ヒロミ「ベッキーは歌やらなくていい」

 活動を再開して地上波にも復帰したベッキー。笑顔が戻ったのはよかったけど、ちょっと前のめりになりすぎ?

「2月5日に放送された『ボクらの時代』(フジテレビ系)で“これからはバラエティーが基本で、芝居とか歌とかモデルとかやりたい!”と話したんです。ビミョーな空気になりましたね。ヒロミさんが“歌だけはそんなにやらなくていいと思うよ。歌だけは違うじゃんか精神が……。本当にどっぷりいかない限り難しいんじゃないか”と言うと事務所の先輩、カンニング竹山さんも“バラエティーやりながら歌は違うんじゃないかってことですよね”と賛同。彼女は渋々うなずいていました」(テレビ誌ライター)

ベッキー

 ベッキーはこれまで13枚のシングルを出しているが、これといったヒット曲はない。彼女に限らず、タレントや俳優が歌手活動をしたがるのはなぜなのだろう。

彼らはどんなに売れっ子になっても本人が動かなければ稼げません。ドラマ1本でいくら、CM1本でいくらという世界です。歌手は1曲ヒットしたらCDやカラオケの印税が入ってくるので、休んでいても大丈夫。マイペースで活動しやすい仕事ですね」(芸能プロ関係者)

 柴咲コウはRUIとして歌手メインで活動していたときは、半年間の休養期間をとっていた。もちろん、歌うのはお金のためだけではない。

俳優には“ファンの反応を生で知りたい”という思いがあるんです。映画だとどんなにいい演技をしても周りのスタッフは黙々と仕事をしていますから充実感が薄い。舞台やライブはダイレクトにファンの反応がわかるから、やりがいを感じやすいんですね」(前出・芸能プロ関係者)

 織田裕二、宮沢りえ、広末涼子など、かつては歌でも活躍する俳優は珍しくなかった。しかし今は、俳優やタレントが映画やドラマの仕事と並行して歌もやるというのは難しくなっている。

 その背景を『日経エンタテインメント!』編集委員の品田英雄氏に聞いてみると、

「CDの売り上げは、’98年をピークに下がり続けている。音楽ビジネスが変わってきて、今はCD主導ではありません。ライブに客を呼べないと稼げない時代です。あとはカラオケの著作権収入ですね。ドラマやCMとタイアップしてCDをバーンと売るというのは20世紀モデル。アイドルでさえも’05年に登場したAKB48からはライブ中心にシフトしていますからね」

タレントが等身大の姿で歌う難しさ

桐谷健太

 そんな逆風の中、昨年は異変が。俳優の桐谷健太が歌う『海の声』が大ヒットし、『紅白』出場を果たしたのだ。音楽評論家の富澤一誠氏によると、

「BEGINの島袋優が書いた楽曲がよかったし、桐谷のボーカルもうまかった。だからたくさんあるCM曲のなかでもあれだけ売れたんです。昔は人気があればCDを出すとだいたい売れましたが、今は本当にいい曲、いい歌い手でないとダメ。松たか子だって歌がうまいから売れたんです。彼女の『LET IT GO』はオリジナルよりも上でしたから。ベッキーは歌手としては個性も味もない。だからバラエティーにシフトしていったのかもしれませんね」

 ’14年のレコード大賞・新人賞は女優の西内まりやが受賞した。しかし、彼女もまた決して曲がヒットしているようには感じられない。西内は歌手としてはどうなのだろう。

「歌声からは売れる可能性を感じます。でも、この業界は顔がよすぎても売れないんですよ。正直、歌手で美人はいない。彼女は美人すぎるから女優のほうが目立ってしまうんです。歌以外で目立ちすぎるとリスナーが引いてしまう。うまければ必ず売れるとは限らないので、そこが難しいところです」(前出・富澤氏)

 そんな中、今年になって、菅田将暉などの若手俳優4人で結成されたユニット“グリーンボーイズ”のCDが売れ続けている。

「彼らはGReeeeNの大ヒット曲『キセキ』誕生に至る秘話を描いた映画『キセキ―あの日のソビト―』でメンバーを演じたんです。歌のシーンのためにボイストレーニングを積み、練習を重ねたそうですよ」(映画ライター)

 1月末に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で生歌を披露すると、GReeeeNそっくりの歌声に驚きの声が。

グリーンボーイズは、4人とも本当に歌がうまい。本物のGReeeeNに比べても遜色がないほどです。知らずに聴いたら、本物が歌っていると思うんじゃないでしょうか」(前出・富澤氏)

映画『キセキ―あの日のソビト―』も大ヒット

ヒットするタレントシンガーの共通点とは

 歌がヒットした彼らと桐谷には共通点があるという。

グリーンボーイズも桐谷さんも、本人として歌っているわけではありません。架空のキャラクターになり、曲もそれに合わせて作られているんです。長瀬智也さんが『桜庭裕一郎』、時任三郎さんが『牛若丸三郎太』として歌ったのと似ていますね」(前出・品田氏)

 昨年はネットから広がった大ヒット曲も生まれた。

「ピコ太郎さんの『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』はYouTubeから世界的にヒットしました。誰でも無料で聴けることで、あれだけ広まったんです。PPAPをまねた動画がたくさんアップされましたが、それがさらに人気を呼びました」(前出・品田氏)

 とはいえ、古坂大魔王もピコ太郎を演じることでヒットをつかんだ。タレントや俳優が等身大の姿で歌ってもファンはついてきてくれないということなのだろうか。

ミュージシャンとタレント・俳優には大きな違いがあります。ミュージシャンは生きざまを歌で表現しますから、ファンは感動するんですね。俳優は素の自分ではなく役を演じるのが仕事です。向きが逆なんですよ。だから、本業がありながらも“ミュージシャン”になったと錯覚して、どっちつかずの状態でCDを出すとだいたいコケるんです。役者さんは架空のキャラクターを演じながら歌手活動をしたほうが、うまくいくのでは」(音楽誌ライター)