晩婚化が叫ばれて久しいが、なぜ結婚しなくなってしまったのか? 結婚情報産業など“婚活”はさまざまな形で行われている。結婚したいのに、しない・できない実情を短期シリーズで探る。【“結婚ためらい”症候群リアルボイス 連載第2回】

 結婚を夢見て、何人もの候補と出会いながら、結局うまくいかない──。その理由はどこにあるのか? 取材を重ねると、男女の意識に大きな違いが……。

 近年、結婚相談所、結婚情報センター、婚活バー、婚活居酒屋、婚活パーティー、婚活アプリと、結婚相手を求め、探せる場所は百花繚乱。それにより婚活人口は急増しているのに、結婚する人たちはまったく増えていないことを第1回でお伝えした。

 ことにアラフォー婚活が難しい。下の表を見てほしい。平成12年に35〜39歳だった女性の未婚率は13・9%。その人たちの10年後を追ってみると未婚率は12・6%。つまり結婚した人の割合は1・3%しかいない。平成12年に40〜44歳だった女性の未婚率は8・6%。その10年後を追ってみると未婚率は8・7%。変動どころか離婚や死別などのなんらかの理由で0・1%未婚者が増えている。

 

 このデータからみると、独身アラフォー女性が10年後に結婚している確率は1%程度ということになる。なぜ「結婚したい」という気持ちがあり、行動を起こしているのに結婚できないのか。今回はそこを考えていきたい。

どんどん会えるからかえって目移り

気軽に利用できる婚活アプリには落とし穴が (写真はイメージです)

 婚活歴2年の裕子さん(仮名・38)は言う。

婚活アプリですでに50人の男性に会いました。でも、なかなか理想の人がいない。だいたい1、2回食事をすると関係が終わっています。頻繁に来ていたメールがパタリと来なくなるのが終わりのサイン。メールが来なくなると、こちらのテンションも一気に下がります」

 婚活アプリとは、いわゆるネット婚活のことだ。これまでネットで異性と知り合うといえば“出会い系”のイメージが強く、“真剣婚活”を謳っているサイトにも経歴詐称や既婚男性が多く登録していた。彼らは女慣れしていて、“結婚したい”という女性の気持ちを巧みに揺さぶり、騙される女性が後を絶たなかった。また金銭のからむ援助交際や結婚詐欺の温床にもなっていた。

 ところが、ここ数年でネット婚活は大きく様変わりをした。伊藤忠商事、楽天、Yahooなどの大手企業がこの市場に参入。登録にあたっても免許証、保険証、パスポート、住民基本台帳などの提出を任意で求めるところがほとんどとなったのだ。さらにFacebook omiaiのようにSNSと連動させ、Face bookで交友関係を明かすことにより、より信頼性のあるネット婚活を推奨するところも出てきた。値段も月々3000〜4000円と手ごろ。

 ただ気軽に利用できるからこそ、気ままな遊び感覚の恋愛を楽しむ人が登録していることも事実。瞳さん(仮名・40)の話。

「大手の運営する婚活アプリで知り合った男性がすごくタイプの人でした。初めてのデートでホテルに誘われました。迷ったけど断ったら嫌われそうで行ってしまった。Hした後に“好きになってもいいんだよね”って聞いたら、“はぁ? アプリの出会いでしょ”って言われました。ついていった私も悪いし、その言葉を聞いて本当にバカなことをしたなって後悔しました。結局、それっきり会っていません」

 婚活アプリにとどまらず、婚活居酒屋、婚活バー、婚活パーティー、結婚相談所などで出会っても、こうしたことは起こりうるだろう。大人の男女なのだから、どういう関係を築いていくかは、自己責任だ。

出会いの数が多くてもデメリットはある (写真はイメージです)

 それにしても時代は変わった。明治、大正、昭和初期のように親が決めた相手と結婚したり、写真などを交換すれば、それで結婚が決まっていたころとは違うのだ。

 婚活歴3年の宏美さん(仮名・39)は言う。

デートをしていても、ちょっと嫌なところが見えると、“ハイ、次!”って思っちゃうんですよね。だって、いくらでも会えるんだもの。

 だけど、こんなに出会っているのに、どうして結婚できないんだろうって。友達が普通にできた結婚が私にはできないのかと思うと、すごく落ち込むことがあります」

結婚できないのは美人のアラフォーばかり

 さまざまな婚活場所のなかでも、結婚できる確率が一番高いのが楽天オーネット、ツヴァイ、ノッツェなどの結婚情報センターや仲人型の結婚相談所だろう。

 活動費が年間20万〜50万円以上かかるところもあり、入会に際しては、独身証明書、住民票、卒業証明書、収入証明書(男性の場合)、資格や免許が必要な職業はその証明書の提出が義務づけられている。そこまでしての入会なので、婚活に向かう真剣度も高い。また担当者や仲人が婚活がうまくいくようにアドバイスもしてくれる。

 しかし、お見合いにおける最大の問題はマッチングの難しさだ。男女ともに求める年齢と条件が合致しない。

 これまで28回のお見合いをした早苗さん(仮名・39)は言う。

「これから子どもを産むことを考えたら、お相手はなるべく年の近い人か年下がよかったんですが……」

 入会し申し込みをかけてくる男性たちにガク然とした。

「年齢が40代後半から50代の人ばかり。たまに60代もいます。年が近い男性からお申し込みをいただいたときは年収400万とか。年下からのお申し込みだと年収が200万、300万台。年収の低い男性は結婚してからが不安で……」

 そうかといって、年収の高い50代とは結婚したくはないという。

「50代の男性と結婚したら、子どもが小学生のときに定年ですよね。大学まで行く教育費を考えたら50代はナシだなって。たとえ資産があったとしても、現役を数年後に引退しちゃう男性には魅力を感じないし」

 早苗さんのようなタイプは、おしゃれで仕事もバリバリやってきた美人が多い。そして、過去には同世代や年下の、いわゆるモテるタイプの男性たちと恋愛をしてきている。それをそのまま今の自分の結婚相手にスライドさせているのだが、その世代の男性たちは彼女らを結婚相手としては見ていない。

市場では見た目がよく年収がいい男性がひとり勝ち

 年収800万円、上場企業勤務の男性(43)は言う。

女性の年齢は35歳までで区切っています。できれば20代がいい。結婚してすぐに子どもができるわけではないし、できなかったら不妊治療をするかもしれない。そう考えたら子どもを産める女性の年齢に幅があったほうがいいですから。恋愛するならだんぜん美人がいいけれど、結婚となると見た目は多少譲歩しても、若いほうがいいんですよ

 近年の結婚相談所の登録者数を見ると、6対4で女性が多い。最近は、それが7対3に広がってきている。

 なぜここまで広がってしまったのか。年収の少ない非正規雇用の男性は雇用形態や年収を明かさないといけない婚活市場では相手にされないだろうと、はなから参入してこない。一方、恋愛よりも趣味を謳歌し自分の時間を大事にしたいという草食系の男性は結婚に興味を持っていない。

 今のお見合い市場では、3〜4割の中でも見た目がよく年収がいい男性がひとり勝ちの状態だ。申し込みが殺到し女性を選びたい放題。先にも書いたがいくらでも選べる状況では、「もっといい人が出てくるのではないか」と、婚活ジプシー化してしまう。

 アラフォー女性たちは婚活の厳しさに直面し現実を知るのだが、決まったようにこう言う。

「結婚はしたい。でも妥協してまで結婚したくない」

 この気持ちがまた彼女たちを結婚できない方向へと向けている。さらに彼女たちには共通した特徴がある。男性を減点法で見てしまうのだ。

条件ありきの婚活が結婚をしにくくしている

 婚活アプリやお見合いでの出会いの場合、顔写真、年齢、身長、体重、職種、年収、趣味など、条件を検索して相手を選ぶので、条件面で合格点を出した人に会いに行く。だが、いざ会うと自分の中にチェックシートを設け、「年収が800万なのに割り勘だった」「食事のマナーがよくない」「母親のことをよく話すけどマザコンかもしれない」「女性のエスコートが下手」など、相手を厳しくジャッジして、どんどん減点していくのだ。

 恋愛で人を好きになったときのことを考えてみてほしい。人を好きになるというのはどこか突発事故のようなもので、見た目がタイプでなくても、年収、学歴など知らなくても夢中になってしまうことがある。

 今まで恋愛してきた男性を振り返ってみれば、結婚の条件として掲げている理想とはかけ離れているはずだ。

「恋愛と結婚は違う」という言葉で片づけてしまえばそれまでだが、結婚をしたいと思っている婚活者が、今のまま婚活を続けていても、結婚率は上がらないだろう。

 スマホひとつあれば婚活できる時代だからこそ、婚活のやり方がある。次回は“どうしたら結婚できるのか”、そこを掘り下げたい。

<プロフィール>
取材・文/鎌田れい
21歳よりティーンズ雑誌のライターとして活動を始める。鎌田絵里のペンネームで恋愛ライトノベルズを18冊、恋愛エッセイや婚活本の出版も。芸能人や文化人の記事や書籍も執筆。自身が婚期を逃し、必死の婚活の末、36歳で結婚。40歳で双子の母に。その経験を生かして、恋活・婚活ライターとして活動中。ミッションは、生涯未婚率の低下と少子化の歯止め。