斎藤工 撮影/高梨俊浩

「最近、料理にハマっています。僕の親しい映画仲間が夫婦で近所に住んでいて、よく料理を振る舞ってくれるんです。なので、たまにはお返ししようという思いから、めちゃめちゃ料理をするようになりました」

 俳優のみならず、映画監督としても活躍する斎藤工(35)。そんな多彩な彼が、私生活では料理男子になっていた♪

「自宅に招いて、メニューは少ないんですけど書き出して、食べたいものを選んでもらうシステム。レパートリーはパエリアとか地中海料理が多いです。あとはオニオンスープも極めたくて。

 料理って映画に通じているんです。素材を集めて人に提供して、喜んでもらう。で、後片づけが大変(笑)。なので、これはひとつのアプローチとして続けていこうと。おかげで、すっかり外食しなくなりました(笑)」

学生時代の甘酸っぱい思い出

 そして今回、斎藤が映画『ブルーハーツが聴こえる』で演じるのは、プロの脚本家として活躍する非モテ系男子の大輔。ひょんなことからおデブの映画少年だった25年前にタイムスリップ。当時、事故で亡くなった片思いの美少女の運命を変えようと奮闘する初恋ファンタジーだ。

「僕の中学時代はサッカー部で毎日部活だったし、高校は男子校。甘酸っぱい思い出といえば、女の子と一緒に帰るのが最大のイベントでした(笑)。多感な時ということもあり、ひとつひとつの記憶を鮮明に覚えている。“下駄箱の前で憧れの先輩と話したな”とか、そんな些細なことに敏感になる時期は貴重だなって思います」

 映画は2015年のTHE BLUE HEARTS結成30年を機に企画された。しかし、公開直前に突然、劇場公開ができない事態になってしまう。

「僕も本当に悔しくて、この1、2年はどうにか上映できないかと微力ながらも力になれればと考えていました。公開は遅くなりましたが、多くの方々がクラウドファンディングで資金面を支えてくださったり、何とかこのプロジェクトを支援しようというプロセスも間近に見られた。自分の中の新しい財産になりました」

 斎藤にとって“ブルーハーツ”はどんな存在?

「小学校のころは親がテレビを見させてくれなかったので、出会ったのは中学生。その前に『ろくでなしBLUES』という漫画を読んで、ヒロトやマーシーとか、そこに出てくる好きなキャラクターがメンバーをモチーフにしていると初めて知ったんです。その後、僕の仲間のミュージシャンが、いかに彼らの影響を受けているかということを知ったりと、年々、僕の中でその年輪が大きくなっていったアーティストです」

斎藤工 撮影/高梨俊浩

斎藤が始めた移動映画館プロジェクト

 斎藤が映画への並々ならぬ熱い思いから2014年に始めた、映画館のない地域に映画を届ける移動映画館『cinema bird』。第1回は宮城県石巻市で開催され、海外にまで足を延ばすなど積極的に活動を続けている。

「1月に番組の企画で提案して、マダガスカルで活動してきたんです。現地の子どもたちに将来の夢を聞くと、ほとんどが学校の先生かお医者さん。理由は、その職業としか触れ合う機会がほとんどないから。職業の情報が少ないんです。もちろん、2つとも立派な職業ですが、映画を見て、実際に作る体験もしてもらって “こういう職業もあるんだ”って夢の選択肢を増やすお手伝いができればという思いもあって提案しました」

 その熱意が届き、やがて斎藤にうれしい知らせが。

「ちょうど先日、現地の子どもたちからお礼のお手紙をいただいたんです。そこには、涙がこぼれそうなほど子どもたちの思いがすごく詰まっていて。演じるだけではなく、みなさんに映画をご覧いただく機会をもっと増やせればとあらためて思いました」

<公開情報>
映画『ブルーハーツが聴こえる』
THE BLUE HEARTSに衝撃を受けた6人の気鋭の監督が、思い入れのある楽曲を自由な解釈で映像化。斎藤は井口昇監督作品『ラブレター』に主演。ほかに、尾野真千子、市原隼人、優香、永瀬正敏、豊川悦司が主演キャスト陣に名を連ねる。 
配給:日活/ティ・ジョイ
4月8日(土)全国ロードショー