人気シリーズに“恋ダンス”や女優競演などで、上々の滑り出しをした秋ドラマ。意外と豊作!? と思いきや、そんなことはまったくなし。その中身を超辛口コラムニスト・今井舞が一刀両断!

評価できるのは『ドクターX』『逃げ恥』『校閲ガール』

「米倉涼子の『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系・木曜21:00)は、どうやったらみんなが食いつくか、何を盛り込めばいいのかのレシピがあって、それをちゃんとわかって作っている。おっさんばかりだった悪役に今回は泉ピン子を参入させ、それを米倉がバサッと斬るという爽快感を提供してくれてます。

『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系・火曜22:00)は、ひとりが好きな男の思考回路が納得できるキャラクターになっていて、しかも演じている星野源がハマり役。ちょっと変わったキャラの新垣結衣もいいし、エピソードもリアル。

 最近のドラマは、突拍子もない性格や職業の人が出てきて、思いもよらない出来事が起こり、バタバタと進んでいく展開が多いけど、これは“契約結婚”という非日常を描きつつ、等身大で感情移入できるような展開になっている。こうやって面白い話を地味にコツコツ作ってくれたら、みんな見るんですよ。このドラマは爆発的ヒットにはならないかもしれないけど、今後もじわじわと見る人が増えるはずです。

『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系・水曜22:00)は、校閲はあんなことしないとか文句言っている人がいますけど、もう1度、冷静にタイトルを声に出してみたら、これは職業モノじゃなく、石原さとみが可愛い服を着て、菅田将暉といちゃつく話だってことがわかるはず。北川景子の『家売るオンナ』と同じで、仕事を謳いながらも内容にリアルがないのは織り込みずみの枠なんです」

今期のベストドラマはこの3人の主演作から?

自分はモノマネされるのが嫌いなのに

 視聴率はいいが“問題”というのが『IQ246〜華麗なる事件簿〜』(TBS系・日曜21:00)。

「織田裕二は高視聴率にホクホク顔かもしれないけど、見ている人たちは、織田のけったいなセリフ回しをゲラゲラ笑うためにだけ見ている。自分はモノマネされるのが嫌いなのに、なぜ(『相棒』の)右京のマネをするのか……。今のところは織田をうまく操縦して耳目を集めよう、というTBSの作戦勝ち。でも飽きられて、数字は下がっていくでしょうね(苦笑)」

 マネされた(?)『相棒』(テレ朝系・水曜21:00)については、

「仲間由紀恵が次の相棒候補として再びフライングでキャスティングされていることが気になりますが、内容はいつもどおり。沢口靖子の『科捜研の女』(テレ朝系・木曜20:00)も以下同文です」

改心したかと思ったら唐沢の面倒な点がフルスロットル

 織田ドラマ同様、ウンザリしているのが唐沢寿明の『THE LAST COP ラストコップ』(日テレ系・土曜21:00)。

「朝ドラ『とと姉ちゃん』で落ち着いた演技をしていたので改心したかと思っていたら、“俺は面白い、ウザいのも味のうち!”という唐沢の面倒な点がフルスロットルで出ている“コメディー”と“チャチ”とをはき違えているし、基になったドイツの刑事ドラマ関係者が知ったら、あまりにヒドくて腰抜かすんじゃないですかね。これはネット配信サービスHuluの宣伝ドラマなんですけど、こんなの見せられて入会する気になる人いますかね。

 織田といい唐沢といい、主役しかやらない元トレンディー系大御所俳優たちは、こんな高カロリー演技をしないと主役張れないんですねぇ。

 来年1月からは、織田のあとに日曜劇場の主役をやることになっている木村拓哉も、変な声の発声とかアクションの練習をしているかもしれないですよ(笑)」

低カロリーの時代には合わない?

取材してないうんぬん以前の“問題作”

 過剰という意味では天海祐希の『Chef〜三ツ星の給食〜』(フジテレビ系・木曜22:00)も。

「いつもの元気いっぱい空回り演技の天海。三つ星シェフが給食を作るというので、学校給食の変なところを“それはおかしい”と改革する話かと思ったらそうじゃない。ただ単にお払い箱になったシェフが給食作って、子どもにまずいと言われるという、こっちの予想のはるか下をいく展開。

 三つ星シェフの天海を辞めさせるためだけに、超高級レストランが食中毒を起こすという筋運びには腰が抜けました。もし、レストランが食中毒を出したらその後どうなるのか、取材してないうんぬん以前の“問題作”です」

しょうもないドラマが遺作になってすみません

 凋落著しい“月9”では、『カインとアベル』(フジ系・月曜21:00)が、月9史上最低の初回視聴率(8・8%)と、話題に。

「大手デベロッパーを経営する一家のジュニアたちの話なのに、アウトレットを作るのにレストランの誘致の話だけで引っ張り、デベロッパーの企業のリアルがまったくない。しかも高校生みたいな仕上がりの山田涼介が兄の桐谷健太と会社を取り合うとか……見る気うせます。

 山田を主役にするためだけに作られたドラマに視聴者がついてくると思っていることに腹立つ。“しょうもないドラマが遺作になってすみません、平幹さん”という気持ちでいっぱいです。

 ヒドいといえば『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』(フジ系・火曜21:00)も、吉田羊を主役にすることが決まってから内容を考えたという後づけ感が。恋愛話は今の彼女には生々しいし、WOWOWで刑事ドラマをやっているから医療モノで、という消去法で、何か特徴を出すために“手術しない”という設定を取ってつけただけ。『ドクターX』にボロ負けするのがわかっていて、なぜ医療モノをわざわざやるのか、意味がわからない……」

『キャリア〜掟破りの警察署長〜』(フジ系・日曜21:00)については、「突出した面白さも欠点もない、薄〜いドラマでツッコミどころもない」とバッサリ。

 市川海老蔵の『石川五右衛門』(テレ東系・金曜20:00)は、「歌舞伎の舞台をそのままテレビで再構築。衣装もセットの大きさもセリフ回しも、何もかもそのまんま(笑)」

ジャニーズの押し売り商売もそろそろ見納め?

 初回生放送という触れ込みで2ケタ視聴率だった『レンタル救世主』(日テレ系・日曜22:30)はジリ貧状態に。

「“救世主”というタイトルに惹かれて見た人たちは2度と見ないと思います。実際は単なる何でも屋の話で、しかもラップを歌うことで事件が解決。……何じゃそりゃ。

 せっかく沢村一樹、志田未来、勝地涼、大杉漣といった芸達者が出ているのにもったいない。無理やり作ったイケメン枠に、不釣り合いの容姿の駒(ここでは藤井流星)を入れてくる、ジャニーズの押し売り商売にはいいかげん食傷ぎみです。この事務所のこうしたやり方も、そろそろ見納めになるかもしれませんが……なるといいなぁ。

 それは、『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS系・金曜22:00)の岩田剛典も同じ。タワマンあるあるなイジメ話に悩まされる、善良な主婦役の菅野美穂。そこに謎いっぱいの悪女役・松嶋菜々子がサスペンスに絡み、それを岩ちゃんが心配そうに見つめているという、盛りも盛ったりな主婦向けストーリー。

 女性に人気の岩ちゃんを出したい、という気持ちはわからないでもないけれど、場数もセリフも多い結構な大役を、岩ちゃんに任せてしまうというのはなかなかの高リスク。そこをごまかすために、いろんな要素をブチ込んどけば、とりあえず何かひとつは引っかかるだろうという制作側の思惑がニオイます。ステーキもカレーもプリンも一緒に盛ってしまったような、下手なバイキングの皿を見せられた気分。あんまり食指が動きません」

イケメン枠に頼らず、芸達者な主役をきちんと生かすべき

松岡&船越が善戦、深夜ドラマでも明暗

 深夜枠で善戦しているのが松岡昌宏の『家政夫のミタゾノ』(テレ朝系・金曜23:15)。

「松岡が女装して、無表情でシュパッと動いて家の中のトラブルをかき混ぜる変な家政夫役をやると言われたら興味持ちますよね。出オチ感はありますけど(笑)。

 バカリズムが脚本を書いている『黒い十人の女』(日テレ系・木曜23:59)は、テレビ業界の乱れた風紀が伝わってきて、現場にいる人間の目から見たリアルを感じます。男の側から不倫を描いている点も面白い。成海璃子、水野美紀、佐藤仁美、トリンドル玲奈など愛人役もそれぞれみんなハマっています。

 でも一番のハマり役は、息を吸うように目の前の女を口説く軽薄なプロデューサー役の船越英一郎(笑)。ちゃんと物語を作れば、芝居ができる役者たちがしっかり演じて、視聴者も見るんです」

 そのほかの深夜枠では『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系・金曜深夜0:12)を除き、どれもこれも頭打ち状態。

「シーズン3となる『勇者ヨシヒコ』は、いつもどおり、中年世代にはたまらないゲームあるあるサーガコント。出たがる人気俳優が引きも切らない、カルト的面白作品に仕上がっています。

『警視庁ナシゴレン課』(テレ朝系・月曜深夜0:15)は、ぱるること島崎遥香を出すためだけに作られたドラマ。ネット配信の普及目的で、月曜の深夜という僻地の枠で鋭意営業中。

『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』(テレ東系・金曜深夜0:52)は、ドラマというよりロケ番組。カテゴリーとしては『ヒルナンデス!』と同じです。

 そして、柄本佑の『コック警部の晩餐会』(TBS系・水曜深夜0:10)は“深夜の飯テロ”というテレ東が耕した畑を踏み荒らすような内容。深夜に料理を出せば話題になると考える、その浅薄さが見ていて恥ずかしくなります。

『とげ 小市民 倉永晴之の逆襲』(フジ系・土曜23:40)は、苦情係が奮闘する“生きる”的な話かと思ったら、ただ振り回されっぱなしで、ひねりゼロ……。

 要潤の『実況される男』(フジ系・金曜24:55)も昔なら“画期的”と言われたでしょうけど、今のフジだと“断末魔”にしか見えない。打つ手がないからいろいろやっていますという感じです」

NHKドラマもバッサリ

『忠臣蔵の恋 四十八人目の忠臣』(NHK・土曜18:10)は“こんなつたない恋バナが20回も続くのか……普通に忠臣蔵見せてくれませんかね?”という感想だけ。

 阿部寛と香川照之の『スニッファー 嗅覚捜査官』(NHK・土曜22:00)も、何日も前の殺人現場のニオイを嗅ぐだけで事件解決、という無理が納得できるストーリーとは言いがたい、なもんで話に入っていきづらい。

 原田知世の『運命に、似た恋』(NHK・金曜22:00)は、ハーレクイン系が好きな人にはいいんじゃないでしょうか。それにしても、斎藤工が台詞の言い回しや動き、目線などが、往年のキムタクそっくりでビックリ。脚本の北川悦吏子は、好みの男を突き詰め続ける“業”で書く作家なんだなと感心しました(笑)」

 ということで今期ベストは『逃げるは恥だが役に立つ』、ワーストは『IQ246 華麗なる事件簿』に決定!