令が出された。

 妻が申し立てた離婚裁判の記録には、「(暴力は)結婚当初からです」「長女がおなかにいるときに、おなかを蹴って仕事場に出ていきました」「いつもげんこつです。グーで来ます」といった暴力の実態が残されている。

栗原容疑者(本人のYouTubeより)

 暴力で支配しようとした家庭は崩壊し、離婚裁判でも敗訴した容疑者は、うっぷんをSNSで発散していた。宇都宮地方法務局人権擁護課に電話相談したときの様子では、

「あるとき(娘が)いろんな奇異な行動をするので、自分が注意をしても聞かないので、ちょっと行きすぎた行為をしてしまったら、DVで訴えられて」

「拳銃とか準備したり、爆弾とかも作ることもできないから、秋葉原のような社会的に大きな事件でも起こさなきゃいかんのかと考えています」

 などと思考をこじらせていた。

「5年前くらいに奥さんと娘さんが出て行った」(近隣住民) という容疑者は、月に3〜4回、行きつけの焼き鳥屋さんに顔を出していた。店長が明かす。

「“妻には本当につらい思いをさせられた”って1度だけ話したことがありました。“ひとりは寂しい”とか“まだ恋愛できるかなぁ”ってつぶやくことも。今になれば家族にも見放されて、本当に寂しかったんだろうなって思いますね」