はなわ

 いま、巷の女性たちの涙腺を崩壊させているのが、はなわが歌う『お義父さん』。動画をYouTubeに投稿したことから火がつき、ヒット街道を突き進んでいる。

 実は、この曲は彼の妻である智子さんの実話をもとに作られたのだという。

奥さんが生まれてすぐ、家を出て音信不通になった義父へあてたメッセージソングです。貧乏を乗り越えて成長し、結婚して母親となった奥さんのこれまでの人生が綴られています」(スポーツ紙記者)

 歌詞は義父に語りかけるような内容で、最後に、

《孫を見に来ませんか 酒を飲みかたりましょう》

 と呼びかけ、感謝の言葉で締めくくられている。3月3日に公開されて以来、ウェブ上での視聴回数はうなぎのぼりで、100万回に迫る勢いだ。そして、ついにCD化も決定した。

 この曲が大ヒットしている理由について、音楽評論家の富澤一誠氏はこう語る。

これは奥さんの実話ということなんだけど、歌詞の展開がすごい。自分を置いて失踪した父親を憎むのが普通のパターンだけど、そうじゃないところが意外なんだね。

 実話であって、内容がひとひねり、そしていい曲。三拍子そろったから、聴く人の心をガッチリとつかんだんでしょう

 めったに出会えない“名曲”のようだが、そんな曲が過去にもなかったわけじゃない。

 最近はテレビで見ない日がないという小籔千豊が、'08年に作ったのが『プリン』。

「母親が亡くなる4時間前に急に“プリンが食べたい”と言いだしたので、小籔が大急ぎで閉店直後のデパートでプリンを購入し、病院に戻ったけど間に合わなかったんです。母親がプリンが好きだということを知っていたのに、それまで1回も買っていかなかったことをひどく後悔していました」(在阪テレビ局社員)

 北野武がビートたけしの名で歌ったのが『浅草キッド』。

「浅草のストリップ劇場で下積みをしていた時代を回想して書いた曲です。'86年に発売されたアルバムに収録されていて、至極の名曲と言われています。苦労した芸人はこの曲を聴くと、みんな号泣します」(前出・スポーツ紙記者)

 号泣とまではいかないが、ウルッとさせるのがダウンタウンの浜田雅功が槇原敬之と一緒に歌った『チキンライス』。

「ダウンタウンの番組に出演したことがきっかけで槇原が作った曲ですが、作詞は松本人志。彼の貧しい少年時代のエピソードがもとになっています」(音楽誌記者)

 芸人が歌う曲が、なぜそんなに心に響くのか?

ともすれば軽薄短小のイメージがある芸人に、実は波瀾万丈の人生があったという意外性。そういうものを日本人は好みますからね。またそれが歌詞の持つドラマを増幅させるんです」(前出・富澤氏)

 事実に裏づけされた歌詞だからこそ、聴く人の心を打つということなのだろう。