後藤又兵衛を演じる哀川翔 (C)NHK

「又兵衛は大坂城に来た理由を“死に場所を見つけにきた”なんてうそぶいているけど、死ぬ思いでやらなくては勝てないんだ、ということを言いたかったと俺は思っているんです」

『真田丸』で、戦国武将の中でも、豪傑としてその名を今に残す後藤又兵衛を演じる哀川翔はそう語る。

 後藤又兵衛は、九州地方の大名・黒田官兵衛、長政親子に仕えた武将。官兵衛の死後、長政との不仲が原因で出奔。大坂の陣の際、豊臣秀頼に仕え牢人たちをまとめる“五人衆”のひとりとして活躍した。

 幸村(堺雅人)が出城の真田丸を作るときも、それぞれの思惑をぶつけあった。

「又兵衛のほうが先に出城の許可をもらっていたんだけどね。でも幸村が戦略を明かしたときに、その策も優れたものだったし、何よりも包み隠さず話してくれたことで信頼関係ができたと思います。あのシーンがなかったら、認め合うことはなかったでしょうね」

 主演・幸村役の堺については、

「明るいよね。俺は冗談とかを言って、けっこう現場を引っ掻き回しているけど、一緒になってついてきてくれるし(笑)。あれだけのセリフを入れてるのに、すごいと思います」

 撮影に入る前に又兵衛ゆかりの地を旅してきたという哀川。関ヶ原から大阪城、真田丸の跡地、又兵衛出生の地・姫路。そこから九州へ飛び、黒田長政から与えられた、大隈城の跡地へ―。

「彼は歴史を変えたという人物ではないけど、ゆかりの地での愛され方がハンパない。又兵衛について語る人たちが、まるで昨日まで生きていたかのように話すの(笑)。だからすごく彼を近くに感じることができました」

一匹狼の又兵衛を動かしたものとは

 旅以外にも、馬の稽古や槍の扱いも練習したという。

槍を操る哀川翔 (C)NHK

「やっぱり“槍の又兵衛”だから、めちゃくちゃ練習しました。本物の槍も持たせてもらったけど、10尺(約3m)あるんですよ。とんでもなく重たいし、あんな槍を振り回していたんだから、相当な力持ちだったんでしょう」

 大坂冬の陣では、徳川勢を退けた豊臣方。物語は最終決戦の夏の陣へと向かっていく。

「“五人衆”はバラバラだけど、とにかく今回の戦に勝つということを、最後まで信じ切っていた。ほかの4人には家や信仰、豊臣への忠誠心など、それぞれが引きずっているものがあるのに対して、一匹狼の又兵衛を動かしたものは、自分の存在が世の中に必要なのかということ。黒田家を出奔した又兵衛は、自分を認めてくれる人に仕えることで、生きがいを感じたのだと俺は解釈しています」

現場でノコギリクワガタを捕獲!

 ロケ現場でも虫好きは止まらない!?

「みんな俺が虫の話ばかりしていたと言うけど、イメージだよイメージ(笑)。普通の人よりちょっと好きなだけだから」

 昆虫採集が趣味と公言している哀川は、ロケ現場でも“愛”は止まらなかったようで……。

「水飲み場に、たまたまノコギリクワガタがいたんですよ。みんなには、採るなって言われたけど、“うちに来たほうが幸せだよ”って。うち、虫にとってのオアシスだから(笑)。もちろん今もそのクワガタは生きているよ」