東京大学の施策ははたして効果があるのだろうか
東京大学は、来春から「女子学生向けの住まい支援」として、教養学部前期課程に入学する女子学生のうち、自宅から駒場キャンパスまでの通学時間が90分以上であり、かつ大学側が用意した100室程度のマンション等に入居する者に限って、月額3万円の家賃補助を最大2年間行なうことを発表した。導入の背景には、男女共同参画推進の観点から、現在2割に満たない女子学生の合格率を上げようとする狙いもあるというが、フィフィはそうした制度だけでは現状は変えられないと指摘する。

制度以前に風潮の問題

 東大が発表した、女子学生への家賃補助。大学独自の方針として私学でやるのならまだしも、国立大学である東大でこうした前例を作ってしまうのは良くないと思う。女性のみの支援制度ということで、不公平だとする声がすでに出ているけど当然のことでしょう。そもそも、いくらこうした制度を作ったところで、現状の進学者数が大きく変わるとは思えないんですよね。

 日本における女性の立場。その現状を示すひとつの指針として、世界経済フォーラムが10月26日付で発表した、各国の男女格差を表す“男女平等ランキング”がありますが、日本は世界144カ国中111位、G7では最下位となってしまいました。

なぜ最下位になってしまったのか。その要因をみてみると、女性の健康や生存率、学歴が低いというわけではなく、経済活動参加とその機会、政治参加という観点において、それぞれ118位と103位と、格差があると判断されたようです。

 こうした結果をみると、すぐに“男尊女卑”というワードを持ち出し、「女性が男性によって虐げられているからこういう結果になったんだ」と主張してくる方もいらっしゃいますが、私は必ずしもそうではないと思います。むしろ、多くの女性が日本社会に根付いてきた自らの立ち位置を容認し、選択しているということなんじゃないでしょうか。

「私はいわゆる日本の女性像は嫌いではないですよ」

 日本には、家事、育児、介護といったものは女性がやらなきゃいけない、女性は男性を立てて常に三歩下がったところにいなければならないといった風潮が根付いていますよね。あるいは、結婚しても働いていると、「〜さんいつまで働くの」と、お姑さんに言われたりするでしょ。

 そして女性自身にも、高学歴の女性はモテないという認識があったり、実際、か弱い女性を演出する方が男性受けも良いから、そういう女性を自ら演出している面があると思うんですよね。

 こうした風潮が長らく続いている要因としては、女性は社会に出ても、妊娠出産、育児などで、どうしてもブランクが空いてしまうことがあげられますよね。

 そのために男性の方が学歴や職歴などが何をする上でも重視される傾向にありますし、一方の女性も婚期や出産を考える人生設計の上で浪人してまで、あるいは大学院に行ってまで学ぶという道を選ぶことに不安を持つんじゃないのかしら。たとえば東大に女性の志願者が少ないのはこうした要因も影響しているのかもしれません。

 もちろん最近では、共働きの増加や、医療の進歩によって女性の選択肢が増えてきたことも手伝い、“男は仕事・女は育児”といった従来の認識は少しずつ変わってきています。だから、冒頭で述べた東大の家賃補助の問題も、わざわざ枠を作って“制度”を変えても、こうした日本の“風潮”が変わらない限り、本質的に何も変わらないと思うんです。逆に、風潮が次第に変われば、自然と色々なことが変わってくるんじゃないかな。

 だけどね、こうした従来の日本の風潮は悪いものじゃないと私は思う。男性と女性のバランスがそれで丸くおさまっていて、男女共に居心地が良いのなら、無理矢理変える必要はないと思うんです。他国と比べ、下手に男女格差を縮めようとする必要もないし、外国の女性像を無理に押し付ける必要もない。日本の女性“らしさ”が、風潮として日本社会に溶け込んで、うまくまわっているのなら、それで良いと思うんですよ。

 私はいわゆる日本の女性像は嫌いではないですよ。なんと言っても私自身、結婚相手は日本人だけど、旦那さんの前では三つ指をついてますからね(笑い)。

《構成・文/岸沙織》