俳優の三浦友和がデビュー45年の節目に、連続ドラマ主演は実に17年ぶりとなる『就活家族〜きっと、うまくいく〜』(1月12日スタート、テレビ朝日系・木曜夜9時〜)で“等身大”の主人公を演じる。作品への意気込み、テーマにちなんだ家族については、妻・百恵さんとの生活ぶりや芸能界で父の背中を追う2人の息子への思い、さらには“終活”への胸中も明かしてくれました。

 

“娘”への接し方に戸惑う理由

タイトルを最初に聞いたときは“ああダメだな”って思いました。大学生の息子の就活で、家族が翻弄される、世の中にありがちな話かな、と。でも、脚本を読んだら家族全員が就活をしないといけないという設定が面白かったので、参加させていただこうと思いました

 こう語るのは、三浦友和。『就活家族〜きっと、うまくいく〜』(1月12日スタート、テレビ朝日系・毎週木曜夜9時〜)に主演。連続ドラマ主演は実に17年ぶりになる。

「俳優の仕事は、9割ぐらいが体力勝負なので、連ドラの主役をお受けするのは、相当な覚悟がいります。久しぶりに(主演を)やらせていただいて、やっぱり大変です。

 脚本が(収録ぎりぎりに仕上がるのではなく)先行しているので、ありがたいのですが、例えば会社のシーンを数話分もまとめ撮りする。朝から晩まで1日中、深刻な重たいシーンが続くと、体力とは別に大変だなと。脚本がたくさんできているのも善しあしです(笑)」

 三浦演じる主人公の富川洋輔は、中学校教師の妻(黒木瞳)、OLの娘(前田敦子)、就職活動中の大学生の息子(工藤阿須加)の4人家族。洋輔は大手企業の人事部長だが、あることがきっかけで苦境に立たされる。

「いろんな面を持っている普通の人というのが魅力です。会社では人事部の部長ですが、家では奥さんに“洋ちゃん”、息子には“オヤジ”と呼ばれている。ちょっと威厳があるお父さんには、絶対そう呼べないですから。そういうお父さんだなと想像ができます。外の顔と家の顔は、みんな違うものだと思うし、そう描かれているのがとてもいいなと思います

 役作りには、自身の性格や経験を反映することがあるという三浦。私生活では息子2人の父親だが、実体験にない“娘”への接し方にはいまだに戸惑うという。

「普段、どんなことを話題にしたらいいのかわからないし、娘がお父さんとどうやって接するのか見当がつかず、想像の世界でしかない。小さな子どもでも男の子だったら全然平気ですが、女の子だとどう遊んでいいのかもわからない。抱っこするのも抵抗があったりします。娘を持つ父親役は何度も演じていますが、いまだに慣れないです

父親としての素顔

 ドラマでは、それぞれに秘密を抱えた家族が描かれるが、自身の理想の家族像や家族の問題への対処法については、こう明かす。

「何事もなく健康に過ごせることだと思います。そこがいちばん大切なのに、そのことを忘れてしまいますよね。贅沢なことを考えたり、子どもが小さいときは、なるべくいい学校に行ってもらいたいとか、運動会ではビリにならず、1等になってほしいと思ったり。でも、ちょっと病気になったりしたら、この子が元気でいることがいちばんと思ったりしますからね。

(家族の問題は)話し合いしかないでしょうね。わが家では、妻も子どもも何かあったときには、そこから目をそむけないで話します。夫婦でも親子でも全部さらけだしている家族がいるかっていうと、たぶんないと思う。ただ、表に出てくるいろんな問題があったら、こまかく話し合って、お互いに納得していかないといけないと思っています

 父親として息子2人には、言い聞かせるでも、叱るでも、どちらのタイプでもないという。

「何かあったときに言ったりするのは、お母さん(妻)だったでしょうね。息子たちは特別にやんちゃでもなかったし。世間でいうところのいい子だったんです(笑)。兄弟ゲンカも数えるほど。小学校低学年のときに目の前でやっているのを見て、ケンカするんだと(笑)。反抗期もなかったので、逆に心配になったくらい。

 間違ってしまわないかと思ったりもしましたけど、そういうこともなく、2人は芸能界に入っちゃいましたけどね。本人には言いませんけど、心配ですよ。でも、細々でも親の手を借りずに生活しているから、いいだろうと思っています

夫婦2人きりの会話

 子どもたちが巣立ったあとの夫婦2人きりの生活も教えてくれた。

「メニューを子どもに合わせるのではなく、夜の食事では1杯飲みながら、好きなバラエティー番組を見て、1時間、2時間かけて食べたりしています」

 バラエティー好きというのはちょっと意外な印象も。

昔からお笑い全般が好きで、録画しておいて見ます。R-1もM-1も見ています。2人で見ながら、どんなネタづくりをしているのかなとか、人気が出る芸人さんを予想したりして、会話しています。

 ドラマは、妻が録画して見ています。妻評? 僕や息子が出ているものは見てくれていますが、とくに何も言わないです。僕が出ていないものには厳しいですよ(笑)。わかりやすい内容のドラマは、あまり好きじゃないみたいなので、今回の作品は、ごちゃごちゃしているし、好きかも。頑張らないといけないですね」

 結婚して36年。仲のいい夫婦の穏やかな日々を垣間見せてくれたが、かつては芸能マスコミに追われ、苦痛と葛藤を強いられた。

変わったのはマスコミですよ。すごくやさしくなったし。2人で映画館にも行きますが、気づかれません。もしわかっても騒ぐような方もいないし、みなさんやさしいです」

“終活”を意識する年齢に

 

 今年、俳優デビュー45年の節目を迎えた。

「20代のときに1度やめたいと思ったときがあったけど、『伊豆の踊子』(映画デビュー作)で意識が変わり、30代の『台風クラブ』(相米慎二監督)がいちばん転機になって、面白い仕事だと思わせてもらえました。45年は長いですが、続けてこられたのは、この仕事が好きだと思わせてくれる人に出会えたことと、やり続けたいという気持ちが強かったからだと思います

 キャリアを重ねて、今後の目標ややりたいことは?

「何もないです。思うのは、あと15年で80歳、そういうことのほうが大きくなってきています。それは、大先輩方が80歳ちょっとで亡くなっている。そういう現実に、自分も15年ちょっとであの方々の年齢になってしまうんだなと。ものすごく大きいですよ。

 あと15年しかないのか。その間に何ができるのか、プラスそういう年齢になったときの妻や子どものこととか。そういうことをすごく考えます。それこそ“終活”です。それをまじめに考える年齢になったと実感しています

 今回のドラマの主人公は、定年を控えたサラリーマンで“終活”もかかっている点を共感ポイントにあげる。

「家族がひどい目にあって、視聴者の方には身近に感じてもらえるようなことが起きるので、楽しく見ていただけるんじゃないかなと思います。(役では)いままで見たことない顔が少しは出るかもしれないですね。お笑い好きな面とかね(笑)

<profile>
みうら・ともかず/1952年1月28日生まれ。山梨県出身。'72年ドラマ『シークレット部隊』で俳優デビュー。'74年『伊豆の踊子』で映画デビュー。'80年に山口百恵と結婚。代表作に、映画『台風クラブ』『ALWAYS三丁目の夕日』『沈まぬ太陽』『アウトレイジ』『64‐ロクヨン‐』『葛城事件』、ドラマ『赤いシリーズ』『独眼竜政宗』『新参者』など。長男・祐太朗はミュージシャン、次男・貴大は俳優として活躍