舞台初日の終演後、富司にジャケットを着せてもらう眞秀くん

「お酒の入った角樽を持って花道に登場すると、会場から“かわいい~”“あら~”と歓声が。“ごめんくださいまし! お客さまから、お使いものでございます”とお酒を届け“おやかましゅうございました!”と花道を戻っていく姿に拍手喝采でした」(観劇した女性)

 5月3日から歌舞伎座で始まった『團菊祭五月大歌舞伎』で、寺島しのぶの長男・眞秀くんが初お目見え。『魚屋宗五郎』という演目で、酒屋の丁稚・与平を演じ、約4分間、観客の目を釘づけに。

「人間国宝でもある尾上菊五郎や寺島の弟・菊之助とともに舞台を踏みました。注目が集まったのは、ハーフの歌舞伎役者だということもありますね。十五代目市村羽左衛門がハーフだったといわれていますが、公には眞秀くんが初めてです」(スポーツ紙記者)

 寺島の夫はフランス人アートディレクターのローラン・グナシア氏。眞秀くんは色白ではあるものの、顔つきは可愛らしい日本男児だ。

「誰かの誘導があったわけでもなくしっかりと振る舞って、たくさんのセリフをこなしました。文字どおり“ひとり立ち”してましたね。小さいのに、なかなかの舞台度胸。とても素晴らしいデビューでしたよ」(前出・観劇した女性)

 堂々たる初舞台となったが、終演後には普通のわんぱくな男の子に戻った。楽屋口で寺島やローラン氏が友人と談笑していると突然、元気よく駆け出していったという。

「50メートル先の交差点までお友達と走っていってしまって。“まーほーろ!”とお父さんや富司純子さんに大声で止められていました。応援に来たお友達と側転もしていましたよ」(同・観劇した女性)

 4歳といえば遊び盛りだから、友達がいればつい一緒にふざけたくなるのはしかたがない。それでも眞秀くんは、歌舞伎役者修業にも熱心に励んでいるという。

「尾上流の日本舞踊を習っています。富司さんがお世話をすることもありますが、送迎は基本的に寺島さんが行っているそう。仕事の合間を縫って稽古場に駆けつけていますよ」(梨園関係者)

 かつて寺島は“息子が選んだ道を進んでほしい”と語っていたが、眞秀くん自身が歌舞伎を好きになったので、母親として強力にバックアップすることにしたようだ。

「眞秀くんは家でお父さんと一緒にタブレット端末で歌舞伎を見たり、セリフをまねっこしたりしているそうですよ」(同・梨園関係者)

 寺島は幼いころ歌舞伎役者になりたかったが、女性には道が閉ざされている。家に居場所を見つけられず、家出してパリに行ったことも。

「だから結婚当初は、息子が生まれたら歌舞伎役者になってほしかったようです。母になってからは“子どもに押しつけちゃダメだ”と思い直したそうですが、眞秀くん本人がやる気満々。彼女が立てなかった舞台で“息子を一人前に”という思いは強いと思います」(同・梨園関係者)

 感性を磨くため、同じ伝統芸能である『能』を親子で見に行くことも。歌舞伎の所作の美しさや丁寧さは、能にも通じる部分があるからだ。広い視野を持てるよう、美術館巡りも行っている。

「ローランさんが展示品の解説をしてくれるので、普通に見るよりも、作品のバックボーンや制作方法など、たくさんのことを知ることができるみたいです。美術館から帰ってくると、作風をまねて絵を描いてみたり、オブジェを作ってみたりするそうですよ」(同・梨園関係者)

 アートへの関心が、歌舞伎界に新風をもたらすかもしれない。言葉に関しても、普通の家庭とは違う。

ひと仕事終えた息子を父・ローラン氏が抱き上げてねぎらった

「眞秀くんはすでにトリリンガルなんですよ。歌舞伎ではもちろん日本語ですが、ローランさんとは英語で話します。ローランさんのお母さんがいらっしゃるときは、フランス語で会話。日本語、英語、フランス語が混在していたので、自然と身についたようです」(芸能プロ関係者)

 これまでにないユニークな英才教育で、寺島はわが子を次世代のスターに育て上げようとしているようだ。芸能レポーターの石川敏男さんは、

「女優というプライドを捨てて、裏方に徹するというのは簡単ではないと思います。まして、古いしきたりや格式を重んじるところですから」

 昨年の團菊祭では、眞秀くんが菊五郎に抱かれて舞台に上がっただけだったが、

「セリフもなくたった数分のことでしたが、出演者やスタッフのみなさんにご挨拶をしなければなりませんでした。今回のように本人が出演するとなったら、お稽古もありますし、ご贔屓さんへのご挨拶もしなくてはなりません。寺島さんは舞台期間中だけでなく、前の月も眞秀くんにかかりっきりになっていました。それでも“眞秀のために”と仕事を休んだそうです。“忙しすぎて”と言いながらも、うれしそうでしたね」(前出・芸能プロ関係者)

 5月17日に開幕するカンヌ映画祭に寺島主演の日米合作映画『Oh Lucy!』が選出され、批評家週間部門で上映される。しかし、困ったのはちょうど眞秀くんの舞台上演期間と重なってしまっていること。

「寺島さんは眞秀くんの出演中は彼の世話に専念したいと思っていたようですが、主演女優が会場に行かないわけにはいきません。眞秀くんは富司さんに任せて渡航するしかないでしょうね。映画祭で上映されるのはうれしい反面、眞秀くんを残していくのは後ろ髪を引かれる思いでしょう」(前出・芸能プロ関係者)

 眞秀くんにとっては大女優・富司純子が祖母で、人間国宝の尾上菊五郎が祖父。孫が可愛くてしかたがない。

「菊五郎さんは眞秀くんのお目見えをとても喜んだそうです。菊之助さんの息子・和史くんも昨年お目見えしていますが、そのときも今回もデレデレ。孫たちと同じ舞台を踏めて、うれしかったことでしょうね」(前出・梨園関係者)

 菊之助は寺島の弟だから、眞秀くんにとっては叔父にあたる。

 音羽屋は歌舞伎界でも有数の名家で、現・菊五郎の祖父、父、本人まで3代続けて人間国宝になっている。

「菊五郎さんは眞秀くんに並々ならぬ思いがあるようで“梅幸は眞秀に継がせたい”と周囲に語っているそうです」(同・梨園関係者)

 梅幸とは、菊五郎の父が襲名していた名跡で、'95年に亡くなってからは使われていない。もともとは菊五郎の俳名に由来する名前である。

「五代目菊五郎はなかなか子どもができなかったので、養子を取りました。でも、その後で愛人が実子を産んだんです。そこで、実子に菊五郎を襲名させ、養子には梅幸を名跡として与えました。今ではどちらも大名跡となっています。『菊五郎』と『梅幸』を和史くんと眞秀くんの2人が将来的に継ぐことで、音羽屋を盛り上げてほしいという思いもあるのでしょう」(同・梨園関係者)

 芸に励み役者として箔をつけた2人が歌舞伎界を牽引する日が待ち遠しい!