「僕自身はバラエティー的には後退していると思います。やっぱり、報道12年で染みついてしまっているものがあるんですよ。言葉の言い回しとか、いろいろなことを含めて。

 でも、時事ネタとかニュースネタは強い。だから、慣れてきたらそういうのも入れていけたらいいなと思います。“今週のお名前は籠池さんです”とかね(笑)。視聴者の方もそれならグッときませんか?」

古舘伊知郎 撮影/齋藤周造

 4月からNHKの新番組『人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!』で司会を務めることになった古舘(※)。10万種類以上あるという日本人の名字から、毎回、特定の名字を取り上げ、その歴史やルーツを探っていく。

 番組ではさまざまな珍しい名前も取り上げるが、古舘自身がこれまでに出会った珍しい名前は?

「10年くらい前にお会いした、興梠さん。虫のコオロギと同じなんですけど、調べたらけっこういらっしゃるんですよ。

 あと名前になりますが、おふくろの友達で青木鎮子さんという女性がいます。鎮魂歌の“鎮”で、ちんこ。彼女はお父さんが神社の神官で、鎮魂の意味を込めて名付けたそうです。名前に悪気はありません。これを聞いていやらしいと思うのは、われわれの心がいやらしいからです(笑)」

 これまでのアナウンサー人生で、名前を読み間違えたことは?

「思い出せないけど……、あるでしょうね。ほかの人が間違えたのはよく覚えていますよ。ある民放の女性アナウンサーが、ソフトバンクの孫社長のことを “まご社長” と3回も間違えていたとかね(笑)」

 自身も楽しんで番組の収録に向かっているようだが、どんな人たちに見てほしい?

「名前がベスト10とかベスト20に入っている、“鈴木さん”“渡辺さん”のような、ポピュラーな名前の方。それだけ多く名乗られている理由を再発見していただきたい。あとは、“名字界の泡沫候補”ともいえる4千何百何十位という、ものすごく変わった名字の方ですね。どうしてそんな名前や、読み方になったか、ご自身のルーツを探ってほしい。

 名字だけじゃなく、“~子”という女性の名前などにもふれていますので、老若男女すべての方々に見ていただきたいです」

 テレビ朝日の『報道ステーション』のキャスターを辞めてから1年。

「ついこの前までやっていたような気もしますけどね。複雑な気持ちで、無我夢中でやってきた濃い12年間、報道一色で本当に番組に埋没していましたから。今はグレートな余生みたいな感じです(笑)。

 このごろ報ステを見てて、テレビに突っ込んでいるんですよ。“富川(悠太)、ここ違うだろ”とか“小川(彩佳)、今日いいね”みたいに。まだ抜けきってないんですかね、あの番組が」

 バラエティーとしては、昨年11月から『フルタチさん』(フジテレビ)にも出演しているが、

「あっちは2時間で長いし、僕的にすごく苦しいの。だから苦しむ古舘をフジテレビで見てもらい、NHKで楽しんでいる古舘を見てもらえればと(笑)」

■“古舘”姓の由来は? 
「山間の集落では後ろを山に囲まれていて、天然の城壁だから攻め込まれない。でも田畑の前をどう守るかというときに“舘(たち)”という小高い丘のようなものを作ったんです。そこに家を建てて古くから住んでいれば“古舘”と呼ばれるわけです。集落の正面からの攻撃を防ぐ、守り人が源流のようですね。実は財前直見さんが2話のゲストで出演されているんですが、お互いの名字で共通点がわかったんですよ。どういうものかは、放送を楽しみにしていてください。驚きますよ!」

(※)古舘の“舘”は“舎”に“官”が正しい表記。読みは、ふるだちではなく、ふるたち